スプレッドシート研修を自由進度学習で!スキルの差も関係なし、個別最適な新しい校内研修のカタチを提案します。
はじめに
あけましておめでとうございます。小学校で働くささです。
今回は、この冬休みに行った職員研修について紹介します。同僚の先生方から「スプレッドシートを使った研修をしてほしい」という要望があり、研修を企画・実施しました。
今回の研修は、自由進度学習の進め方を取り入れた試みの研修です。その経緯や内容について、これからお話していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【研修前の課題】一斉講義型研修ではスキル差で進捗にバラつき
毎年、長期休みの研修で頭を悩ませていたのが、参加してくださる先生方のICTスキルって、ほんとに 多様だなっていうことなんです。もちろん、それは当然のことなんですけどね。
過去の研修の中でも、特に印象に残っているのが、エクセルの研修を行った時でした。もう、それはそれは、進捗状況が綺麗に分かれるんですよね。
例えば、私が「それでは、次にこの関数を入力してみましょう」と説明すると、 すでに操作を終えて、次のステップに進んでいる先生もいらっしゃるんです。「えっ、もうできたんですか?!」と思わず声に出してしまうほど、スムーズにこなしてしまう方もいるんですね。素晴らしいと思います。
その一方で、エクセルの基本的な操作、例えばセルの選択や文字の入力といったところで、どうしても手が止まってしまう先生もいらっしゃるんです。「すみません、どこをクリックすればいいんでしょうか?」といったご質問をいただくことも、少なくありませんでした。
もちろん、そういったご質問には、できる限り丁寧にお答えするように心がけています。ただ、お一人の方に時間をかけて対応すると、どうしても他の先生方の進行が止まってしまうというジレンマがありました。
以前、Canvaの研修を行った際には、比較的スムーズに進められている先生が、操作に戸惑っている先生をサポートしてくださる、という場面がありました。これは本当にありがたい光景で、おかげで全体としてスムーズに進めることができたんです。ただ、毎回、そのような協力体制が自然に生まれるとは限りません。
一斉講義型の研修形式では、どうしてもこの参加者間のスキル差に、どう対応していくか、というのが、長年の課題だと感じていました。全員が同じペースで、同じように理解できる、というのは、理想ではありますが、現実はなかなか難しいものだと痛感していました。
【解決策】授業での成功を応用!職員研修に自由進度学習を導入
そんな一斉講義型の研修における課題を何とかしたい、何か良い方法はないかと。そんな時にふと頭に浮かんだのが、自分の授業で取り入れている「自由進度学習」の考え方でした。
今年度、私のクラスでは、子どもたちが自分のペースで学習を進めていく自由進度学習を導入していました。もちろん、最初は戸惑う子もいましたが、徐々に自分のペースで、じっくりと課題に取り組めるようになり、結果的に、学習内容の理解度も深まったように感じています。
授業で自由進度学習を導入してみて、一番良かったと感じたのは、子どもたちが「わからない」と思った時に、周りを気にせず質問できる雰囲気になったことでした。一斉授業だと、なかなか手を挙げにくい子も、自分のペースで学習している時なら、先生に友達に声をかけやすいんですよね。
「これ、職員研修にも応用できるんじゃないか?」
そう思ったんです。先生方も、それぞれ得意なこと、苦手なことがあります。 "表計算の操作が得意な先生もいれば、そうでない先生もいる" のは当然です。それならば、研修もそれぞれのペースで進められて、わからないことがあれば気軽に質問できるような形にすれば、もっと効果的な学びになるのではないかと考えました。
それに、 "Canva研修での成功事例" のように、お互いに教え合う、助け合うという良い側面も引き出せるかもしれない、という期待もありました。
そこで、今回のスプレッドシート研修では、この自由進度学習の考え方をベースに、研修をデザインしてみることにしたんです。
【研修内容】脱アナログ!スプレッドシートで委員会当番表をスマートに作成
今回の研修テーマは、「委員会の当番表を協働的に作業できるスプレッドシートを作成する」です。
多くの学校で、委員会の当番表は未だにアナログな方法で作成されているのではないでしょうか。例えば、紙に手書きで作成して回覧したり、印刷物を掲示したり…。
そこで、スプレッドシートを1枚共有し、複数人で同時に編集できるようにすれば、リアルタイムで情報が共有でき、効率的に当番表を作成できると考えました。
その場で話し合いながら、役割を書き換えたり、仕事内容を追記したり。そんな共同作業を通じて、より使いやすく、より良い当番表が完成するはずです。
身につけてほしい技能・スキル
今回の研修を通して、先生方に特に身につけてほしい力は大きく分けて3つあります。
プルダウンリストの設定: 多くの先生が当番を入力することを考えると、入力ミスを減らし、入力の手間を省くために、プルダウンリストは非常に有効です。例えば、役割の選択肢(「〇〇係」「△△担当」など)をあらかじめ用意しておけば、クリック一つで選択できるようになります。
シートの保護: せっかく作成した当番表が、誰かの誤操作で数式が壊れてしまったり、意図せず内容が書き換えられてしまったり…。そんな事態は絶対に避けたいところです。そこで、入力してほしくないセルは保護したり、特定の範囲のみ編集可能にしたりする設定をマスターしていただきたい。スプレッドシートの「基礎的マナー」とも言えるスキルです。
見やすいシート作り: 色分けをしたり、罫線を引いたり、フォントを調整したり…。ちょっとした工夫で、スプレッドシートの見やすさは格段に向上します。共同で利用するスプレッドシートだからこそ、誰もが見やすいように整える意識を持ってほしいと考え、基本的な操作を研修内容に盛り込みました。
関数をバリバリ使う、みたいな高度な内容は、今回はあえて外しました。まずは、 "多くの人が共同で使う上で便利な機能" に絞って、スプレッドシートの良さを体感してもらいたい、そんな思いでカリキュラムを組みました。
【学習支援】アプリ・動画・Classroomで自由進度学習をサポート
今回の研修で、自由進度学習を最大限に活かすために、3つのツールを効果的に組み合わせました。
ツール①「自分で学びをすすめるアプリ」
まず、中心的な役割を果たしてくれたのが、Ark2020さんが作成された「自分で学びをすすめるアプリ」です。
以前、私のブログ記事でもご紹介したのですが、このアプリは学びのプロセスをまるでゲームのように楽しめる設計になっているのが特徴です。
研修内容は細かくミッションとして設定することができます。、例えば「スプレッドシートを開く」「新しいシートを作成する」「セルに文字を入力する」といった具合です。
ミッションをクリアするごとにチェックボックスにチェックが入り、それが目に見える形で蓄積されていくため、先生方は自分の進捗状況を常に把握できます。ミッションが溜まっていくと、アプリ内の学びメーターがぐんぐん伸びていくので、達成感が得られやすく、モチベーション維持にも繋がります。
研修の開始時には、「今日はどのミッションから取り組むか」を自分で選択できる機能も搭載されています。研修後には、学んだ内容を振り返る時間も確保されており、計画、実行、振り返りという学習のサイクルをアプリ上で完結できるのが大きなメリットです。
さらに、このアプリのデータはスプレッドシートと連携しています。管理者である私(講師)は、先生方の進捗状況をリアルタイムで確認できるため、「〇〇先生、最初のミッションで少し時間がかかっているな。何か困っていることはないかな?」といった具体的な状況把握が可能になり、きめ細やかなサポートに繋げることができます。
アプリには質問ボタンも用意されており、「先生、すみません!〇〇の操作が分からなくて…」と、まるでチャットのように気軽に質問できます。一斉講義型の研修では「こんな 簡単な質問、今さらしても良いのかな…」と遠慮してしまう先生もいるかもしれませんが、自由進度学習であれば、自分のタイミングで、周りを気にせず質問できる。これは、自由進度学習ならではの大きなメリットだと感じています。
ツール②解説動画
研修教材としては、私が実際にスプレッドシートで当番表を作成していく様子を録画した解説動画を用意しました。まるで隣で一緒に作業しているかのように、具体的な操作手順を自分のペースで確認できるように、画面キャプチャを行いながら、操作のポイントを丁寧に解説しました。Xのポストは簡単なイメージ動画です。
動画は、1本あたり3分から5分程度にまとめ、「プルダウンリストの作成」「シートの保護設定」といったテーマごとにチャプターを分割しました。それぞれのチャプターが、アプリのミッションに対応するように設計されているため、アプリで課題に取り組む中で「ちょっとやり方を忘れてしまったな」と思った時に、ピンポイントで必要な情報を動画で確認することができます。テロップや凝ったアニメーションは使用していませんが、その分、実際の操作画面が見やすく、分かりやすい動画になっていると思います。
ツール③研修専用Classroom
これらの動画や、研修で使用するスプレッドシートのテンプレート、そしてアプリへのリンクなどの教材は、Google Classroomで共有します。動画へのリンクもClassroomにまとめておくことで、先生方は迷うことなく、必要な情報に簡単にアクセスできるように工夫しました。
【研修設計】多様な状況に配慮!柔軟な研修で誰もが学びやすく
今回の研修を設計する上で、最も意識したのは、「できるだけ多くの先生が、それぞれの状況に合わせて無理なく学べるように」という点です。
ありがたいことに、多くの先生方から「ぜひ参加したい!」という声をいただいたのですが、どうしても出張や休暇で、研修時間に参加できない先生もいらっしゃいました。
また、研修時間として60分を設けましたが、先生によって進むペースは異なるため、時間内に終わらない可能性も十分に考えられました。
さらに、今回は冬休み期間中の研修ということもあり、「せっかくの機会なので、ご自宅でも自分のペースで学習を進められるようにしたい」と考えました。職場だけでなく、自宅からも教材にアクセスできる環境を整えることは、今回の研修における重要なポイントの一つでした。
具体的には、先ほどお話したGoogle Classroomをプラットフォームとして活用し、教材や動画を集約することで、時間や場所に縛られずに学習できる環境を実現しました。研修当日に参加できなかった先生も、後から動画を視聴したり、教材を確認したりすることができます。
また、60分という研修時間内で終わらなかった場合でも、引き続き自分のペースで学習を続けられるように、研修期間を冬休み期間中に設定しました。まとまった時間が取りやすいタイミングで、じっくりと取り組めるようにと考えたのです。
研修後には、成果物である当番表のスプレッドシートを専用のClassroomに提出してもらい、私から個別にフィードバックを行う予定です。「素晴らしい出来栄えです!」「〇〇の関数を使うと、さらに便利になりますよ」といったコメントを送ることで、先生方の学びをさらに深めていきたいと考えています。
このように、研修時間に参加できない先生、研修時間内に終わらない可能性のある先生、そして自宅で学習したい先生…それぞれの状況に合わせた柔軟な対応を心掛け、誰もが取り残されることなく、自分のペースで、そして安心して学べる研修を目指しました。
【予告】気になる研修の成果と今後にご期待ください
さて、今回は、自由進度学習をベースにしたスプレッドシート研修について、その準備段階や具体的な内容、そして研修設計における工夫についてお話してきました。
"一斉講義型の研修で感じていた課題" から始まり、 "授業での自由進度学習の経験を活かして今回の研修を企画した経緯" 、そして "具体的な研修テーマや、それをサポートするためのツールや仕組み" について詳しくご紹介しました。 "多様な状況の先生方が、それぞれのペースで学べるように" 、様々な工夫を凝らした今回の研修。
"果たして、実際にやってみてどうだったのか?"
"先生方の反応は?"
"そして、私自身は、この研修を通してどんな学びを得たのか?"
次回の記事では、今回の研修を実際に実施してみた結果について、詳しくお伝えしたいと思います。 "うまくいったこと、苦労したこと、そして今後の展望" など、今回の研修を通して得られたリアルな経験を共有できればと思っています。
どうぞ、次回も楽しみにしていてください。
追記:この実践の結果・ふり返りはコチラ↓