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とんぐ侍



〽︎とんぐ とんぐ とんぐざむらい
 つかみどころのないさむらい

〽︎とんぐ とんぐ とんぐざむらい
 今日は何をつかもうか

〽︎とんぐ とんぐ とんぐざむらい
 明日あしたはでっかい夢つかむ





【とんぐざむらい と「私、失敗しないので」の巻】



とんぐざむらいは、かつて失明の危機があったとは思えないほど、今では周りの景色も、人の表情も、家族の仕草や吹き出物さえも、よく見える眼に生まれ変わった。

京都に存在するたくさんの眼科の中から、とんぐざむらいにとっての名医と巡り合うことが出来、とんぐざむらいは大好きな『ドクターX』にちなんで、「ドクターIアイEYEアイ)」と呼び敬意を払っている。

Iアイはローマ数字の「1」を示す文字でもあり、とんぐざむらいにとって1番病気に寄り添ってくれ治してくれたドクターだ。

そして読みのIアイEyeアイと同じで、眼である。

視力を取り戻して以来、京都の四季を楽しむシニアライフを満喫している。




そんなとんぐざむらい、自称 スマホ写真家でもあるのだ。

いつでもどこでも、サッとスマホが取り出せるよう、サコッシュ(肩から掛けるぺったんこの袋)を愛用しおでかけしている。

そうなると、肩から掛ける袋のファッションさえ気にするようになってきた。

時にはメモを取ったり、欲しい物の買い物リストや、通院する際のお薬手帳のことを思うと、ポシェット(サコッシュよりマチがある)も愛用するようになってきた。

スマホ写真家のおかげで、Instagramデビューも果たしている。

長岡天神
撮影 とんぐの長男
2024年12月
長岡天神
撮影 とんぐの長男
2024年12月


投稿するとすぐさま反応してくれるのが、遠く離れた九州・熊本八代の畳屋さん、見知らぬ方である。

八代亜紀さん以来の親しみ湧く八代の方との繋がりだ。

投稿を見て、元気にされているかどうか分かる部分もあるので、新しい投稿を心待ちにするのも何だかとても嬉しいのだ。





とんぐざむらいは、スマホカメラを覗き込みはするが、光の加減で被写体がよく見えない時にはとりあえずシャッターを押した。

今まで目視していた被写体が、スマホカメラ越しだとどこにいるのか分からないことも多々ある。

しかし、どんな時もまずシャッターを押す。


長男は心配した。

「父上、被写体をよく見もせずにたくさん撮られて大丈夫ですか?」

もはや視力の問題ではなく、ただの邪魔くさがりだった。

とんぐざむらいはニヤリと笑い、

「私、失敗しないので」

と言い放った。

完全に、『ドクターX』の映画に向け、盛り上がりを見せる大門未知子再放送の観過ぎだ。

気軽に誰でもTVer(ティーバー)で要所を押さえられるし、au愛用者のとんぐざむらいはPontaパス会員でもあるのでTELASA(テラサ)で贅沢三昧に過去シリーズを観ることができる。

とんぐざむらいは、ビデオやアプリ、会員制のものを駆使して、『暴れん坊将軍』、1日2回の『水戸黄門』、そして『ドクターX』と、忙しい日々の合間を縫ってルーティンにしていた。

そんな大門未知子に浸るとんぐざむらいの撮影に、長男は時々手を貸し口も出したが、とんぐざむらいが楽しんでいるなら、それで良しとしようと思った。




とんぐざむらいは写真がどう撮れているか、不安があってもその出来栄えをすぐには確認しない。

気の向くままにスマホカメラを構える、“気ままスマホ写真家”である。



帰宅したとんぐざむらいは、サッとひとっ風呂浴び、その後缶ビールを開けた。上機嫌である。

とんぐざむらいのスマホにLINEの着信が鳴った。

覗き込むと次男からのメッセージで、スーパーに立ち寄ったら特価品があったので要るかどうかの確認だった。

とんぐざむらいは購入を頼み、次男の買い物っぷりを頼もしく思っていた。

とんぐざむらいの、お得大好き買い物ハンターの血を脈々と受け継いでいるからだ。



帰ってきた次男はとんぐざむらいに、思わぬお土産を買ってきてくれた。

「メロンパンです。京風メロンパンもあります。こちらは今回のお使いのレシートです」

毎日『ドクターX』漬けになっているとんぐざむらいを知っていた次男は、晶さん風に言った。

蛭間院長ならぬ昼間っから飲んでいるとんぐざむらい、京風メロンパンが大好物だ。

あの形に惹かれ、たっぷり入った白あんを思いっきり頬張りたくなる。






〽︎とんぐ とんぐ とんぐざむらい
 明日あしたはでっかい夢つかむ




ほろ酔い気分のとんぐざむらい、今日のスマホ写真をInstagramに載せようかと写真を見始めた。

「えっ?」

とんぐざむらいは目を凝らした。

「え?え?え??」

撮った写真に、被写体とした鳥達がいないのだ。

いたはずのアオサギが写っていない、ただの長岡天神池の拡大写真
撮影 とんぐ侍
2024年12月
いたはずのカルガモ達が写っていない、ただの長岡天神池の拡大写真
撮影 とんぐ侍
2024年12月



「私、失敗してる!失敗やーっ‼︎」


うるさいほど賑やかに、被写体が写真に入りきっていないことを嘆きまくった。


長男は言った。


「父上、大丈夫ですよ、ほとんど同じ場所で私も撮っていましたから」


とんぐざむらいは、わりと被写体の近くで撮影していたはずなのだが、その被写体の一羽アオサギでさえ、長い首しか入っていない状態だったことを長男は知っていた。


確かに、逆光でスマホ画面が見えにくかった。

そして、むやみやたらにスマホカメラ画面を拡大し過ぎていた。

とんぐ侍のすぐ側で撮影した長男の写真にはカルガモが写っている
撮影 とんぐの長男
2024年12月
見る者の疲れ目を疑わせるピンボケ写真(池に浮かぶ紅葉)
撮影 とんぐ侍
2024年12月
見る者の疲れ目を疑わせるピンボケ写真(懸崖菊)
撮影 とんぐ侍
2024年12月



数少ないとんぐざむらいの「失敗していない」写真とともに、長男の写真を添えて。

懸崖菊でも超ドアップを狙う
撮影 とんぐ侍
2024年12月
低い位置から撮影するとんぐ侍
渋滞を起こしていても何のその
撮影 とんぐの長男
2024年12月
紅葉と八条が池
手前の主張の強い紅葉はラッパー風だという
撮影 とんぐ侍
2024年12月
ようやく撮ることができたカルガモ
撮影 とんぐ侍
2024年12月
八条が池の噴水装置のようなものの上に立つアオサギを撮りたいとんぐ侍
撮影 とんぐの長男
2024年12月
撮らせてくれようと、そっと寄って来てくれたアオサギ
水上橋から
撮影 とんぐ侍
2024年12月
あまりに近づいてくると怖かった
撮影 とんぐ侍
2024年12月
拡大し過ぎるとんぐ侍を横目に、程良い距離なら怖くないアオサギ
撮影 とんぐの長男
2024年12月




〽︎とんぐ とんぐ とんぐざむらい
 つかみどころのないさむらい

〽︎とんぐ とんぐ とんぐざむらい
 今日は何をつかもうか

〽︎とんぐ とんぐ とんぐざむらい
 明日あしたはでっかい夢つかむ





とんぐざむらいの日記のような旅は、まだまだ続く。
いつでもキミのとなりすわり、笑いとはげましをくれる。


〽︎とんぐ とんぐ とんぐざむらい
 ともに未来の夢つかもう





<写真・文 ©︎2024  いけだひろこ>


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