スザニの刺し方〜刺繍針と糸始末
今回のテーマは針と糸始末です。
針について
針には実に多くの種類があり、これにはこの針の何番、あれにはあの針の何番・・・と使い分ける方は多いでしょう。例えば、フランス刺繍針は6本どりなら何番、1本どりなら何番と、さまざまな太さがありますし、なになに刺繍用と名前がついた針はたくさんあります。
さて、スザニを刺している人たちは針のことをあまり気にかけているようには思えません。手許にあった針、バザールで入手した針が思い思いに使われています。針はあまり神経質にならないで、糸が通って、布通りが良い針を使えばよいのです。それでも、メーカーさんがスザニ刺繍用針なんて出されたら、ひとつ連れて帰ってしまうに違いありません。
かぎ針のことはまた後ほど。
針先の方向について
日本では針先は自分から向こう側へ向けて刺す方が多いように思います。
ウズベキスタンの人たちが刺繍する際には、どちらかというと針先を手前に向けるようです。しかし、以前投稿した動画からわかるように、文様の配置や手順によっては必ず手前向きという訳ではありません。
刺し慣れているステッチでも、針の方向が違うだけで戸惑ってしまうかもしれませんが、現地の人に思いを寄せて刺してみませんか。
糸の始末について
現代のスザニの製作者たちは、糸の始末をどのようにしているでしょうか。
製作者数人の刺繍の動作を見たり、実作品の観察からわかるのは、糸始末の方法は1種類ではないということ。現地の人たちや関係者たちから聞いたこと、そしてスザニそのものの観察からわかったことを列挙すると…。
数針の波縫いをして刺し始める(現代のスザニ製作者から聞き取り)
玉留めも波縫いもなく1ミリ程度残して刺し始めてもほつれない(現代のスザニ製作者から聞き取り)
玉留めして刺し始める(19世紀スザニの観察による)
現代のスザニの裏側
刺し始めは玉留め、刺し終わりは糸を長く伸ばして何もしていません。世の中には、おそらく始めも終わりも玉留めや並縫いの処理をしていないものがたくさんあるはずでしょう。
意外に(?)玉留めしっかりしてあります。
19世紀スザニの裏側
19世紀スザニの裏側、(かぎ針ではない)針によるユルマの裏側はしっかり玉留めされていました。
そして、ボスマの裏側でも玉留めが星のように散りばめられていました。
今回の結論
スザニ刺繍の糸始末は、ボスマでもユルマでも玉止めしてOK。乙嫁語りの時代に寄り添うなら、玉留めでしょうか。とはいえ、人によってお好きなように刺すことを許容するのが、スザニなのです。
※ 今回の写真の刺繍糸はすべて絹糸、布は木綿です。