『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』を読んで 〜 無になることを恐れる自分 〜
私は、ネガティブ・ケイパビリティという言葉をこのツイートで知りました。
このツイートやScrapboxをみて自分に足りない力だとピン!と来て、早速下記の本を買って読みました。
結論から言うと、この本は、私にとってかなりの衝撃でした。
普段の自分の生き方を足元から覆された気がしました。
ですが、いろんな兼ね合いで、『咀嚼と実践が難しい本だな…』ということをじわじわ実感しています。
今回はそれについて話していきたいと思っています。
まず、ネガティブケイパビリティとは?
前述のツイートでも引用されていたScrapboxにはこう書かれています。
この本は、ネガティブ・ケイパビリティの発祥や、ネガティブ・ケイパビリティを発揮した歴史上の人物などについて丁寧に解説されています。
例として挙げられているのが、医学におけるポジティブ・ケイパビリティとネガティブ・ケイパビリティの対比です。
用語として、ポジティブ・ケイパビリティについて解説すると、こちらのサイトでは「できるだけ早く不確かさや不思議さ、懐疑の中から脱出する力」と解説されています。
本書の中でも医学の世界についてこのように書かれています。
しかし、ポジティブ・ケイパビリティを発揮しすぎた医師は、終末医療においては、施しようのない患者を目の前にし、解決策がないことに苦しみ、患者のそばにいることに苦痛を覚えると書かれています。
終末期の患者の死にゆく不安には教科書では対処できません。
ここでネガティブ・ケイパビリティが必要になってきます。
この生まれたばかりの手つかずの心という箇所で、なるほど、大事なのだが難しい、となりました。
だいたいの大人は、社会人になった時点で『自己の確立された何者か』になっていると私は捉えます。
高校生や大学生のころまでは、自分は『未定』や『無』であると考えられ、その精神状態になることが出来たかもしれません。
しかし、社会人はポジティブ・ケイパビリティを身につけ、迅速に解決・対処し、バリューを発揮することを身体に覚えさせられています。
その癖を解除する精神状態には、並の人は持っていけないのではないかと私は感じました。
SNSなどでポジティブな行動を評価する社会が築かれている中、大人になって得た『有』の世界を手放して、結論も出さない問いに浸ることは、才能がいると思います。そしてそれを持つ人を私は大事にしたいとも思います。
ネガティブ・ケイパビリティを持つマネージャー像
3社しか経験していないので、例は少ないのですが、私の知る上司・マネージャーはみなネガティブ・ケイパビリティに長けている人達だった気がしています。
早急な解決に手を出さず、傾聴し、深い問いを持つことの出来る人たちでした。
マネージャー像には、色々あってよいと思うのですが、あまりポジティブ・ケイパビリティに寄っているマネージャー像、というのがなかなか私は浮かびません。
もちろん、ネガティブ・ケイパビリティとポジティブ・ケイパビリティは併せ持つのがいいと思いますし、要はバランスなのですが、『早い解決』は部下に任せられているのではないかという気がします。
ここで繋がってくるのですが、いま自分がポジティブ・ケイパビリティを手放せないと思っているのも、チームの中でイチ作業者という役割が強いというのも、向きとしてあるかと思います。
そして、マネージャーにいつかなる時は、ネガティブ・ケイパビリティの能力も伸ばしていかないといけないところかな、とも。
いまはその時ではなかったのです。
どういった力を持つべきかは、時期や役職によるな、と。
最後に
この本については、自分の所属しているコミュニティの読書会で読みました。
そこで、読んだ本の発表があるのですが、私は『TIPSとしてまとめるのはこの本の趣旨からそれるので、みなさんも無になって読んでみてください』と
発表したのですが、案の定?空振りしました。
やはり、ポジティブ・ケイパビリティの方が受け入れられやすいのだなと。(私の発表が下手なのもあるのですが)
でも、TIPSとしてネガティブ・ケイパビリティやポジティブ・ケイパビリティについて知るだけでなく、この本を読んで『無にリセットする』というのを是非トライしてほしいと思ったりもします。そしてその難しさも体感してほしいかなと。
読んで損になる本ではないな…と思っているので、ぜひ手に取って読んでいただけると嬉しいです。