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出版原稿#20 視力と遺伝子 私の遺伝子解析結果
本投稿は拙著「最新の視力研究で導き出した 何歳からでも目がよくなる方法」の出版の際に、編集で使われなかった部分を掲載しています。本書もぜひお手に取ってください!↓
本日は視力と遺伝子の話です。遺伝子は人間の設計図。生まれてから取り替えることはできません。誰しも避けられない運命みたいなもので、気になってしまいますよね。
視力のお話をすると、「自分は生まれつき目が悪い」と思っている方に会うことがよくあります。実際に男性の場合、5%ぐらいの方は生まれつき近視になりやすく、また眼病の遺伝子疾患も確かにあります。
しかしながら、遺伝子はほとんど関係なく、環境や生活習慣の要因の方が大きい、という研究結果もあります。
なお私は視力2.0ですが、遺伝子はどうなんでしょうか?実は過去に遺伝子検査をしたことがあり、以下に公開します。
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視力と遺伝子は関係あるのか?
視力の相談に乗っていると、最も多く寄せられる質問に、「視力は遺伝するのか?」というものがあります。親の代から眼が悪いので、自分の目も悪いのはしかたない、自分の目が悪いから、自分の子供も眼が悪くなるのでは?とお考えの方が多いようです。
はじめに答えを言いますと、遺伝はあまり気にする必要はない、ということです。人間の体ですから、必ず何かしら遺伝はあるのですが、目も脳も非常に可塑性(後天的に訓練で変化すること)に富んでおり、成長した環境の影響の方がはるかに大きいわけです。
いわゆる遺伝的影響が決定的なのは、例えば肌の色や髪質、骨格などですが、目と脳は、これらの生まれつき変化しにくい部分とは違います。
人間はもともと視力2.0である
人間の設計図は、生まれつき視力が2.0程度になるように設計されています。人類が今の姿になった数百年前から現代まで、人類はほとんどの時間をサバンナで生活し、遠くの獲物や木の実を見つけるために歩き回って探していました。
そのためには、より遠くまで良く見えて、何があるのか正確に把握する目を持つことと、速くて長距離を走れる脚力をもつ個体が、生存に有利でした。現代社会に生きる私たちはその末裔です。その時代にはもちろんメガネなんてありませんから、みんな裸眼で見ていました。つまり、みんな生まれつき「遠くを見る能力があること」が前提で生まれてきているのです。
遠くの小さいものを見る能力は目の解像度で決まりますが、これは光を感じる細胞のサイズで決まります。そしてこのサイズが視力2.0~2.2ぐらいに相当し、個人差も民族差もほとんどありません。
厳密には、目は細かく震えて脳で視覚情報を統合する能力があり、もう少し小さなものも見えるようですが、これは後ほど「視力3.0は実現可能か?」で説明します。
つまり、現代社会においても、みな裸眼視力2.0になるように生まれてくるのです。そうでない人は、どこかで身体が不自然な状態になり、視力、つまり遠見視力が低下しているのです。視力を低下させることがないように成長すれば、人生の長きにわたり視力2.0で暮らすことができるようになります。
大切なのは視力が十分発達する環境に身を置き、その後視力を低下させない、ということなのです。
近視の子は近視?
実際に遺伝は関係あるのか?ということを調査した論文があります。オーストラリア国立大のモーガンらはシンガポールとシドニーの中華系学生を比較し、家族のライフスタイルによる近視の発生について調査しており、親の近視率がほぼ同じであるにもかかわらず、ライフスタイル次第で大きく近視の発症率が異なったと結論しています。
そのほかにも親と子供の近視率とライフスタイルの相関関係を調査した論文もあり、近視の親の子供でも屋外活動が多ければ近視になる確率は低い、というデータが得られています。同時に、屋外活動が少ない子供を比較すると、両親が近視の子供のほうがより近視になりやすい、というデータも得られました。この場合は遺伝の影響はあると言えますが、遺伝より屋外活動時間のほうが、影響度が大きいということです。
日本でも近年近視拡大が止まらないことから、近視に関する統計調査が行われており、文部科学省の「令和4年度 児童生徒の近視実態調査 調査結果報告」では、データ解析により、遺伝と環境の両方が関係していると結論付けられたものの、環境による影響の方が大きいと考えられ、「親が近視であったとしても、その子供が必ずしも近視になるとは限らず、適切な環境で生活することが大切です。」とメッセージがありました。
私の遺伝子は「普通の日本人」
さて、では裸眼視力2.0の私の遺伝子はどうでしょうか?前述のように母は近視、父親は視力2.0、兄妹は近視ですが、生活習慣の影響のあり、それだけではよくわかりません。30代の頃に興味本位で購入した遺伝子検査(DeNA社MyCodeサービス;現在は株式会社アルムに事業移管されています)を確認してみました。
そのうち、視力に関係ありそうなところをピックアップしてみますと、以下のようなものがありました。
眼圧
高い低いあるのですが、結果は「普通」で、日本人の47.9%と同じようです。高いと緑内障などになりやすく、また網膜や血管を圧迫するので視力も低下しやすいです。
眼の機能(近視か遠視か)
結果は「普通」でした。日本人の49.1%と同じのようです。
角膜の曲率
結果は「大きい」でした。日本人の75%と同じです。曲率が大きいほうが網膜の手前で焦点を結べるので、軸性近視を抑えられそうですが、ほとんどの日本人と同じ分類でした。
角膜の厚さ
結果は「厚い」でした。日本人の95%と同じで、こちらも普通の日本人という感じです。結果、私は目に関して、「きわめて普通の日本人」だと分かりました。
生活習慣にかかわる遺伝子もある
また、目に関する生活習慣の遺伝子についても確認しました。突出していたのは、「余暇にTVを視聴しないタイプ」で、日本人のわずか5.5%のようです。また、「余暇にコンピューターを利用するタイプ」でこちらも日本人の12.7%と、私は少数派に該当するようです。
つまり、私は休日などにTVをほとんど観ずに、コンピューターで作業しているタイプであるということのようです。確かにこの原稿も今日は日曜日の午後に書いています。ちなみに午前中は子供と昆虫採集に行っていました。
実は上記の2つの遺伝子は対応しているらしく、TVとコンピューターは形こそ似ていますが、真逆の使い方なのです。TVは情報を視聴するので「受動的」ですが、コンピューターは「能動的」に作業をする必要があります。
つまり私は余暇にも何かやりたいことがあるタイプ、簡単に言ってしまえば、仕事人間です。休日や余暇の時間でも、だいたい何かしています。読書、原稿執筆、勉強、家族や将来の計画を練ることが多く、受動的にTVや動画をずっと見ている、ということはまずありません。TV自体あまり見ないですね。
同時に「眼精疲労をやや感じやすいタイプ」で、日本人の49.9%とも同じですが、疲れたらすぐに仕事を切り上げるタイプであると考えられます。目の疲れというよりは、頭の疲れを意識し、あんまり効率が良くないな、と思うとすぐに席を立ち、歩きながら考えてリフレッシュすることはよくやります。
そのような私の性格、体質はライフスタイルに影響するので、環境影響の多い視力には確実に影響してきます。遺伝子は視力と完全に関係ないとは言えないですが、目と脳は一生使い続けるもので、やはり日々の生活習慣のほうが影響は大きいです。次の章では私の生い立ちから現在までを振り返って、視力2.0以上を保っている理由を探ってみました。
(本書第2章へ続く)
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いかがでしょうか?
私の場合、目にかかわる遺伝子は「普通」、生活習慣にかかわる遺伝子は、近視の進行を抑えるのに少し有利な性格のようです。
少し話は飛びますが、遺伝子はその配列から、生成されるタンパク質が異なるわけですが、近年はその配列が変わらなくても、配列の最末端である官能基を、メチル化やアセチル化といった、別の官能基に変わりうることもわかってきています。つまり、生まれつきの遺伝子配列どうりのタンパク質が生成しないようにもできる、ということですね。
遺伝子は変えられなくても、メチル化してしまえば全く違うタンパク質ができるわけですから、運命に従う必要はない、というわけです。メチル化の方法は以下の書籍にありますので、運命に逆らいたい人はどうぞ!↓
人間て、本当に面白いですね!それでは次回もお楽しみに!
フォローしてくださいますと、いろいろな小動物が飛び出します!
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