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足が速いとか遅いとか。
自分が小学6年生の時の100m走のタイムは21秒でした。
※
幼い頃から絵を描いたり、漫画を見たり、ゲームしたりとインドアで遊ぶことが好きだった自分は、運動が苦手です。
今でこそバスケットボールが大好きで、体調管理で筋トレしたり、気が向けばランニングだってするようになりましたが、
足の速さが男女問わずその子のスペックの高さとまで評価される子供界、画用紙に冒険の地図を書いて幼稚園を探検したり、自由帳にオリジナルのキャラクターやモンスターを描いてゲーム化を夢見るような自分は、
「かけっこ」が大嫌いでした。
あの、足が速いか遅いかっていう謎の概念。
当時、走らされてる身としてはなんで足の速さで競争しなきゃいけないのか本当にしんどくて。
不思議ですよね、きっと、「時間」っていう超えられないものがあって、人って「はやい」ものだったり、逆に「時間をかけた」ものに魅力を感じたり追求するようになったんだなと、今では思います。
そんな運動音痴の自分は小学生の時母に、皆んなに「がんばれ」って言われるのが嫌だと相談したことがあります。母は相談を受けて学校まで行き「がんばれ」の言い方について打診までしてくれていました。
特にマラソンで足の速い子はあっという間にゴールしていて、足の遅い子のゴール待ちみたいな空気になります。もれなく自分も待たせてる側です。
遅い子組がゴールに向かう、あの時かけられる「がんばれ」。先生から友人から皆んなが「がんばれ」と声をかけます。
でも自分はメロスじゃないし。ゴールの先にセリヌンティウスがいるわけでも、日没が迫ってるわけでもありません。目的があったり情熱があって走ってるわけじゃないんです。
やりたくもないマラソンをさせられ、地獄のような思いで、顔を真っ赤にして、呼吸もできず、ヒューヒュー喉が鳴りながら、脇腹を押さえ、もつれる足をどうにか前に進めてゴールに向かいます。がんばってます。
これ以上「がんばれ」とか、ぶっ倒れそうですけど何のために?その先に何があるの?と思いながら走っていたことを未だに覚えていて。
待ってる側も何て言っていいかわからず「がんばれ」って言っていた部分もあったとも思うんだけど、
でも勝ち負けのない単独競技でタイムの縛りもなく、ただただ皆同じ距離を走れという強制労働の如きルールで「がんば」りようもなかったです。
※
そんな自分が小学6年生の時の100m走のタイムは21秒でした。
遅いです。女の子よりも遅くて、虚しくなってました。
正確な数字で自分の足の遅さを表現される劣等感と気恥ずかしさ。ちょっとしたトラウマです。
それが中学校2年生の時14秒になります。
急に。
7秒縮まる。
がんばらずに。
自分からしたら激はやです。風を感じました。疾走感ってこのことかって思いました。
帰り道に誰もいないところで、通学カバン置き去りにして全力で走ったりしてました。
気分が良くて。
自転車に補助輪なしで乗れたときのような達成感と爽快感です。
嬉しかった。
一体何があったか。
身長が止まったんです。
小学生の時は脚が伸びてるのが分かるほど成長痛があったり、平らな道で足を引っ掛けてよく転んだり、毎年靴がきつくなったり服のサイズが合わなくなって、買い替えてもらったりしていました。
うまく走れなかったのは、毎日変わる自分の体型に適応できず、体の動かし方が分かっていなかったんです。
そんなことがあるのか。
でも今は速く走れる!良かった!!嬉しい!!!
。。。
んっ?
あれ?
身長まだ伸びてるけど。
。。。
えっ、成長が止まったからうまく走れるようになったんじゃないの?
確かに止まってました。
脚の。
脚の成長。
小学6年生の時168cmだった自分は、中学3年生の時177cmになります。
この3年間で身長が9cm伸び、
座高が8cm伸びました。
脚1cm。
待て待て待て。バランス悪い。
胴長いって。
速いの嬉しいけど、ずっと走ってるわけじゃないから。
生きてる間、歩く時間、止まってる時間の方が多いから。
もうちょっと伸びて。脚。
ごめん、足の遅さ呪い過ぎた。
願いを叶えてくれたんだね、
でもね、走るの遅くなっていいから。
中学生にもなって、思春期真っ只中で、足の速さより、
絶賛外見気にしてる時だから。
ワックスとかアンクルソックス使ってたらお洒落みたいな時だから。
ずっと気にしてたよ、足の速さ。
でも今は大丈夫だから。脚。もうちょい伸びよ。
。。。
自分は父に容姿が似ています。
父は180cmあります。
自分も180cmまで背が伸びることを期待して、残り3cm、
全て脚にいけ!!!!と願い続けました。
。。。
自分は父に容姿が似ています。
父は中学3年生で身長が止まったそうです。
自分も中学3年生で止まりました。
座高8cmを手に入れたまま。
残り3cmは叶いませんでした。
※
こうして自分は、
「足が遅い」というコンプレックスから脱した代わりに、
「足が短い」というコンプレックスを手に入れました。
そして新たなコンプレックスに立ち向かうべく、
服でごまかそう!!
と、ファッションに興味を持つようになりました。
めでたし。
※
ちなみに父は残りの3cmが脚に行っています。
羨ましい!