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“ええじゃないか”おばさんのひとり言

ある日突然、フランス人の夫が言いました。
「幕末になんかすごいことがあったんだよね?日本人って面白いよね。」
ん?なんのこと??
「ええじゃないか」

突拍子なその一言に一瞬固まってしまいましたが、なぜそんなことを言い出したのか、と頭を巡らせます。
そう言えば、今村正平監督の作品に『ええじゃないか』というのがあったな、と。
フランスでは人気があったそうなので、それで知ったのかな、と思ったら、ある本を読で知ったと言います。
フランス人が、日本の「えた・ひにん」について書いた本でした。
私はそのことについて研究したフランス人がいたことに、驚きました。

「えた・ひにん」は江戸時代、重い年貢や運上・冥加金等の納入に苦しむ「農工商」たちの不満をそらすため、最下層にされ悲惨な生活を余儀なくされた人達です。

日本の中学校では、
『幕末、幕府を倒そうという動きが強まる中、打ちこわしや世直し一揆が増加し、「ええじゃないか」と叫びながら、民衆が集団で踊り歩くなどということが流行した結果、大政奉還が行われた』
と教えられているようです。
尊王攘夷運動の戦いと不作で、人々は食べるものにも困っていたでしょう。そんな状況なので、最下層の人たちは、もしかすると率先して「ええじゃないか」と踊ったのかもしれません。

「ええじゃないか」は、大政奉還が行われた年の7月か8月ぐらいから起こったといわれています。10月13日には徳川慶喜は政権を朝廷に返す意思を伝えたとされているので、民衆は何もせず毎日「ええじゃないか」と言いながら、踊り狂う状況が約3ケ月かけて近畿、四国、東海地方などに広がっていったようです。

それを考えると、「日本人は面白い」とフランス人の夫が言うのも頷ける気になってきました。

フランスでは大政奉還の80年ほど前に、革命が起こりました。
時の王であったルイ16世とその妻、マリーアントワネットをギロチンにかけ、民衆の前で殺しました。
日本では将軍は死ぬこともなく、江戸城をも明け渡しました。

幕府を倒したいと戦った人だけでなく、生活に辟易した民衆が踊ったことで、政権を変えたのです。

私は37歳の時に卵巣癌を患いました。
40歳を過ぎた頃、リュウマチになってしまいました。
あれもしたい、これもしたい。あれをしなければ、これをしなければ、と思ってあがいてきましたが、リュウマチで頭も体も思うように動きません。
50歳を過ぎた今、やっといろんなことに「ええじゃないか」と言えるようになりました。

あれをしなくても、これをしなくても、死にはしません。
死んだら極楽に行けるなんて、確証はありません。
あれをしなければ、これをしなければ、と執着する方が、地獄だということを知りました。
抗わなくていいのです。

「ええじゃないか」と踊って日本を変えた昔の人のように、「ええじゃないか」と言い続けてみれば、何かが変わるかもしれないと期待しながら、色々と書いていこうと思います。


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