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「AI様々」で済ませたら教育現場は危険! AI時代、本当に必要な教員のチカラとは?

 校内研修のまとめレポートを作る際、AIの出力結果を鵜呑みにした結果、重要な視点を見落とす危険性を痛感。AIを過信せず、批判的に検証する姿勢が重要。

 AIを教育現場で有効活用するためには、AIの出力を別のAIで検証する「セカンドオピニオン」を取り入れ、教職員のAIリテラシーを高める必要がある。

この記事で伝えたいこと

AIの出力結果に潜む落とし穴

こんばんは。ささです。

新年度が始まり、慌ただしい日々を送る先生方も多いのではないでしょうか。私も例外ではなく、先日、校内研修で一年の取り組みについてまとめやふり返りをする機会がありました。

その中で各先生方の研究成果を共有する時間がありました。先生方はそれぞれのテーマで授業の改善に取り組み、素晴らしい成果を出されています。しかし、研修主任から出されたのは「成果をA4一枚にまとめてほしい」という指示。先生方の努力と熱意が詰まった研究を一枚に凝縮するのは、かんたんではありません。

そこで今回は試験的にGoogle Geminiを活用し、個々の成果と課題を要約してみることにしました。AIがまとめた内容は、確かに効率的で見た目も整っています。

「これ、すごくまとまってますね!」


そんな声が上がりました。画面に映し出されていたのは、Google Geminiが出力した研修まとめ。確かに、見事に要点が整理され、読みやすくまとめられていました。

しかし、その瞬間、私は違和感を覚えました

それは、AIの出力結果に対して、誰も深い検証をせずに「まとまっている」という表層的な評価で済ませてしまっていたからです。

AIを活用すること自体は決して悪いことではありません。むしろ、私たち自身も日々の業務でAIツールを活用しています。

問題は、その「まとまっている」という評価に安易に満足してしまう姿勢にあります。各教員が1年間かけて取り組んできた研究や実践の成果を、AIが出力した文章で「OK」としてしまって本当にいいのでしょうか?

なぜ?AIの"完璧"な出力結果を鵜呑みにしてはいけない理由

AIの出力は、一見すると完璧に見えます。特にGoogle Geminiのような最新のAIは、情報を整理・構造化する能力が非常に高く、人間が書いたかのような自然な文章を生成します。

しかし、その「完璧さ」にこそ落とし穴があります。

実際の校内研修では、こんな場面がありました。先生方それぞれが1年間取り組んできた授業改善の成果と課題を、A4用紙1枚にまとめる必要がありました。そこで私たちは、個々の取り組みの詳細をまるっとAIにコピペ入力し、サマリーを作成してもらいました。

出てきた結果は確かに「まとまっていました」。しかし、よく見直してみると、次のような問題点が見えてきたのです。

  • 個々の教員の独自の工夫や気づきが均質化されている

  • 数値的な成果は明確に示されているが、プロセスでの試行錯誤が省略されている

  • 「課題」の部分が一般的な内容に抽象化されている

AIを単なる便利な道具として捉え、その結果を深く検証せずに受け入れてしまう傾向です。Google Geminiがまとめた研修成果の要約は、一見すると非常によくできていました。しかし、「まとまっている」という印象だけで満足してしまい、内容を精緻に吟味することを怠ると、見過ごしてしまう点があるかもしれません。

吟味してる?

もう一つのAIを"相棒"にする「セカンドオピニオン」という視点

では、AIの出力結果をより効果的に活用するには、どうすればよいのでしょうか?

私たちが提案したいのは、医療現場でよく使われる「セカンドオピニオン」的なアプローチです。つまり、一つのAIが出した結果を、別のAIに投げ直して検証してもらうという方法です。

具体的には以下のような手順を踏みます。

  1. 最初のAI(例:Google Gemini)に文章の生成や要約を依頼する。

  2. 生成された結果を別のAIに投げ、以下のような観点で検証を依頼する。

    • 内容に抜け漏れはないか?

    • 重要な文脈が失われていないか?

    • より明確に表現できる部分はないか?

  3. その検証結果を踏まえて、人間が最終的な判断を行う。

やっぱり人間が判断しよう

さらに、AIが出力した結果を別のAIに評価させるというアイデアも浮かびました。AI同士で意見を交換させることで、より多角的な視点から結果を検証できるのではないかと考えています。

必須スキル!教職員のAIリテラシーをどう鍛える?

AIを教育現場で有効活用するためには、教員のAI活用リテラシーを高めることが不可欠であると強く感じました。AIは便利なツールですが、その力を最大限に引き出すためには、使う側の判断力と批判的思考力が不可欠です。

AIが出力した情報を鵜呑みにするのではなく、批判的な視点を持って精査する。さらに、必要であれば別のAIに意見を求め、多角的に検証する。この一連のプロセスこそが、AI時代に求められるリテラシーだと考えます。

AIを単なる作業効率化の道具として捉えるのではなく、思考を深めるためのパートナーとして捉えることが重要です。そのためには、教員自身がAIの特性を理解し、適切に使いこなすための知識とスキルを習得する必要があります。

また、AIを「セカンドオピニオン」として活用する方法も有効です。AIが出力した結果に対して、「これは本当に正しいのか?」「他に考えられることはないか?」と問いかけることで、多角的な視点を養うことができます。

まとめ:AIとの"共創"で拓く教育の未来

本稿では、校内研修でのAI活用事例を基に、教育現場におけるAI導入の課題と可能性について考察しました。AIは、研修報告の効率化に貢献する一方で、その出力結果を鵜呑みにしてしまう危険性も示唆されました。

重要なのは、AIを単なる便利な道具としてではなく、批判的思考を促し、学びを深めるためのパートナーとして捉えることです。そのためには、教職員自身がAIリテラシーを向上させ、AIの出力を批判的に評価する能力を身につける必要があります。

AIの発達により、確かに多くの作業が効率的になりました。しかし、私たち教育者には新たな役割が求められています。それは、AIの出力を適切に評価し、教育現場の文脈に沿って活用する力です。

AIは確かに強力なツールですが、教育の本質は人と人との関わりにあります。AIを活用しながらも、私たち教育者にしかできない「気づき」や「配慮」を大切にする。そんなバランスの取れた教育実践を目指していく必要があります。

「AIは便利な道具。しかし、それを使う私たちの判断力こそが、子どもたちの学びを支える最も大切な要素になる。」

このような気づきを、より多くの教育現場で共有できれば幸いです。

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