#19,#20 家族の機能⑦⑧「やすらぎの場」結婚生活の現状

今回は、特にやすらぎの場としての結婚生活に注目
1)人々の結婚生活満足度の現状
2)結婚生活満足度に関連する4つの要因

結婚の現実は?

1 配偶者満足度からみた結婚生活満足度

配偶者への総合的な満足度からみた結婚生活満足度、男女各500人を対象とした我が国の調査

①【男女別】
単純なアンケート調査では男性が高く24.6%女性は低い14,2%
 「とても満足」男性24.6% 女性14,2%
 「満足」を加えると、男性 63.6% 女性 49.6%

*フェミニストの立場から、「結婚は女性にとって圧政的制度であり、男性と比較して女性は結婚生活から十分な満足感は得られないという主張が繰り返されていた。」

しかし同じように生活していても、男女には感じ方が違う
妻は夫より些細な事柄に過敏に反応し、気分が落ち込みやすくうつ病の罹患率が高い(約2倍)
こうした神経質、抑うつ傾向をコントロールすると、結婚生活満足度の夫婦間の差がない

②【結婚生活の経過に伴う変化】
U字仮説:結婚生活25年くらいまで低下し続け、子どもの巣立ちとともに徐々に回復する(横断的データ)
縦断的データ(同一個人の結婚生活満足度を繰り返し測定)
結婚生活満足度は、U字型ではなく、結婚生活の経過とともに上昇することなく減少し続ける

2 結婚生活満足度に関連する4つの要因

2.1 子育て

①子どもの有無による幸福度の違い
子どもがいる人のほうが、そうでない人に比べて幸福度(生活満足度)が低い「拓殖大学准教授の佐藤一磨さんの研究より」
その傾向は子育て期を過ぎ、親が高齢期にさしかかっても続く
世界的に子どもがいる人ほど幸福度が低く、特にその影響は男性よりも女性で大きい

②子どもの有無による結婚生活満足度の違い
子どもができると結婚生活満足度は急降下
子どものいない夫婦の満足度はあまり下がらない

母親にふりかかる重すぎる負担/それを当たり前とする社会/人々の意識(支援者も含めて)、社会のシステム(子育て関連の制度・予算)

2.2 収入問題

1)夫の収入問題
そもそも、夫となる人の収入が結婚を決断させる決め手/夫の収入の低さは明らかに結婚生活満足度を低下させる/収入の低い夫の離婚率は高くなる(加藤 2009)

2)結婚生活に絶対必要なものは何か?
2006年に第一生命経済研究所が行った調査
年代にかかわらず夫婦ともに50%以上が経済力をあげている。夫よりも妻が「経済力」を重視。
60代の妻は、80%以上が経済力をあげている。

3)女性の男性の経済力に対する期待の高さと現実とのギャップ
女性の言う経済力とは、男性の平均年収と比較すると極端に高い
2016年 明治安田生命福祉研究所
「結婚相手に望む最低年収」
400万以上と回答した
20代未婚女性は57.1%(700万以上 18.1%)
30代未婚女性は67.9%(700万以上 13.2%)
年収400万円を超える20代未婚男性はわずか15.2%
年収400万円を超える30代未婚男性はわずか37.0%

こんなはずじゃなかったからのスタート

4)吹田市で行われた調査
男性では会話頻度や夕食頻度などの行動次元の伴侶性は結婚満足度には影響せず、経済的要因のみが結婚満足度に規定力をもつ。妻の収入が有意な関連を示した

2.3 夫婦間の情緒的サポートに対する主観的評価

1)配偶者に理解されているという感情
配偶者に理解されているという感情は、結婚生活満足度を高めるだけではなく、夫婦喧嘩の悪影響を緩和する。
(小谷みどり 2015 60歳から79歳男女522人)
妻は自分を理解してくれる 50.2%
夫は自分を理解してくれる 20.4%

「相手は自分を理解し、何かあれば守ってくれる」という感覚が持てるかどうか/親身に相談にのってくれる、味方になってくれる/実家から、コミュニティーから守ってくれる

2)思いやりの相互関係の崩れ
オーストラリアシドニーで行われた調査
「相手を思いやる気持ち」と結婚生活満足度との間には強い関連性
結婚生活満足度の高い夫婦では思いやりに関して、自己評価より配偶者の評価が高い/円満な夫婦では、配偶者の評価が自己評価を上回っている
私も相手のことを思っているけれど、相手は自分よりももっと思ってくれている→満足度が高い
わたしがこんなに思っているのに、相手は思ってくれない→満足度が低い

相手が思ってくれなくても、私が思っていればいいの→成り立たない
相手により期待し、実際に期待通りだと感じている

2.4 性生活の満足度

我が国のセックスレス調査性の大規模実態調査『ジャパンセックスサーベイ2020』
セックスレスの定義「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合」

20歳~49歳の婚姻関係にある男女に絞った数値でみてみると、15年程の間で3割から5割に増加

1)セックスレスの要因
面倒くさい/パートナーが肉親のように思える/仕事で疲れている/出産後なんとなく/セックスより趣味など楽しいことがある
女性は面倒くさい、男性は仕事で疲れているが目立つ
男女共に草食化/リアルなコミュニケーション能力の低下
セックスに対するマイナスイメージ→妊娠、性感染症の恐れ
人権侵害につながるややこしさ
 
夫婦における性的志向の類似性が大事
性的欲求の不均衡→不満の蓄積(最近は女性専用の風俗)
求めるー仕方なく応じる関係へ 関係の不均衡

2)性的満足の2面性
深いつながりを感じる→関係性の側面 積み重ねるもの
欲望が満たされる→消費・発散
ベクトルの異なる営み

3)夫婦の性的満足を維持していくためには?
SEXは共同作業という認識
妻の主体性、自己認知
女性が自分を知る(身体・性欲)
・どうすれば満たされるのか、どんな愛され方を望むのか
・なにはNOなのか
両者の思いやり/夫婦のコミュニケーション

妻側
育児でヘトヘト、仕事でぼろぼろ、これ以上、夫の面倒までみられない、夜は寝たい
隣でいつ子どもが起きるかわからないような住環境のなかでとても無理!
本音はスルーしたい

3 まとめ

結婚生活満足度 男女ともに差がない
結婚生活満足度は、どんどん低下する
子育て、収入、情緒的サポート、性生活の側面から考えてみた

4 参考文献

稲葉昭英:夫婦関係の発達的変化、渡辺秀樹・稲葉昭英・嶋崎尚子編、現代家族の行動と変容―日本家族庁さ(NFRJ98)による計量分析 p261-276、東京大学出版会
加藤司:離婚の心理学―パートナーを失う原因とその対処、ナカニシヤ出版、2009
母親になって後悔している:オルナ・ドーナト、鹿田昌美、新潮社、2022
(Web特集https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220523/k10013634851000.html

ジャパンセックスサーベイ2020
https://www.jfpa.or.jp/sexsurvey2020/

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