トルクメンの女性用脚衣(バラク)その3〜中央アジアの民族衣装
これまでのお話3件はこちらです。
1と2は日本の美術館所蔵の、近代の脚衣でしたが、今回は現代のトルクメンの脚衣をご紹介します(私物)。
前にも書きましたとおり、脚衣は人に見せるものではなく下着ですので、下のように広げて全体を見せる(さらす)ことは現地の人にとっては好ましくないかもしれません。現地の皆さんが気分を害されたら申し訳ないです。
トルクメンの女性用脚衣(バラク)3
このバラクは、1997年にトルクメニスタンのトルクチュカ・バザールで入手したもの。縫い方や裁ち目の始末等から自家用ではなく販売用に作られたことが推測されます。
6種類の布
このバラクには6種類もの布が使われています。
基本構造は腰部に見えている白い木綿と襠の花柄プリント木綿の2種の布であり、両脚に布4種類を縫いつけています。
土台になっている白色木綿は目が粗く、通気性がよさそうです。ウエストは伝統的な外三つ折りではなく、内側に折り返して裁ち目を始末せずにミシン縫いし、身体の斜め方向に紐通し口を開けています。紐は付属せず、買った人が自分で通すことになっているようです。
股部分のマチ(襠)は大きな菱形で、青地小花プリントの木綿布、襠と腰部の縫い合わせも裁ち目の始末はなく、ミシン縫いして片倒し。
そして、残りの4種類の布がほぼ左右対称に配置され、大腿部に緑地の大柄花プリント、
脛部に青無地サテン、黒地小花プリント、黒地赤花プリントの化繊あるいは化繊の混じった布が重ねられています。
裾の刺繍
さて、人目に触れる部分である裾へ目を向けましょう。
化繊のテープを縫い付けてから裾を筒に縫っています。仕立てる前に施された刺繍の糸は絹ではなく、混紡か化学繊維のようで、主にクロス・ステッチで刺されています。クロス・ステッチ用のタテヨコ同比率の専用布ではなく、普通の布が使われています。この人たちは大抵は図案を下描きしないで、直にじゃんじゃん刺していくのに驚きました。ウズベクやタジクのスザニは文様を線描きしますが、トルクメンの人たちは少し違います。この辺りのことはもっと調査して確信を持ちたいものです。
このように、素材や作りは伝統的なものとはかけ離れている一方で、ゆったりした構造、広いマチ、裾の刺繍やテープ等、外見から見た決まりごとは守られています。
トルクメニスタンを最後に訪れて早くも四半世紀(!)、大統領が代わり、コロナで一時的に国を閉ざし、日本人観光客が当時と比べるとはるかにたくさん訪れるようになりました。中央アジアの他の国々よりも伝統的な生活が多く残されているように聞いたりしますが、今はどんななのでしょう。
遥か遠くから現地と人々に思いを馳せて本稿を締めくくります。
お読みくださって、ありがとうございました。
次はウズベクの脚衣へ。