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学生時代にドッグイヤーした英詩、なぜか吸血鬼。
学生時代に読んだ本のドッグイヤーを見てみたら、やけにエモかった。
という記事を書いたのですが、個人的になかなか面白かったので、またやります。前回の記事はこちらです。
前回は短歌でしたが、今回は英詩にします。
前も書きましたが、学生時代、英語を(真面目に)勉強すべくアメリカ詩のゼミを選んだものの、詩の世界をまったく知らず、さまざまなアンソロジーに目を通して、詩の知識を深めることにしました。
で、勉強(あるいは娯楽)に使った英詩のアンソロジーのうちのひとつは、これ。
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松浦暢編訳の『英詩を愉しむ: 光と風と夢』(平凡社ライブラリー)。
公式サイトから、この本の概要を引用します。
19世紀末から20世紀までのやさしい英語の抒情詩に、ラファエル前派を中心とした美しいイラストを添えたアンソロジー。世紀末のロマンスを楽しみながら英詩に親しむ入門書。
絵も添えてあるアンソロジー。ドッグイヤーは、こんな感じでありましたね。
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前の短歌のときよりも、断然すくないな。。
なので、ドッグイヤー英詩、ひとつだけ紹介してみます。
【シャトラール(チャールズ・スウィンバーン)】
ああ 疲れはてた おれの目に
あの女の顔が うかんでくる。
息づまるような髪の においをさせ
恋のひとみの炎を ゆらめかせ
甘く邪悪なことばのみちた 酒よりも
なお ほてる唇を、この唇に近よせる。
男のすべてを狂わせる すんなりした
腕と、白く輝く胸と喉がうかんでくる。
この恋は 燃えつきて灰となることはない。
心臓の燃えつきた証しの わたしの遺灰に
いつまでも 熱と焔を のこすことだろう。
たとえキリストでも、このヴィーナスは
手に負えぬが、男の血で唇を赤く染める。
小さい歯から 動脈の汁を吸いあげ
愛らしい、小さい唇を 血でぬらす。
ああ 毒ある真珠の歯の 冷酷な美女よ。
(第5幕 第2場)
※原文の英語は載せません。すみません。
この作品は、シャトラール(というこの詩劇の主人公)が牢獄のなかで、メアリー女王について独白した内容の詩。
まぁなんだか、エロティックですね。チャールズ・スウィンバーン(1837年-1909年)はイギリスの詩人で、過激な作風で知られているようです。
で、『シャトラール』は詩劇なので、すべてを読まないとなんとも言えないですが、この詩だけ読むと、メアリー女王はなんかやばい人です笑。(まぁ比喩だろうけどさ)
「小さい歯から 動脈の汁を吸いあげ/愛らしい、小さい唇を 血でぬらす。」って、吸血鬼。
ってことで、次のページには、吸血鬼のような挿絵があります。
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ギュスターヴ・アドルフ・モッサ(1883年-1971年)というフランスの画家の『飽食のセイレーン』という作品のようですね。
ものすごく迫力ある絵です。顔は女性、体は鳥。怖いが、優雅でもある。
この絵、ネットでは、タレントのベッキーさんに似ているという指摘があるな笑。
という話はともかく、学生時分、このページにドッグイヤーしたの、詩が気に入ったのではなく、この絵に心奪われたのかも。
本めくってて急にこの絵でてきたら、印象に残ると思う。
口元に血のついた鳥女。
コウモリの繁殖時期は、夏。
(了)