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チャイナ紆余曲折物語


『ストリートダンスオブチャイナ』という番組をご存知だろうか。

中国版YouTube「YOUKU」にて放送されているストリートダンスのリアリティ番組である。視聴回数は常に億を余裕で超えるかなりの人気番組だ。

演出もかなり考えられているし、ダンスもレベル高いし、番組としてめちゃめちゃ面白い。YouTubeでも観れるので、みたことない方はぜひ観てみてほしい。

世界的に有名なダンサーばかりが出演する中、何を思ったかこの番組はヒロコブギーを2年前から3回も出演をオファーしてくれている。

2022年、私はこの番組に出演するために中国に行く。
その様子や私の気持ちの変化などを、これからnoteに綴っていこうと思う。

それは、私の挑戦を記録し、みなさんにお伝えすることが一種のエンターテイメントになればおもろいんちゃう?!と思っているからだ。

必ずしも成功した一面だけを発信するのではなく、挑戦する過程全てを発信することによって、挫折や失敗すらエンタメに変えられるのであれば、これほど素晴らしいことはないと思う。

人の失敗話や挫折話はやっぱり面白いし学びがあるし、人に勇気を与えることもできる。と私は思っている。

私にとっても、「自分の為」ということ以上に、挑戦することにより意味を見出せるようになる。

というわけで、稚拙な文章ではあるが、これからの動向をぜひ見守っていただければ嬉しい。

これまでのあらすじ

2020年。はじめてのオファー。まさにコロナ真っ只中の時のオファーが来た。ちょうど世界中でコロナが流行り始め、自粛期間を謳歌していた時期だ。

海外なんで行けるわけない時期だったが、「中国ではもうコロナは終息しましたよ(^^)」という謎の自信を掲げオファーをしてきた。行けるわけもなく断った。

2021年。二度目のオファー。コロナも少し落ち着き、海外に渡航する人もちらほら出てきたような時期だった。この頃は国内のダンスイベントも軒並み中止になり、挑戦の場を失っている状態だった私にとってこのオファーは大変嬉しく、速攻で快諾した。

3月末には中国に出発するということだったので、当時大阪で受け持っていたダンスレッスンや、6年ほど働いていたダンススタジオの受付の仕事を3月末で全て辞めることになった。

この当時私は生徒さんに非常に恵まれており、とても楽しいダンスインストラクターライフを送っていたので、レッスンを全てやめると言うことは勇気がいることだった。しかし新しい自分の挑戦のために、辞める決断をしたのである。

職場の皆さんや生徒たちはめちゃくちゃ応援してくれた。3月の最後のレッスンなんて、それはそれは感動ものだった。自分はなんて幸せなんだろう、そしてこの人達はなんて出来た素晴らしい人間なんや。。と今思い返しても非常に胸が熱くなる出来事だった。

この時期に私が主催したイベントでは、キャストの皆様がサプライズで「いってらっしゃい!!ヒロコちゃん!!」と送り出ししてくれ、中国に行ったら日本が恋しくなるだろうと日本茶のセットまでプレゼントしてくれた。

アルバイトしていたバーでは「行ってらっしゃいひろこちゃん募金」を店長が設置してくれ、お客さん達もすごく応援してくれた。

しかし結果から言うと、この年私は中国にいけなかった。

盛大に送り出しを受けた私だったが、忘れもしない3月26日。番組の出演がキャンセルになったと連絡が来た。

なんでも、色々あって海外から呼ぶダンサーの数を減らしたらしい。その数を減らす段階で私は選考に落ちてしまったとかなんとか。

これには、いや、ちょっと待ってぃ!と、私の中の千鳥ノブが黙っちゃいなかった。

出演してほしいと言ってきたのは向こうのほうで、私から応募したわけちゃうぞ。何を勝手に選考しとんねん。である。

付き合ってほしいと告白されて、OKを出したのにフラれた気分だった。めちゃくちゃその気にさせておいて、悪い男である。

しかも3月末出発を謳っておいて、キャンセルされたのが3月26日。紛れもない、お手本のような土壇場キャンセルakaドタキャンである。

ラストレッスンの時の、生徒みんなからの渾身の「いってらしゃい!!」を返してほしい。こちとらサプライズのフラッシュモブまでしてもらってるのだ。

無責任さに普通にめちゃくちゃ腹が立ったし、目標を失い挑戦できないことがなにより悲しかった。選ばれなかったということで謎に傷付けられるというトドメまでさされ、この年のチャイナ物語は幕を閉じた。

バーの店長はすごく気を使ってくれて、「行ってらっしゃいヒロコちゃん募金」は「美味しいものでも食べてねヒロコちゃん募金」に変わっていた。

これにはさすがに落ち込んでしまった。「あれ?中国の件どうなったの?」と尋ねられるたび説明するのがとても苦しかった。応援してくれていた人々を裏切ってしまったような気分になった。

いろんな人に会うたびに説明するのが辛すぎて作った動画


しかし私は、「決して明るくはないが、めちゃくちゃポジティブな女」北大阪代表なので、行けないと決まってからの切り替えは早かった。

結果的に私はこれをきっかけに上京し、「決して明るくはないが、めちゃくちゃポジティブな女」世田谷区代表となった。そのおかげで「梅棒」さんのめちゃくちゃ素敵な舞台に出演することができたし、そこでは非常に素晴らしい経験をさせて頂いた。大阪にいたら絶対あり得なかったような出会いもたくさんあった。

やはり神は試練を与えてきよるけど、乗り越えた先にはちゃんとご褒美も用意してくれているのだなと思った。

そしてそれから約一年。再び出演のオファーをいただいた。

私が行けなかったシーズン4には、日本人ダンサーが何人か参加しており、その中にはGO GO BROTHERS Hilty&BoshACKYさんといったどえらいレジェンドダンサーが名を連ねていた。

ダンスがあまりわからない人に説明すると、お笑い界でいうところの、ダウンタウンさんレベルの面々である。(私はすぐダンサーを芸人に例える。)しかもこの方々は、審査員ではなく、まさかの一選手として参加していた。これは、ダウンダウンさんがシード無しでM-1にエントリーしているようなもの。ここに肩を並べる予定だったのかと思うと恐ろしい。

番組内では、GOGOとHiltyと中国のロックダンサーみんなで、伝説と言われるHiltyのショーの曲を使ってショーケースをしたり、一緒にバトルしたり、近くで踊りを観たり、その様子が本当に羨ましかった。ここに私が入っていたらどうだっただろうと考えた。

シーズン5でもそんな経験ができるかどうかわからないけど、やっぱり私も挑戦したい。前回ドタキャンされて嫌な気持ちにさせられたということはもちろん気がかりではあったけど、私はオファーを受け、シーズン5に出演することが決まったのだった。

やっぱ神試練与えがち

PCR検査の結果は陽性でした。と電話で告げられた。

中国に渡航するためにはPCR検査をたくさん受けなければならない。しかも憎たらしいことに一回の検査の値段が2~3万と信じられないくらい高い。USJに遊びに行って何の我慢もせずにチュロスとか食べまくれるぐらいの値段、もしくは誕生日にちょっとええとこのご飯食べにいきまひょかの値段やないか。

一応会社に負担してもらえるものの、そんな気軽にポンポン受けれるものではない。それに渡航予定の日程も迫っているし、陽性になってる場合ではない。

ところがこういう時に限って神ってやつは我々に試練を与える。

二回目のPCR検査でまさかの陽性を叩き出してしまった。ほんとに「マジかよ。」と独り言が出た。

病院の先生曰く、中国指定のPCR検査は精度が高すぎてウィルスの死骸が残っていても反応してしまうとか何とか。私は去年コロナに罹患したことがあるのでその時の死骸が残っているだけの可能性もあるとか何とか。かんとか。

でもその後受けた唾液でのPCR検査も普通に陽性だったのでシンプルに罹患しただけっぽかった。(中国指定のPCRは唾液ではなく、鼻腔のやつ。)心当たりがなさすぎたので、まじでびっくり。元気だし。一回目は陰性だったし。。

とはいえ陽性は陽性なのでPCR検査しなおしということになってしまった。無症状だったので隔離期間は7日間で済んだが、かなりのタイムロスである。

やはりチャイナとの戦いは一筋縄ではいかない。

(関係ないけど「無症状」という時必ず「無表情」と言ってしまいがち。)

またアウト

事前審査用のPCR検査を再検査した。二回とも陰性だった。

しかし、この二回のPCR検査は3日以内に行わなければならないことが大使館からのメールで判明。

私の検査結果は5日間隔が空いてしまっているのでアウト。説明文がややこしくて勘違いしてしまっていた。(病院の人もこの日程で大丈夫って言ってたのに・・・)自分の確認不足でもあるけどほんとにガックリ。

陽性になってしまった件で既に2回のPCR検査が無駄となってしまている。その後2回もPCR検査受けに行ったのがまた無駄になるのか・・・合計4回分が水の泡である。(総額考えるとゾッとする。淡路島で1泊2日の豪遊ぐらい余裕な金額である。)

またPCR検査の結果待ちのドキドキを二回も味わうことになるのかと本当に失望。もうほんまに嫌。

速攻でPCR検査をふたたび予約したけど、次は万が一陽性になったらどうしようという不安が駆け巡る。(一度感染したから確率は低いのわかってるけど。)もう二度とミスれない。

ほんとに馬鹿みたいだけど、陽性になるリスクをとことん下げなけれなならないからダンスのイベントとかにも行ってない上に、人とも極力会わないようにしている。「コロナ恐れ過ぎのやばいやつ!コロナ脳!」みたいに思う人もいるかもしれない。でも、今陽性が出てしまったら全て水の泡だし、協力してくれてるエージェントにも超迷惑かける。(私だって検査がなかったらコロナをそんな過剰に恐れたりしない。)

ほとんどマスクとかせずに遊んでる友達のストーリーとかみて、なんでうちだけこんなに超神経質になって我慢してんねやろって思う。実際こんなに神経質になる必要なんてないんだろうけど、私は駅まで行った後に家の鍵を閉めたか心配になって一旦帰ることを頻発させているような心配性な女なのでどうしても気にしてしまう。

そしていつ渡航になるか分からないから先の仕事のスケジュールも入れられない。ずっと不安。なのに人にも会えないという、この宙ぶらりんな状況がいつまで続くのか分からないのが本当にストレスでたまらない。

とりあえず、行けなかったパターンのこれからの行動も考えながら、祈ることしかできない。こんな嫌な思いしたら大概その直後にめちゃくちゃいいことある。って信じないとやってられないっす。

なんでそこまで行きたいねん!って思うかもしれないけどそこにはチャイナドリームが待ってるんですよ。挑戦の場が!

絶対に諦めたくないから頑張ろう。

油断ならない

PCR検査で2度の陰性を叩き出し、事前審査をクリアした。

体調には何の問題もないので感染しているはずはないと思いつつも、検査の後はいつもビクビクしてしまう。結果が出るまでの5時間はいつも生きた心地がしない。

朝受けた検査は大体17:00ごろ結果がわかる。陽性だった場合それまでに病院から直接電話がくる仕組みになっているため、電話がならないまま、代わりに『地域の17:00の音楽』が鳴り響くのを聞くと非常に嬉しい気持ちになる。

『地域の17:00の音楽』を聴くとき大体は「もう17:00かよ?!」という絶望の気持ちになることが多かったので、こんなにも嬉しい17:00の音楽は初めてである。

今回PCR検査を受けた病院は、アプリで結果を見れる。これは本当にありがたい。何ともあっさりした病院で、検査技師の人はコオロギくらいの声量しかなく、一瞬かなり不安になったが、陰性証明書がゲットできればもうこっちのもん。

中国の番組チームとのやりとりはwechatという中国のLINEみたいなアプリで行われる。wechatの通知が来るといつも一瞬にして緊張が走る。

去年のドタキャンの件もあり、基本的に彼らのことはあまり信用していないのが本音である。今でもドタキャンの可能性というのは常に疑っている。

それでもやりとりを続けている心情は、浮気男を許す乙女心に似ている。「あんなサイテーな男、もう忘れなって!」という友人の声にも「分かってる・・・でも、アタシ、もう一度アイツのこと信じてみようと思うんだよね」と返す健気な乙女である。

とはいえ、これ以上乙女を惑わせるのはやめて頂きたいのが正直なところである。

デートの約束を取り付けてくれるまでは(航空券の予約を取ってくれるまでは)まだこの浮気男を信用することはできない。

一歩前進

出発日がやっと決まった。決戦は4月27日。

レッスンで携帯を見ていない間に、wechatに大量のメッセージが来ていて、知らない間に渡航日が決まっていた。全然いつでもよかったからいいけど。笑

こちらが急いでいる時はまったりしてるのに、向こうが急いでる時は鬼のように急かしてくるというのはもはやあるあるなので、もう可愛いもんさ。

渡航日が決まるとやっと中国に行くことが現実味を帯びてきた。少し嬉しい気持ちと、いやまだわからんぞという疑いと不安の気持ちが半々ぐらい。

上海はロックダウン中のため、ひとまず広州に行くことになった。大きい都市でよかった。隔離先のホテルがどんなもんかが大きな不安要素としてあるのだが、大きい都市ならホテルもたくさんあるし少し安心できそうだ。

すぐに7日前と3日前のPCR検査の予約。
PCR検査の存在がもう本当にストレスである。早く終わって欲しい。。

渡航まであと数週間。渡航後の隔離が21日間。収録開始までおそらくあと1ヶ月半ほどある。

それまでに準備すべきことをまとめて、やるべきことは全て行って挑みたい。私が中国に行くにあたって、収録開始までに絶対にやると決めたことを宣言しておこうと思う。

①練習(特に基礎練)
もちろんだけど、ダンスの練習。またこの期間は時に基礎を強化していこうと思う。番組の前半では振り付けを踊ることよりもフリースタイルで踊る方が多そう。おそらく番組の進行は長時間になるだろうし、慣れない環境で疲れると思う。めっちゃ緊張もするだろう。そんな中で助けてくれるのは、気持ちの強さと、基礎の力だと私は信じているので、フリースタイルで踊る練習ももちろんするけど、基礎を今一度見直す。
ロックダンスの基礎は定期的に見直さないと動きが出てこなくなったりするから繰り返し練習する。動く体を作っておく。
また、日本にいる間はレッスンをいっぱい受けに行く。隔離中はオンラインレッスンを受ける。(1人でずっと練習してるだけだと訳わからんくなってくるから。あとロック以外の振り付けを踊る場面もたくさんあるので慣れないことをやっておくことも必要そう。)

②トレーニング
隔離生活はずっとホテルの部屋の中で過ごすので絶対に筋力が衰える。普段はあまり筋トレをしてないけど、隔離後に体が重くなるのは絶対避けたいのでトレーニングは毎日する。
私は腕が細いので痩せていると思われることも多いが、ヨガのクラスを受けているとき、自分の前の鏡だけディズニーランドとかによくある、太って見えるおもしろ鏡なんじゃないかと思うぐらい、実はめっちゃ太っているので何とかする。

③英会話の練習
2年前ぐらいはよく海外に行っていたので英語を結構勉強していたが、海外に行く機会がなくなった途端に全然勉強しなくなってしまった。番組では海外の選手との交流が多い。コミュニケーション能力は絶対に必要。中国語より英語の方がどの国の人とでも会話ができるし、この短期間で復習しやすいのは英語の方だと思った。できるだけ他の参加選手とはたくさん交流したい。あとは多分誰とも話さずに毎日過ごすと声の出し方を忘れてしまいそうなのでその防止として。

④noteでの記録か、youtubeの発信
冒頭でも触れた通り、私はこの渡航の経験を発信していきたいと思っている。媒体はこのnoteか、youtubeで、内容によって使い分けようと思っている。こういう作業は、やらないとどんどんめんどくさくなってしまうし、その日のフレッシュな感情を記録していくことに意味があるので、できるだけ毎日少しは作業するようにしたい。

⑤瞑想
瞑想の効果については本などでたくさん学んできた。この挑戦を乗り切るため、パフォーマンスを上げるためにも瞑想は毎日続けたい。

以上、この5つを日々の課題にして準備していきたい。だらだらしたら後悔するのは自分なので、頑張る。

こんな毎日を送れることはめっちゃ幸せなこと。自分を高める行動しかしない1ヶ月半。なんて幸せなんだ!!

めんどくさくなる時も絶対あるけど、この積み重ねで中国での結果は必ず変わるはず。

7日前

いよいよ渡航7日前となった。

今日は朝から渡航7日前のPCR検査を受け、結果は陰性だった。日本でのPCR検査も残すところあと2回。すごく緊張する。

何回も来たことがある病院だが、中国渡航を控える客で今日はとても混雑していた。何やかんやで1時間弱待ったと思う。大きい病院だから他の外来で発熱している人も来たりしているだろうし、この待ち時間は地味に不快で、どれだけ待合の椅子がふかふかでも決して快適には過ごせない。(序盤で陽性が出たのもPCR検査を受けた病院でうつったんじゃないかと私は踏んでいる。)

中国渡航用のPCR検査は全て鼻腔をぐりぐりっとやられるやつだ。これには毎回、人生史上一番間抜けな声の自己ベストを更新してしまうが、今日はいつもより優しめだったのでベストを更新せずに済んだ。

PCR検査は本当に嫌なので帰り道は朝マックを買っていいことにして、何とか気持ちを奮い立たせている。(私はマフィンよりグリトルの方が好き。)病院の近くで購入して帰宅。

YouTubeであらゆる中国渡航のレポートを観まくっている為、いよいよ「たつろう」を差し置いてオススメの一番上に中国渡航の動画が表示されるようになった。

番組サイドからはこの7日間はできるだけ外出を控え、N95のマスクをして過ごしてねとメッセージ。航空券は今片道でも約25万円ほどするし、隔離ホテルの代金は政府負担ではないので、私1人呼ぶだけで相当なコストがかかっているから番組側も今私が感染したら一番「ダルい」のである。

1週間後の今頃、無事にホテルの天井を眺めて眠りにつけてますように。

最後の仕事

今日は日本での最後のレッスンだった。

滞在がどれくらい長くなるか分からないので、長期休講という形でスタジオさんに対応して頂いた。

生徒さんも、スタジオの方もみなさんとても温かい言葉をかけてくださった。手紙を書いてくれた方やプレゼントを持ってきてくれた方もいた。本当に有難いし、そんなすてきな方々に囲まれていることが嬉しかった。

しかし、私はできるだけエモーショナルな別れにならないように努めた。一年前、非常に盛大に送り出しされて涙まで流してみんなにお別れを言った後、呆気なく行けなくなったという経験をしているからである。

渡航まであと4日と迫っているが、私の中にはまだ行けなくなる可能性があるという考えがこびりついている。PCR検査で陽性になるかもしれない。飛行機が欠航になるかもしれない。。

渡航日が近づけば近づくほど、無事渡航できるのか不安が大きくなってくる。

数日前までは、ストリートダンスオブチャイナの映像を観て、私は本当にここで通用するのだろうか、ということが不安で仕方なかった。しかし今はもう渡航して番組に参加できればそれだけで超幸せで、更にそこでいい結果を残そうだなんて贅沢な悩みな様な気がしてきた。

仮にいけなくなったとしても、番組のためにたくさん練習してトレーニングして英語を勉強していた準備期間は決して無駄にならないし、もはや生きてるだけで幸せなんだぞ。ということは重々わかっているのだが、やはり無事中国に行って、そんでもって番組ではめっちゃ活躍したいという贅沢な欲は私の中にたしかに存在している。

こういうギリギリの精神状態の時に神はなにかしら試練をあたえてきがちである。神あるある。試練与えがち。

十分警戒して、今はただ準備するしかない。

渡航の為に購入した半年分の薬やらコンタクトやら、隔離中に食べる為のたくさんの食料やらが、ただの大量ストックになりませんように。

超ナイーブ

渡航前日。PCR検査を受けに行った。

交差PCR検査といって、中国渡航のためには3日前に大使館指定の医療機関2箇所で陰性証明書を発行する必要がある。

1回目の交差検査は7日前と同じ病院に行った。そこの病院に行くのは6回目だ。毎回同じ中国人スタッフの人が対応してくれたが、めちゃくちゃ人が多くて忙しそうな時も丁寧で素晴らしい対応だった。

6回も来ているので顔を覚えられていて、毎回笑いかけてくれるので憂鬱なPCR検査も少しいい気持ちで過ごせるのである。私もこういう人になろう。

日本最後のPCR検査は初めて行く病院だ。

今からまた鼻をぐりぐりされるという憂鬱感の中、病院最寄りの駅の出口を出ると、東京タワーが見えた。

初めて見たけど、なんかすごいよかった。これから頑張るぞという気持ちになった。

鼻のPCR検査は、1回目はくしゃみが止まらなくなってしんどかったけど、もう合計9回もやっているので、鼻が徐々に対応してきたのかそこまでしんどくなくなってきた。

検査が終わって一旦帰宅し、一昨日から始めているパッキングと家の掃除の続きをする。パッキングだけでも面倒臭いのに、長期間家を空けるための掃除やらなんやらがめちゃくちゃ大変だった。

私はむかし帰省する時にキュウリを冷蔵庫に入れ忘れて、2週間ほど家をあけてしまったことがある。2週間後帰宅すると、キュウリの姿はなく、液体と化していた。天然のマジック。マジで気持ち悪かったので長期の留守は若干トラウマである。いない間になにかあったらどうしようととても不安だった。

念の為と、東京に住んでいる父に家の合鍵を渡しに行くことにした。

私の父は長い間中国で仕事をしていた。(その影響で私も実は2歳から小6まで中国に住んでいた。)だから中国事情には詳しく、色々教えてくれる。

しかし、上海のロックダウンで50日くらい隔離されてる知り合いがいるという、これから渡航する者にとっては非常に不安な情報をなぜか大爆笑しながら言ってきた。

合鍵を渡しに行くというのが目的だったけど、久しぶりに直接会ってゆっくり話せてよかった。

帰り道、中国関係のケアをしてくれてる友達から中国は渡ってから陽性になったら番組には間に合わないから本当に気を抜かないで、というメッセージがきて余計不安になる。

コロナ禍の前は、東京から大阪にいくぐらいのノリでフランスとかアメリカとか行ってたのに。。

家を留守にすることも不安だし、無事中国にいけるかも不安だし、コロナも不安だし、渡航前日の私はなんだかとてもナイーブになってしまっていた。

もはや番組で活躍できるかな、、、なんて贅沢な悩みである。

こういう時私は、マズローの五段階欲求は本当によくできた理論だなと思う。欲求には「①生理的欲求」「②安全の欲求」「③社会的欲求」「④承認欲求」「⑤自己実現の欲求」の5段階あり、低次の欲求が満たされてから、そのもう1つ上の欲求をもつようになるみたいな話である。

発展した現代社会は①〜③の欲求がわりと簡単に満たされているので、承認欲求だったり自己実現欲求が強まる。つまり承認欲求や自己実現欲求が強まってるということは生理的、安全面、社会的で満たされている豊かな社会であるということらしい。(明日食べるご飯もない。寝る場所もない。みたいな環境でインスタのフォロワー1万人ほしい。モテたい。的な欲求はでてこないみたいな話し)

私は今この中国渡航に関しては「安全の欲求」ゾーンにいるので承認だとか自己実現だとか求めてる場合じゃないのだ。無事ならOKだし、もはや生きてるだけでOKだ。

早く番組で活躍したい!!!いい踊りがしたい!!!という欲求がギャンギャンに強くなる状況にいきたいもんである。

渡航当日

私は普段朝が苦手で起きるのに時間がかかるのだが、今日ばかりは緊張感で早めに目覚めた。

やっぱり普段起きられないのは緊張感が足りないからか…と反省しつつ、荷物を確認して留守にする家の確認をして出発。

家の中の水分全部なくなるんちゃうかというぐらい、これでもかと除湿剤を置きまくった。

空港はめちゃくちゃ人が少なく閑散としていた。売店は休業しほとんど閉まっていた。

チェックインなどはスムーズに終わった。少し安心したが、私はわけわからんところで謎の凡ミスをするタイプなので気を引き締めていかないといけない。

中国は検査が厳しい上、みんな航空券だけで20万以上、PCR検査で10万以上、隔離ホテル代で10万以上といかついコストを払ってここにきているので、中国行きの乗客はみんなコロナ対策ガチ勢である。

日本では浮いてしまうN95のガチマスクも、ここでは普通である。マスク2重は当たり前で、防護服を着ている人もいるし、ゴーグルをしているひともいる。ビニール手袋も。私も自分はなかなかのコロナ対策ガチ勢だと思っていたが、完全に格の違い見せつけられた。渋谷駅前とかでコロナ陰謀論を唱えている人達がこの光景をみたら確実に発狂するだろう。

到着後のPCR検査にひっかかったら1番やっかいなので、中国に無事到着してからもとても不安な気持ちだった。もしもの時のことを考えるとめちゃくちゃ怖い。

到着するやいなや隣の乗客がフェイスタイムをはじめた。ちらっと見ると奥さんと子供らしき人達がうつっていて、ついたよ〜みたいなことを言っている。(多分)
この人はやっと家族に会えるんやな…大変やったやろうに。と思うと、飛行機の中でイヤホンをつけずにめちゃくちゃ携帯から音を鳴らしていたことも許してあげようという気持ちになった。

噂に聞いていたPCR検査はたしかに日本より綿棒の鼻内での滞在時間が長めだった。検査する人は防護服をギチギチに着ているので顔はわからないが目が芸人のやす子ににていて少し和んだ。

PCR検査も入国審査も、I can’t speak Chinese と言っているにもかかわらず、ゴリゴリに手加減なしの中国語で話しかけてくる。
こういう時に、不安そうな様子を見せると突っかかられることがあるので、「間違っているとしたらお前の方だけど?」というような毅然とした態度でいることがコツだ。
(昔、初めて一人で行ったロサンゼルスであまりに不安げにしていた事で怪しまれ、謎の部屋に連れて行かれ3時間ぐらい閉じ込められたというおそろしい経験あり。)

これから14日間隔離されるホテルは、ランダムに決まる。自分で選ぶことはできない。

完全にガチャである。

荷物を受け取ってからホテル行きのバスに乗るまでの待ち時間も、ホテルに着いてから部屋に誘導されるまでの謎の待ち時間も、とにかく長かった。
待つこと自体というよりも、いつまで待たされるかわからないのが辛いんだなと思った。

待ち時間用に用意していた本も読み終え、電波もないので文章を書いて時間を潰してたら、3000字の記事を余裕で書き上げてしまっていた。

空港スタッフが防護服を着て大勢の人を誘導する様はマジでイカゲームすぎる。
私はいまから14日間の隔離というデスゲームに参加するのだ。
なんとしても生き延びねばならない。

隔離ホテルガチャ

昼の11:30に家を出て、隔離ホテルの部屋に到着したのが夜中の3:00だった。(時差が1時間あるので実質4:00)

手荷物は消毒でびしょびしょ。ちょっと濡れてるとかいうレベルではなく、お前ら一回シャワー浴びたんか?というくらいびしょびしょだ。

ホテルの部屋は、広くて、ぱっと見ラグジュアリーだが、全体的に埃っぽくて所々汚れている。でも大きな窓があって、開放感があるのは嬉しい。

一発目の食事は今後の生活がかなり不安になるラインナップではあったが、私のホテルガチャはまあまあといったところだろう。

気が張っていたからか、3時間ほどしか眠れず今この記事を書いている。めちゃくちゃ疲れたけど、一応大きなトラブルもなく一安心!!

といきたいところだったが、起きるとなぜか右手の小指だけがパンパンに腫れていた。

皮膚は赤く、ヒリヒリする。よく、世界仰天ニュースとかで見る、大病の前兆のようにも思えて朝からビビった。おそらく中国の粘度高めの強烈な消毒液が小さい傷とかから入り込んだことが原因じゃないかと思う。

でもなんで小指だけやねん。あらゆるトラブルを想定しまくってここにきたけど、流石に小指だけパンパンに腫れるなんてことは全く想像できなかった。

これから14日間広州で隔離し、その後は別の州に移動してさらに7日間隔離。

もうすでに卒論ぐらいのボリュームで記事を書いているが、私の中国の生活はまだ始まったばかりだ。これからどんなことが起こるか見守っていただけたら幸いである。

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