言えるうちに、言っておこう
夫が出張中のため、一週間一人で日本にいます。
いや〜、辛い!
一人でいることがこんなにつまらなくて辛いものだったんだ、と毎日痛感しています。一人で眠ることに慣れていないからなのか眠れず、不眠のためか何もする気にもならず、なんだか憂鬱な毎日。
かく言う私は、高校卒業後すぐに実家を出て、夫と一緒に住むようになる36歳まで、一人暮らしをしていました。
一緒に住むようになった頃は、他人が同じ空間にいることが苦痛で、一緒に眠ることもできず、寝不足気味だったのですが、まぁこんなに変わるか?!っていうぐらい、今では一人では眠れなくなってしまっております。
人っておかしなものです。
慣れてしまえばそっちの方が良かったりするんですよね。
そんなことを思っていたら、昔懐かしいテレビコマーシャルを思い出しました。
「タンスにゴン、亭主元気で留守がいい」
駅前通り町内会婦人部の今月の合言葉として、最後にみんなで「留守がいい」と、気だるそうに言うのですが、これ、めっちゃシュールです。
このコマーシャル、1986年にテレビで流れていたようです。
またもや80年代。
この頃からなのでしょうかね、お金があることが幸せ、になったのは。
専業主婦というジャンルができたのは、19世紀のイギリスだそうです。
工業化が進み、男は外で働くので女性が家のことをやるようになったみたいです。
産めよ増やせよで専業主婦が始まったのかと思いきや、19世紀のイギリスだったとは。
考えてみれば、19世紀の頃は石炭を使っていましたよね。工業化と言ってもほとんどの仕事が肉体労働だったので、男性が働いてお金を稼ぎ、女性が家を守る、ということだったのかもしれません。
日本には1950年代に入ってきたそうです。
1950年代のアメリカでは、そろそろ女性が社会進出をし始めるのですが、その時代に日本に入ってきただなんて、なんか時代を逆流している、というか、遅れすぎていて、よくわからない感じですが、まぁ、戦争で人が減ったので、増やした方がいいってことでこの制度を取り上げたのでしょうかね。
ってことで、専業主婦の日本での歴史は、70年も経ってないようなのです。
イギリスでは100年ぐらい続いたであろう専業主婦というジャンル。
今では首相が女性になるぐらいなので、専業主婦の数も減ってきているんだと思います。統計によると、10%ぐらいはまだいるようです。まぁ、めっちゃお金持ちの家の奥様だと思われますが・・・。
100年経って、またそれ以前の生活に戻ったってことなので、日本もあと30年もすれば、超お金持ち以外はみんな働かなければならない状況になっていくのかもしれませんね。
夫はフランス人なので、女性が全ての家事をする、という概念は持ち合わせていません。
コロナで仕事につくことができず、あれこれ挑戦しようとしているとはいうものの、何も仕事に繋がっていない私に、「家事をしろ!」と言うこともありません。
しかも、リュウマチで握力がなく、家事もロクにできなかったりするのですが、それにも文句を言わず、手伝ってくれます。
あんたの旦那は良うできた人やから。
そんな言葉で片付けられるかもしれませんし、私はとってもラッキーだとちゃんと自覚しています。
色々と手伝ってくれる夫が一週間不在で、寂しいだけでなく、生活がこんなに大変だったのだと痛感する毎日。
大変なのは、眠れない、っていうことだけじゃないのです。
食事を作り、食器は食洗機にお任せするのですが、鍋やフライパンは重くて洗うことが難しいので、夫が洗ってくれていました。
他にも、簡単なつまみは用意してくれたり(チーズ切ったり、ハムやサラミを皿に盛るだけですが)、ワインの栓を抜いてくれていました。
夫がいないので、料理を作っても鍋を洗うのが一苦労ですし、一人でワインを飲む気分にもなれず、食事も簡単なものをチャチャッと作って食べるだけ、という味気ない食生活になってしまいました。
先日、つまらなそうにしている私を、一人のおばさまが食事に連れて行ってくれました。
彼女は看護師の仕事をしながら、ボランティア活動も積極的に参加していました。その彼女がポツリと言ったのです。
夫を放っておいて、仕事やボランティアに走り回ってたけど、夫がいなくなって今になって思ったわ。もっと夫と一緒に時間を過ごせばよかった、って。
人はいなくなってから分かったりするのですよね。
だから思ったのです。
感謝の気持ちをちゃんと伝えているだろうか。
私ができることを夫にしてあげているだろうか。
一緒にいることが幸せなんだと心の底から思えているだろうか。
そう思っていたら、夫から電話がかかってきました。
私が思ったことを伝える前に、彼は優しい声でこう言いました。
君がいなくてつまらなかったよ。
一緒にいればこんなタイトスケジュールでも、もう少し楽しいものになったかもしれなかったのに。
もうすぐ帰るから、待っててね。
彼がいてくれるから私は生きていれる、と思っていたのに、彼も私のことを必要としてくれていた。いつも迷惑をかけている邪魔なやつかもしれない、と思っていたのに、一緒にいてもいいんだ。
そう思うと、私は絶対「亭主元気で留守がいい」なんて言いません!
些細なことでも、相手に伝えることが大切だと思うのです。
いなくなっちゃったら、言いたくても言えないですものね。