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打者が育つのに必要なのは打席数

『良い打者はどう育つのか』がここ数年のテーマの一つでして。

ヒントを探すために色々なリーグで働いてみて、様々な育成環境で育った選手を指導して、見えてきたことなどを中心に書いていこうと思う。


今回着目するのは『打席数』


ピッチングとバッティングの向上の過程(試合で結果を出す過程)
って結構違うと思っていて、

自分主導
再現性が重要
一人で練習できるピッチャーに対して、

ピッチャーが投げてきたボールを打つ(リアクション)
→”タイミング”というヤツが登場し、それの重要度がめちゃくちゃ高い
同じ打ち方なんてほぼできない
良くてもアウトになり、悪くてもヒットになる
失敗の数が圧倒的にピッチャーより多い

がバッター。


だから、打ち方を極める時間も大事だけど、1打席1打席との向き合い方や
失敗の中でどう次の打席を迎えるか、などのトレーニングがピッチャーよりも重要なのでは?
というのが仮説。


30打席でインパクトを残すような打撃をする技術と、
400打席で3割を打つ打撃をする技術はアプローチが違う、みたいな話かな。


160


◇高校野球の公式戦の打席数 
56打席×3大会=168
(4打席×14試合=56打席を1.5か月で)
 ※地方予選最大8試合+全国大会最大6試合=14試合

◇大学野球の公式戦の打席数 
80打席×2リーグ=160
(4打席×20試合=80打席を2か月で)
 ※リーグ戦3試合×5カード+全国大会5試合=20試合

本当のMAX打席数。
かなり多く見積もってこんな感じ。
だから全部一回戦負けなら12打席、、、
ってことも起こる。
この格差も問題の一つではある。

そしてプロ↓

◇NPB 144試合 450打席以上

◇MLB 162試合 500打席以上

(各リーグ規定打席参照)


これだけ打席数の違いがある。

一応高校生もOP戦を含めれば年間約100試合、350打席以上立っている高校生もいる。
現に僕もそのくらい立たせるようにしていた。

しかし、公式戦であること
(緊張感、Statusが残る)が大事。
全然違う。


プロと学生のフィジカルの違いを差し引いても、あまりにも少なすぎるのでは、という問題提起。


基準は80打席?


『NPBに移籍してきた外国人選手も80~100打席は我慢しろ』といこともよく言いますしね。

高校生も80打席立たせれば大体傾向とか調子のパターンが1周するのかなあと。だから公式戦に入る前にOP戦で80打席とはよく言ったもの。


”本当の実力がわかる”というか。


逆をいえば50打席くらいまでは、調子が良ければノリでいけちゃう。
こともある、というか。


崩れる選手は100打席で完全に崩れてくる。


『ああこれか。』と思ったね。

スゴイ良い!といわれた高卒選手が3年2軍でフルで出たけど.250

とか

2軍で良くて1軍上がったけど、1,5か月くらいで.200切って2軍に落ちる

とか

これってどういう現象なんだろうな、って今までずっとイマイチ腑に落ちていなかったけど、なんとなく一部を理解した。


問題点は

ノリと流れで結果を出せちゃうアマチュア。
調子もくそもない。
公式戦にピーキングを合わせられれば、落ちる前に公式戦が終わる。


”打席数を重ねる技術”みたいなのを磨く場所がないの。


高校野球で”調子の落とし方”みたいなのが話題にならないもんね。


最近NPBスカウトの方から聞くのが、
独立リーグの打者のドラフト指名に関して。

『最近野手の指名増えましたよね~。投手は前から指名されていましたけど~』的な会話の中で”全部とは言わないけど”と前置きしたうえで、こう教えてくれた。

『打席数が多いから(シーズン約200~300打席)本当の実力がわかって評価しやすいし、プロと同じスケジュールで動いているから、入ってからも同じ流れで生活できるので適応に苦労する心配がない』

と。


なるほど。

平日練習して土日ゲームの大学生や、短期間でトーナメントの高校生は
スカウトが観ている公式戦の姿が”一時的なもの”である可能性もある。

だが、さすがに300打席立てば、良いときも悪いときもひっくるめてということになるのか。


どう調子を落とす?

”プロでも3割打つにはスランプを短くすること”みたいなことを言いますよね。

ではスランプになる原因は?

技術的には、変化球、外、そして”インハイ”と”緩いボール”ですね。

あとは飛ばしたい、強く打ちたい!
でいわゆる“開く”

変化球で攻められ、緩いボールで前に出され、インハイで煽られ(死球をくらい)、変化球に泳ぎ、まっすぐに詰まる、となってくるのが鉄板のパターン。


打つ選手にはストレートのストライクなんてほとんど来ないよね、ってのがよくあるパターン。


問題はそこで”我慢して四球を選べるか”と
”数少ない失投を一発で仕留められるか”
でしょう。


『上にいく選手』と『良いもの持ってるのにな』で終わる選手の違い

警戒されてからが本当の実力

僕のチームにもマイナーから落ちてきた選手が何人もいました。
打撃練習や前半戦だけ観ていると『なんでこれで落ちるんだろう?』って選手ばかりなんだよね。

でも打席数が80〜100打席を超えたあたりから、『ああ、なるほど』となるわけです。


変化球とインハイで攻められ、大人しく四球を選べば良いものを、ムキになってボール球を無理やり打ちにいく。

緩いボールを前につんのめって引っ張りのファール打った後の打席とか、形を崩して打席を終えているのに、そのまま次の打席も入るから甘いボールをミスショットする。


『へえ~、四球でもその後の3打席崩せるんだあ』(勝手に崩れたでもあるが)

という気づきだった。
トーナメントでは中々気付かなかった。


『ストライクは変化球しか来ないから変化球狙えば?』
とアドバイスしてもストレートを待ち続ける。

4番だとそうやって攻められるから1番とか2番を打たせたりしましたが、一番は本人がそこを考えないと次には進めないんだろうなと思い、終盤はそのような会話をずっとしていました。

毎日試合がある中での調整方法

土日試合して、一週間練習してまた土日試合とは違って、また明日試合がある。


これに慣れるのも、経験しないと中々難しいなと感じた。
学生野球にはないからね。

一週間あれば直せるのよ。結構普通に。

でも毎日だと、本人がしっかり出来ないと無理。

・BPの打ち方
・打席の振り返り(技術、メンタル両方)
・翌日どう打つか

とかかな。

そんでだいたい結果を出せる選手は

・フォームの引き出しを何パターンか持っている
・振り返りが上手
・感情で練習しない
・シンプルに本質も付いて考えることができる
・感情の振れ幅が少ない

などの共通点があった。

特に変える決断をすることになれているからか、良い意味で形がない。

“戻そう”みたいな発想がないのかもね。
『今日からちょっと打ち方変えるわ〜』って言ってきたときの、チョイスのセンスが良い。


これも、自分で試行錯誤して作り上げることに慣れているから、良いチョイスができるんだと思う。


でも良いもの持っているけど、中々結果が続かないなぁって選手はこの辺の能力が乏しい。
主に思考能力の面で。


まとめ

『練習でうまくなる』感覚が強いのが日本だが、
打者に関してはもっと『試合でうまくなる』方向に比重を置いて良いと感じるのが今の解。

どんどん試合がある中での打席のこなし方。思考能力。
毎日のBPの打ち方、トレーニング内容。
悪いときにどう直すか。
どういう打撃をしたらその後、悪くなっていくのか
など


この辺の練習を積む機会を増やしていくことが日本の打者育成に足りない部分の一つだと感じた。


アメリカに比べて、言うように日本人投手のレベルや育成現場の指導内容はかなり高い位置にある。これは日本で聞いていたのと変わりはない肌感。
高水準にある。

でも打者のレベル。
技術、育成システム、トレーニング内容、すべて劣っている。
これは日本にいたときに想像していたそれよりも差が大きいと思っている。


アメリカ、中南米に比べたら日本の打者育成はかなり遅れている。


その原因に打席数の問題も大きく影響しているよ、というのが今回の議題でした。




いつも読んでいただきありがとうございます。
マニアックな読者様より、たびたび『投稿楽しみにしています。』と嬉しいお言葉をいただきます。

基本週2、最低週1のペースで投稿していきますので、お楽しみに。



Hiroki Iijima



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