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中小企業に200万円支給「これで倒産を防げますか?」

>テレビ東京アナウンサー・角谷暁子と日経ビジネス編集委員・山川龍雄が、世間を騒がせている時事問題をゲストに直撃! 第1回のテーマは、中小企業に200万円支給「これで倒産を防げますか?」。新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業に対し、緊急経済対策として現金支給や融資による支援が打ち出された。しかし東京商工リサーチの松永伸也・情報部部長は「出費がかさむのは4月下旬。5月以降の入金では遅い」と指摘。「中小企業の中には経済対策の中身を理解していない経営者も多い。このままでは制度を活用せずに、“万事休す”という事例が増える」と警鐘を鳴らす。「コロナ倒産」の急増を回避するには、債権者による破産申請の凍結や手形の不渡り猶予など、東日本大震災のときに取ったような思い切った措置が必要と説く。

【関連表】各国の中小企業の支援のスピード。その他の表や出演者の写真はこちらの元記事を参照ください

* * *

角谷暁子(日経プラス10サタデー・キャスター、以下、角谷):今日から新コーナーを始めさせていただきます。よろしくお願いします。

山川龍雄(日経プラス10サタデー・メインキャスター、以下、山川):西野志海アナウンサーがニューヨーク駐在となった関係で、ご好評いただいていた「もっとみたい!ニュースの疑問」が終了しました。後任の角谷さんが、新しい連載企画を担当します。そしてタイトルはやっぱり……。

角谷:また名前にかけたダジャレですね(笑)。角谷なので、「カドが立つくらい」に遠慮せずに質問してまいります。

山川:視聴者、読者の皆様が、「そこを聞いてほしい」と思っているニュースの疑問を、単刀直入に質問していきましょう。

角谷:はい。このコンテンツは毎週土曜朝9時30分から7チャンネル、BSテレ東で放送している「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」という番組内でお伝えしきれなかったことを配信でお伝えしていこうというものです。

 山川さんにも引き続き番組を一緒に進行していただきます。

山川:角谷さんは全然かまないから、いじりがいがないですね(笑)。西野さんのときは、オープニングをスムーズに展開できるまで5回くらいかかりましたよ。あっ、口が滑ってしまった。配信だからニューヨークにいても視聴できますね。西野さんが聞かないことを祈ります(笑)。

 ゲストの方を紹介しましょう。

角谷:はい。今回お話を伺うのは、東京商工リサーチ情報本部情報部部長の松永伸也さんです。よろしくお願いします。


松永伸也氏(東京商工リサーチ情報本部情報部部長、以下、松永氏):よろしくお願いします。

角谷:そして、今回のテーマはこちらです。「108兆円の経済対策は十分か?」

 新型コロナウイルスの問題に対応するため、政府が緊急経済対策を打ち出しました。108兆円という事業規模の大きさが話題になっていますが、本当に十分なのでしょうか。実際に困っている人たちを支えられるのでしょうか。企業分析の専門家に伺います。

山川:松永さんは企業の資金繰りの実態や倒産情報をずっと追いかけてきた、その道のプロです。コロナショックに苦しむ企業の実態を赤裸々に語っていただいた上で、どんな救済策が必要なのか、考えていきたいと思います。

角谷:最初の質問はこちらです。「200万円で足りますか?」

山川:この200万円というのは、経済対策に盛り込んだ中小企業への200万円の給付のことですね。

角谷:そうです。中小企業には最大200万円、フリーランスや個人事業主には最大100万円の現金を支給するということですが、これで足りるのでしょうか。

松永氏:もちろん企業の規模や、コロナ問題で受ける影響の大きさによって、状況は異なりますが、足りないところが多いでしょう。

 よく分からないのは、200万円は1回だけなのか。状況によっては、また追加給付が行われる可能性があるのか。それが明確になっていません。

角谷:200万円で、いつまで頑張ればよいのか明白ではないので、不安ですよね。

松永氏:そう。この先、感染拡大が長引いた場合、改めて補助しますと言ってくれれば、頑張ろうという気持ちになれますが、これだと極端な話、「もらったら、やめよう」という人が出てくるかもしれません。

角谷:やめる?

松永氏:200万円をもらって、借金を返済し、従業員に生活費を渡して、会社を閉じるということです。

角谷:実際には企業の存続を諦めてしまう人が多いのではないかと。

松永氏:そうです。108兆円という事業規模も、金額だけ聞けばすごいですが、それぞれの企業や個人にとっては、一体自分にはどれだけおカネが回ってくるかが全てです。もちろん200万円と聞いて、喜ぶ人がいるかもしれませんが、決して多い額とは言えません。

山川:政府が掲げている、中小企業向けの主な支援策を表にしました。現金給付のほかに、雇用を維持した企業を助成する雇用調整助成金も特例を認めて拡充しています。日本政策金融公庫や自治体が、無利子・無担保で融資する制度も始まっています。

 また、東京都は休業要請に応じた事業者に50万円の協力金を独自に給付する方針も打ち出しました。いろいろなメニューはありますね。

●制度を知らずに“万事休す”の可能性も

松永氏:いずれも経営者が知っていれば、の話です。

山川:知っていれば?

松永氏:待っていれば現金が届くわけではありません。全ては申告制ですから。いずれも自分が足を運んで、相談して、審査を受けなければなりません。中小、零細企業の全ての経営者が制度を理解しているとは限りません。中には、制度を知らずに万事休すというところが出てくるかもしれません。

角谷:今まさに困っている人は、目の前のことで手いっぱいです。どんな制度があるのか調べる余裕もないのでは。

松永氏:そう。相談窓口としてまず思いつくのは、日ごろ取引のある金融機関です。こんなときは、普段からメインバンクのようなところを持っているかどうかで、差がつきます。

 あとは公庫や、自治体に窓口があります。そこに実際に足を運ぶ必要があるわけですが、現実には、そこまで手が回らない人が多い。

角谷:実際に足を運んでも、今度はそこで感染してしまうリスクもありますね。

山川:自治体や金融機関の相談窓口がどこも混んでいて、新たなクラスターにならないかと心配されています。かといって、電話で問い合わせをしようとしても、つながらないという話をよく聞きます。

松永氏:日本政策金融公庫は予約しても、実際のアポイントメントは1~2週間後になるようです。公庫の担当者がサボっているわけではありません。私が知る限り、朝から晩まで働きづめです。それでも間に合っていません。

 経営者にとっては、運転資金が枯渇しているのに、時間だけが過ぎていく。支援制度はそれなりにそろっているのですが、いずれもスピード感に欠けていると言わざるを得ません。

角谷:次に伺いたいのは、まさにそのスピードです。「なぜ、すぐもらえないの?」

 どの支援策を見ても、おカネが支給されるのは早くても5月以降というものばかりです。なぜ、すぐに届かないのでしょう?

●見習うべき諸外国の支援の速さ

山川:上に示したのは、海外と日本との資金支援のスピードの違いです(関連表「各国の中小企業の支援のスピード」参照)。今回の経済対策で比較的早く打ち出されたのが、公庫や自治体の無利子融資ですが、日本経済新聞の調べでは、4月10日時点で、申し込んだ人のうち、承諾されたのは6割程度。まだ入金されていないケースが多いようです。

 これに対して、ドイツは従業員5人以下の企業や個人事業主に最大で約106万円を支給することを決めたのですが、オンラインで申請すれば、早ければ翌日には承認されます。実際、ドイツ在住の日本人の個人事業主は、申請してから2日後には口座に振り込まれていて、驚いたそうです。

 スイスは、上限5600万円まで政府が保証して無利子・無担保で融資を受けることができます。こちらも早ければ当日に振り込まれるそうです。なぜ、これほどのスピードの差が生まれるのでしょう。

松永氏:1つは、日本ではIT(情報技術)の活用が進んでいないことが大きいと思います。日本の中小企業の場合、オンライン申請といっても、その仕組みを整えているところが少ない。

 今回の問題で、感染拡大の防止のために在宅勤務が奨励されていますが、東京商工リサーチのアンケート調査では、テレワークを実施している中小企業は全体の2割程度にすぎません。実行するだけの環境が整っていないのです。

 もう1つは、手続きを重視する文化が影響しています。日本の場合、きちんと審査しなければ、モラルハザード(倫理の欠如)につながるという考えが強い。

山川:不正が起きてしまうことを心配しているわけですね。

松永氏:実際、苦い経験があります。

 大災害や金融危機が起きたときは、過去にも政府が特別な保証を付けた融資を実施しています。ただ、そのたびに、不正受給や詐欺行為が横行するのが現実なのです。一部の資金は反社会勢力に流れてしまったという指摘もあります。そのため、どうしても審査や手続きを緩めるわけにはいかないという意識が働いてしまうのです。

山川:とはいえ、現在は戦後最大の危機と言っても過言ではありません。手続きを重視するあまり、多くの企業を見殺しにしてしまっては、元も子もありません。過去の経験則に縛られない措置が求められているように思うのですが。

松永氏:私もそう思います。とにかく目の前の資金繰りに窮しているわけですから、資金を供給することを優先し、事後的に不正行為がないかどうかをチェックするという割り切りも必要ではないでしょうか。

角谷:次に伺いたいのはこちらです。「倒産が心配な業種は?」

 多くの企業が苦しんでいると思いますが、率直に言って倒産が心配されている業種はどこでしょうか。3月の倒産件数は740件。産業別の内訳を見ると、サービス業が30%を占めており、次が建設業の19%となっています。

 また、コロナ問題が原因となった倒産件数は、2月~4月10日までで51件。インバウンド需要が急減した宿泊業や飲食業が目立ちます。小売りやアパレルなどにも拡大しているようです。

松永氏:そもそも日本の中小企業はコロナ問題が発生する前から、疲弊気味でした。自然災害や消費税の増税、暖冬などの影響があって、収益が低迷している企業が多かったのです。

 とりわけ小売りや飲食、サービスなど、日銭商売をしている企業の中に、資金繰りが悪化しているところが存在しました。そこにコロナ問題が追い打ちをかけたのです。しかもこうした業種は、現在、休業要請を受けているところが多い。資金繰りはさらに逼迫しています。

 建設業も厳しい。建設ラッシュは一服感があるのですが、地方に目を転じると、国土強靱(きょうじん)化計画もあって、公共事業の需要は底堅い。ただ、人手不足に苦しんでいます。そこにコロナ問題が追い打ちをかけました。部材が調達できずに工事が中断してしまうケースが相次いでいます。この先は現場で感染者が出て中断してしまうケースも出てくるでしょう。(編集部注:4月13日に清水建設が現場従業員の感染・死亡、作業所の閉鎖を発表)

角谷:部材は海外からの調達が難しくなっているわけですか。

松永氏:そうです。サプライチェーンが途絶えて、在庫が枯渇しています。この先は、工期が遅れ、施主と違約金などを巡ってトラブルが起きる恐れもあります。

山川:倒産件数は2019年9月から前年同月比で見ると、増加傾向にありました。ただ、現状では多くの企業は手元資金を取り崩して、何とか踏ん張っているようにも見えます。やはり心配なのはこの先ですね。


現状第三次世界大戦なので保証があるの最初だけです。

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