#38,#39,#40 家族の発達段階「独身の若い成人の時期」
独身の若い成人の時期:結婚に向けての準備段階
①職業選択と経済的自立
②親密な人間関係の確立
③生まれ育った家族(原家族から自己分化し配偶者を選択する)
④結婚に向けての準備
1.職業選択と経済的自立
結婚前の親からの経済的独立の重要性
「子どもが親に経済的に依存していては、心理的に自立することはほんど不可能。
親もまた無意識のうちに成人した子どもの行動や生き方に対して口を挟むのが当然と
いう感覚をもつ」フルマー
成人後の親子の経済的な絆は、子どもに自分の人生に責任をもつという感覚をもたせることを困難にし、親による年齢不相応な過度の依存、コントロール、支配につながりかねない
結婚生活への適応を左右する大きな要因として、実家を離れて独り暮らしをした経験があるかどうか(Stahmann)
2.親密な人間関係の確立
1)親密な関係性とは何か
弱さや不完全さを抱えた存在をそのまま認め合い、互いにより良く生きる(自己実現)するために支え合う関係性
2)親密さへの恐怖
カップルが親密になることを妨げる心理(ウィークスとトリート)
①依存への恐怖
依存イコール弱さであり、相手の重荷になってはいけない
②感情に対する恐怖
痛みを分かち合うことができない
論理的で合理的であることに最大の価値を置くパートナー
自分自身の喜怒哀楽全般の感情を理解しようとしないし、自分自身も表現できない
③コントロールを失うこと、コントロールされること
自由が奪われる、干渉されることへの恐怖
④自分をさらけ出すだすことへの恐怖
さらけ出したら嫌われてしまうのではないか
信頼関係がなかなか深まらない
⑤見捨てられることへの恐怖
パートナーはいずれ自分を見捨てるのではないかという不安
否定的な結果を予測して距離を置く
反対にしがみつく
誰しもが多少なりとももっている心理。
トライアンドエラーで少しづつ乗り越えることが大切
3.生まれ育った家族からの自己分化と配偶者の選択
原家族との連続性を保ち、両親など家族メンバーとの絆を保ちながらアイ・ポジション(私は私であり自分自身の人生に責任をもつ)という姿勢の確立が大切
それができれば、自分とは異なるユニークな存在としての他者ともより親密な関係を築いていける
原家族からの分化の困難さ
(1)融合
親からの承認や支持を過度に気にする、激しい怒りや憎しみの感情を持ち続ける
その結果、恋人との関係においても融合的で葛藤に満ちた関係になりがち
原家族に拘束されて他の人間関係が乏しくなる
(2)情緒的遮断
原家族と融合していて強い葛藤を抱えた人が結婚や進学を機に原家族から離れる
関係を切ったからといってもともとの葛藤が解決したわけではなく、本人の自己分化度そのものは変わっていないので、原家族以外の人と新たな融合関係をつくりがち
異性への強い依存、特殊な宗教や反社会的集団への没入宇、アルコールや薬物、ワーカーホリック、逃げ場としての結婚
逃げ場としての結婚は、その後のパートナーとの間の相互適応を困難にさせる
(3)傷ついた親を支える成人した子供
両親の葛藤関係に子どもが巻き込まれて三角関係が形成されやすい
子どもが親に対して、きょうだいに対して、あたかも親のような養育的役割をとることがある
両親の夫婦係を何とか取り持とうとしたり、親を支えようとしたり、カウンセラーのような重責を背負う
親にも子どもにも、<傷ついた子ども>モード <保護する親>モードがある
子どもの中の、<保護する親>モードが親の中の、<傷ついた子>モードを守ることに過度のエネルギーを注ぐことは、世代間の境界の混乱であり、親子役割の逆転
親を支えることにエネルギーを注ぐ子どもは、職業選択をはじめとして自分の人生のことを十分に考えられなくなったり、結婚して家を離れることは親を見捨てることだと罪悪感を抱いたり、親から責められたりして関係から抜け出すことが困難
子どもの原家族からの分化の大切さ
4.結婚に向けての準備
(1)そもそも結婚とは何か?
①社会的に承認された性的な結合
(②儀式などの公的披露によって結合が始まる)
③配偶者同志およびその子どもの間の一定の権利と義務の取り決め
(善積京子:結婚とパートナー関係 問い直される夫婦 ミネルヴァ書房 2000)
●夫婦間に生じる権利義務
結婚したことにより法的な義務を負う(民法)
①夫婦同姓
夫婦の協議で夫が妻かどちらかの氏を決める/夫婦別姓は認められていない
②同居義務
単身赴任など正当な理由があれば義務違反ではない
③協力・扶助義務
自己と同程度の生活レベルを保持する義務
④貞操義務
義務違反の場合
・離婚原因となる
・判例は不倫相手への慰謝料請求を求める
⑤子の嫡出性
・夫婦の間に生まれた子は嫡出子とする
⑥姻族関係の発生
・配偶者の3親等内の血族と姻族との関係において、親族としての生活扶養義務が生じる
⑦夫婦財産制
・原則夫の者は夫のもの、妻の者は妻のもの
⑧婚姻費用分担義務
・衣食住の費用、医療費、未成熟子の教育・養育費は、資産収入に応じて応分
⑨日常家事債務の連帯責任
・衣食住の資材購入、医療費、教育費については夫婦が連帯責任
⑩相続権
・配偶者が死亡した場合、常に相続人となる
●生涯発達の視点からみた結婚の意味
昨今未婚率は上昇し、「一生結婚する気はない」という若者も増え結婚の価値は、相対的に低下
自分の思い通りにならないのが家族でありパートナー
これほど葛藤を味わいそれに取り組む一種の同志のような関係は、他の人間関係ではありえない
大切だと思う人と抜き差しならない深い関係をもつことによって鍛えられて、人生が拓かれていく。
(2) 結婚に向けての準備
①結婚前のコミュニケーションと相互理解
相手のことを知っていると思って結婚したのに、細かいことになると違っていてこんなはずじゃなかった。
違いや葛藤に直面する体験なしに結婚するので大した問題でなくても、「相手は自分を愛していない」と思い込み離婚に至る
恋愛中にきちんとけんかをする、よい喧嘩をする
けんかもコミュニケーション
夫婦やカップルの問題は行き着くところコミュニケーションの問題
②結婚後の具体的な生活の詰め
家事をどう分担するのか、子どもは誰がどう育てるのかなどについて男女がきちんと話し合い合意に達する
恋愛から結婚に至るプロセスできちんとした合意がとれるようなコミュニケーションを交わす
夫の働き方、夫が仕事にどの程度コミットメントしているのか、妻はそれを受け入れるのか、子どもや家庭生活はどうなるのかのすり合わせ
育児休業等のシステムのリサーチ
③結婚準備教育
プリペアーという結婚前のカップル教育(アメリカ オルソン 2008)
プリペア・エンリッチJapan(https://www.prepare-japan.com/)
200項目にわたる質問に答え、分析結果を分かち合い、FTによるフィードバックセッションを受ける
お互いに感覚的、感情的には行為をもっていても、本当の意味では理解し合えていないこと
をあらかじめ知らせるようなガイダンス、文字通りのプリペア
アメリカでは、結婚式を挙げる前に、多くの牧師が婚前カウンセリングをするように訓練を受けている
葛藤解決ができないタイプに必要なのは、訓練であり夫婦カウンセリングの主なテーマ
さらに言えば、家族契約をつくる(ファミリールール)