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2023年度 勝ち点期待値から算出したJ2リーグの順位表

今まで、ゴール期待値のことについて解説してきました。
中には、今回のこの結果だけ知りたいという方もいたかもしれません。

結果だけを見て理解できることもありますが、今までの解説を知った上で見てみることで、捉え方の幅は広がるのではないかと思います。
とはいえ、大変お待たせしました。


では、今回の「2023年度 勝ち点期待値から算出したJ2リーグの順位表」が何かをまず説明します。


2023年度に行われたJ2リーグ全チームの全試合のゴール期待値を元に、勝ち点の期待値を算出して順位付けするということを行いました。
要するに、ゴール期待値から各試合の勝点の期待値を計算して、それらを足して順位表にしたということです。


まだわかりにくいかもしれないなので、、、もっと簡単に。
ゴール期待値を元にして、その試合で取れるであろう勝ち点を計算し、42試合分の勝点を合計して順位表にしたということです。
あまり変わっていない・・・


ということで、一例として、第1節の町田ゼルビアvsベガルタ仙台の例を取り上げて説明します。

第1節 町田ゼルビアvsベガルタ仙台


実際の試合結果は0対0でした。
しかしゴール期待値では町田ゼルビアの方が高かったことがわかります。
町田ゼルビアは、合計15本のシュートを放ち、そこから、1.3点ぐらいに値しただろうと。
対するベガルタ仙台は、合計13本のシュートを放ち、ゴール期待値が0.743でした。
そして、このシュート数とゴール期待値を元に両チームの勝ち点期待値を算出してみます。
結果として、町田ゼルビアの勝ち点期待値が1.796点、ベガルタ仙台が0.913点ということがわかりました。
(この勝点期待値については、下記に算出方法も含めて記載していますので、読み進めてください)



そして、この勝ち点期待値をリーグ戦全42試合分足し合わせて最終順位にするということです。
これをすることで、各試合でどれだけの勝点が期待でき、さらに、それを足し合わせることで最終的に勝ち点期待値での順位がわかります。


では、ここで一旦勝ち点期待値についての説明をします。

この勝ち点期待値の算出方法は、プログラミング言語の一つであるpythonを使います。
このpythonで、試合後に算出された2チームのシュート数とゴール期待値が100万回対戦した場合の勝点を計算するシミレーションを行い、その結果として勝ち点期待値を算出しています。

上記の例を用いると…
シュート数:15本vs13本
ゴール期待値:1.295vs0.743
この両チームが100万回対戦した場合の勝ち点期待値を算出するということです。
その結果が、上記の表の通り
勝ち点期待値:1.796vs0.913 となりました。


勝ち点1.796って現実ではありえないじゃんと思いますよね。。
実際1試合でチームが獲得できる勝ち点は3か1か0ですが、この勝ち点期待値というのは、ゴール期待値と同様に、期待値として割り出しているので、0から3の間の数値になります。(ゴール期待値は0-1の間の数値でしたね。)
また、両チームの勝ち点期待値の合計をしても3にならないのは、引き分けの可能性もあるからです。




長々と記載しましたが、ここで算出までの手順を一旦整理します。

【手順】
1.2023年J2リーグの全試合のシュート数とゴール期待値、被ゴール期待値を集計(Football Labより)
2.各試合のゴール期待値から勝ち点期待値を算出 (python使用)
3.各チームの勝ち点期待値の合計を積算
4.順位表を作成

【使ったもの】
・Football Labのデータ(データ集計)
・python(勝ち点期待値の算出)
 -100万回対戦した場合の勝ち点を計算


こうやってみると、やっていることはシンプルに見えます。
ただ、データの入力がかなり面倒でした。


そして、この結果から出たものにも注意点があります。
特に、精度の部分です。また、統計学的な検定を行っていないため、そちらも注意が必要です。

統計学的には、平均との差を検定して、5%未満の確率でしか起こらないことが起こったから、意味があるのではないかというようなところまでを行うべきだとは思いますが、、
いかんせん、僕自身が勉強中でして、そこは、今回は割愛させていただくことにしました。(特に、標準偏差を算出し、それが、なかなか面白い部分でもあったのですが…)
今までも、統計学の解説も少し絡めながら書いてきたものの、なかなか難しいので、それはいずれできれば。。
というより、統計学を絡めたゴール期待値の本を出せたらぐらいです。。。


【精度が落ちている原因】
・シュートごとのxGを使用していない
(xG:1.0、シュート数2本の場合)
①.xG:1.0 = 0.7+0.3
②.xG1.0 = 0.5+0.5
第二回で解説したように、この2つを比較すると①の方が勝つ確率が僅かに高くなります。
しかし、今回使用したFootball Labのデータは、試合の合計xGのため、同じxGだった場合に差が出ません。
(ちなみに、同じxGだった試合はありませんでした。)

・手入力のため、ミスがある可能性がある
・xG自体の精度が変化している可能性がある など…

こんな感じで、精度が落ちるであろう要因があります。

さて、どうやって算出したのか、またその注意点もわかったところで、ようやくですが、結果を見ていきましょう。



こちらが、実際の順位と勝ち点期待値を表したグラフになります。

2023年 J2リーグ実際勝点と勝点期待値の比較

青棒:実際の勝点
オレンジ線:勝点期待値
縦軸:勝点
横軸:チーム名


さて、ご覧になってどうでしょうか。


それでは、順位表として見ていきましょう。


まずは、実際の勝点と勝ち点期待値、その差をまとめた表からどうぞ。

①勝ち点期待値がトップだったチーム : 清水エスパルス
清水エスパルスは勝ち点期待値が最も高かったにも関わらず、実際には4位となってしまい、不運な結果になったことが読み取れる。昇格を逃したということを考えると、数字を見ても大変残念な結果と言えそう

②勝ち点期待値がワーストだったチーム : ザスパクサツ群馬
ザスパクサツ群馬は勝ち点期待値が最も低かったのにも関わらず、11位でシーズンを終えた。期待値よりもとても多くの勝ち点を積み重ねたチームということで、強運も重なったシーズンだったのだろう


③実際勝点が勝ち点期待値を最も上回ったチーム : 町田ゼルビア
町田ゼルビアは、勝ち点期待値を最も上回ったチームであり、勝ち点期待値だけでいうと4位ということから、群馬同様に強運も重なったシーズンで優勝したということが言えそう


④実際勝点が勝ち点期待値を最も下回ったチーム : ツエーゲン金沢
ツエーゲン金沢は、勝ち点期待値を最も下回ったチームということで、最も不運に見舞われたチームと言えそう。期待値通りの勝ち点だった場合、17位でシーズンを終えていたことになる


次に、実際の順位と勝ち点期待値から作った順位とその差をまとめた表を見てみます。

⑤実際順位が勝ち点期待値順位を最も上回ったチーム : ザスパクサツ群馬
勝ち点期待値では22位だったのにも関わらず、実際には11位という結果だった。勝ち点期待値が最も低かったチームとして上述したが、実際の順位では期待値を大きく上回る結果になった


⑥実際順位が勝ち点期待値順位を最も下回ったチーム : ベガルタ仙台、大宮アルディージャ
実際の順位との差が大きく、運がなく損をしたと言ってもいいかもしれない2チームとなる。
特に、大宮アルディージャは勝ち点期待値が-14.74とツエーゲン金沢に次ぐ数字となっており、2番目に不運に見舞われてとも言えそう


少しわかりにくいもかもしれませんが、ざっくりと数字として突出しているチームについてのことを書いてみました。

そして、ここからは完全な主観的感想ですが、これらを元に、今シーズンを見てみると、心なしか、今のところ勝点期待値の順位に近いチームが見られるような気もします。
監督交代や選手の入れ替えを行なったチームは勝ち点期待値から離れていることもありそうな・・・
という雰囲気で書いてみた文章になりますが、、
これらをまた、しっかり分析するとこの主観的な感覚を取り除けるはずですね。。



ということで、複数回に分けてゴール期待値の解説を行ってきました。
そして、最終的には、勝ち点期待値を算出し、順位づけするというところまで無事終えることができたのですが、いかがでしたでしょうか?



できる限りわかりやすく伝えられればと思い、かなり時間がかかってしまったものの、無事終えることができてホッとしているところではあります。
また、わかりづらかったことや疑問などがあれば、気軽に質問を頂ければと思います。
(まだまだ勉強中なので、わからないこと、間違っていることがあるかもしれませんが、その都度アップデートしていくつもりです。)


これからは、さらに数字やデータという測れるものを基準に、色々な評価や決断をしていくことが増えるのではないかと思います。それはサッカーに限らず、日常のありとあらゆる多くの場面で…
使う人によって、結果が変わってくるものでもありますが、人間の思い込みを取り除く一つの有意義な手段でもあると思います。
感情で楽しむのもよし。
でも、こういった知識を活かして楽しむことで、楽しむという行為の幅をさらに広げられるのではないかなと思います。


それではまた。


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