理学療法士が大学院進学する意義

多くの医学系学生の進路は、

①病院に就職して臨床に出る

②大学院に進学する

(③企業に就職する)

です。私は学部生の時にこの進路選択に悩みました。これらを決めるためにはそれぞれのメリット・デメリットを知らなければなりません。今回は②大学院に進学するのことの意義についてまとめます。

私は大学を卒業後、病院に就職して臨床経験を積んだ後に大学院へ進学しました。その経験から得たり感じたりした大学院進学の意義についてまとめます。医学系学生の進路決定、臨床にいて研究に興味がある人のキャリアデザインの参考になれば幸いです。

大学院進学する意義は大きく以下の通りです。(随時追記予定)


臨床で真に役立つ論文を選べるようになる

大学院進学する意義の1つ目は「臨床で真に役立つ論文を選べるようになる」です。大学院進学前では論文を要旨から背景、考察まで全て読み、学部の時に得たわずかな知識と臨床での経験則から、主に考察の内容で論文の良し悪しを判断していました。しかし、大学院進学後は論文の要旨と方法をさっと読むことで読む必要のない論文を判断できるようになりました。

ではなぜ論文の取捨選択の精度が高まるかというと、大学院では細部まで徹底的に考えて研究を行うからです。学部でも卒業研究を行いますが、大学院における研究は科学雑誌への投稿が前提とされており、学部での卒業研究以上に精度が高い研究が求めれらます。論文における「背景」の項目では、先行研究を読み込むことでなぜ自分の研究が必要なのかを考え、「方法」の項目ではより質の高い結果が出るよう適切な条件を考えて設定し、「考察」の項目では研究結果からその研究の強みや問題点について吟味するという課程を行います。これらを一度しっかりと行うと、他の研究を読んだときにその研究ではどのように工夫を行っているのか、行えていないのかが分かるようになります。

私は臨床にいた時に毎朝晩、医学系の論文を読んでいました。臨床で患者さんをみていて感じた疑問を解決するためにひたすら読みました。その中には論理的に正しそうなもの、論理的に破綻しているものがありました。そして論理的に正しそうなものは実際の患者さんで検証してみて、その論文で述べていることが正しいのか否かを判断していました。今振り返ってみると、私が行っていた論文の検証方法は正しくなかったかもしれません。臨床でみた数症例に当てはまるか否かという方法は患者さんの特徴の偏りの影響があります。たまたまその論文で述べていることが当てはまらない患者さんたちであった可能性、逆にたまたまその論文で述べていることが当てはまる患者さんたちであった可能性があります。

大学院進学後、研究を徹底的に行った経験がある今であればこのような論文の良し悪しの判断は当時と比較してかなり精度が高まっているため、臨床に真に役に立つ論文を選択することができます。


臨床経験の蓄積の精度が高まる

大学院進学する意義の2つ目は「臨床経験の蓄積の精度が高まる」です。臨床では多くの患者さんをみる経験から得られる学びが多くあります。こういう疾患の患者さんたちはこういう傾向が強いなど。しかし、その経験から得たと思っている学びには自身の主観がかならず混ざってしまいます。大学院進学することで、この主観の混在を極力小さくできるようになります。

ではなぜ大学院進学によって主観の混在を極力小さくできるのでしょうか。先述したように大学院では徹底した研究を行います。この研究における方法の設定の場面では、可能な限り自身の思い込みなどのバイアスが混在しないように注意します。これによりどのようなバイアスが結果に影響を与えるのかを学ぶことができます。

例えば、自身で疾患の特徴をまとめるときに、その間違えを減らすことができます。具体的には、肩関節周囲炎の患者さんはデスクワークをやっている男性が多いので、デスクワークが肩関節周囲炎の原因となっているかもしれないと考えたとします。しかし、肩関節周囲炎はそもそも疫学として女性患者の割合が高く、自身が見た患者さんがたまたま男性が多かっただけかもしれません。また、家事や育児などデスクワーク以外の活動が影響しているかもしれません。

これはあくまで一部ですが、様々なバイアスの存在を知っておくことで、自身が考えていることが思い込みであるという選択肢を挙げられ、批判的に吟味することができます。これによってより精度高く臨床経験を積んでいくことができるようになります。


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