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日間賀島への旅行
遠い遠い、海の先、小さな島が見えた時に「あの島に行ってみたい」と思うのは人間の悪い部分だろうか?それとも、自分だけだろうか?
一人、車を使ってフェリー乗り場まで車を走らせる。隣に誰かいないのか?それとも連れてこないのか?自分は、一人で旅行することが好きだ。他人と群れることが嫌いというわけではない。だが、自分の心が安らぐのは一人で行動してる時だ。他人といると余計なことに気を遣ったり何かあった時に小言を言われる。そうなった時に返ってどっと疲れてしまうから一人の旅が一番好きだ。といっても自宅から近いため旅行というよりかはドライブに近いかもしれない。
フェリー乗り場について扉を開ける。そこにはフェリー乗り場にしては殺風景で薄暗く、まるで今でも潰れてしまいそうなボロボロな売店があったりローカル番組がテレビから流れ、お爺さんが椅子に座って眠っていた。このお店が今でも続いてる理由はきっとフェリーがあるからなのだろう。ここのフェリーは日間賀島、篠島を繋ぐ船いわゆるローカルバスと同じ役割を果たしている。なので、ここがなくなれば日間賀島や篠島に住んでる人たちの移動手段がなくなってしまうため、フェリー乗り場が無くなることはないだろう。自分は切符を購入してもう直ぐ日が沈む水平線を眺めながらこの先のことに胸を弾ませていた。この先にはどのような出会いがあり、面白いことがあるのだろうか?そう考えながら自分は船に乗る。「足元に気をつけてください」と年が多そうな係員の人が舟留め場で優しく声をかける。自分たちの足は硬い地面から不安定な地面に足を運ぶその一歩を踏み込むことは恐怖よりかもこれからに対する希望が足を進ませる。そしてその足は船の中へと取り込まれる。
船が音を鳴らして進み始めた時自分は外を見つめていた。カッコつけたかったり、何か感じたものがあったのだろう。その時の自分は何も心の中で感じることはなかった。水飛沫が弾け飛び沈んでいく日とは裏腹にまるで爆発から逃げるかのように進んでいく。さながらゲームとかであるような脱出シーンのシュチュエーションのようだ。馬鹿馬鹿しい話だが、自分はそのように感じた。今向かっているのはまるで全てから逃げた先の安息地、そして自分達は逃げ切って夕陽を背後にエンディングを迎えてるようなそんな感覚だ。自分は、今見えた夕日を水飛沫で見ずらい窓ガラス越しで写した。
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まるでこの飛沫が今まであったことの大変さを語り、夕日はそんな自分たちへのカーテンコールかのように映し出された。この夕日は自分の中でも忘れることはないであろう。
船が走る中、岸が見えてきた。岸が見えてきたということはそろそろ終わりの合図なのだろう。着く前に準備をしていたら老婆二人が荷物を抱えていた。
「明日はどこにかいに行こうか?」
「お店がないから助かるわ。」
日間賀島では先ほど書いたように船で移動を行う。では、どうして船で移動を行うのか?理由はなんなのか?その答えは簡単だ、島にお店がないのだ。小さな島の中にあるものはせめて農協の銀行一つだけだ。なぜ無いのだろうかと思考を張り巡らせだが、答えは出なかった。恐らくあまり深く無い理由があるのであろうが、それを割り切ってしまったらロマンは無くなってしまう。だからこそ、答えを出さないことが一番良いのだろう。自分はアナウンスが入る船内の中から足を運び日間賀島の地を踏む。
波の音がする。小さくてさながらエロゲに出てきそうなのどかな風景が目の前に広がる。そんな風景に魅入られながらもホテルへと進む。進む時も入り組んだ道に家々が並ぶ。日が沈んでいく中自分は本当に日間賀島に来たのだろうか?まるで異世界に来たのではないかと錯覚する。さながら、フリーホラーゲームだ。この先角を曲がれば怪物が出てくるのではないか?異形のものが襲ってくるのでは無いか?人一人いない道を進んでいたのでそう思うのも無理はないのかもしれない。恐怖を覚えそうな時でもワクワクと高揚感を覚えていた。この時自分はどうしようもなく普通の人と違い頭の何かが飛んでるのだろう。だが、そんなことを気にする事はなくホテルへ夕方ぐらいに赴くことが出来た。
扉を開けるとしーんと静まりかえるロビーに自動ドアを開けた機械音が少しだけ篭った。予約の時間ぴったりに向かったが誰もいない。マップで調べてみても自分の調べた場所だ。このまま本当に異世界に来たのでは無いか?そのような不安が脳裏に過った。ここに来るまで人を見ていない。しかも、夕方で空がオレンジ色で不気味に光っていた。さながら某ジャパニーズホラーゲームの異世界のようだ。少し唾を飲み干し周りを見渡す。木の椅子出てきたチェアー、机、広い団欒所のスペース、アイスストック、遠い所にはまるでペンションでは無いかと思う配置だった。ペンションであるなら近くにベルは無いだろうか?ペンションにはベルがあるというのはよく聞く話だ。少し視点を近くに向けてみたら・・・・あった。しかも、目の前に。
「灯台下暗しかよ。」
思わず自分自身に苦笑いをしてしまった。昔から一つのことを見つめると周りが見えなくなってしまうことがある。車を乗る前は全然見えてない時があった。それ故にかつては事故を起こして病院送りになったこともある。その時の話をここですれば長くなるので、おいおいして行こう。と、本題からずれてしまったが、自分は目の前にあるベルを鳴らした。「チーン」と静かな空間の中に一つの音が優しく鳴り響く。その音が跳ね返ってくるかのように中から単発の少し頼りなさそうな老父が現れる。
「いらっしゃいませ。」
「ご予約のひろです。」
これを言うと老父は徐に紙の予約リストを開き出す。自分はその光景を少し目を開いて小さく頷く。今の時代なら予約用のアプリもあるはずだ。しかし、アナログな紙での調べを行うとは、それを通とでも言うべきか、レトロというべきか、ノスタルジックな気持ちに何故か陥ってしまった自分がいた。
「ご予約のひろ様ですね。お待ちしておりました。こちらをお持ちください。」
予約の自分を見つけた老父はどこかやり遂げたような笑顔でこちらにタオルを渡してきた。それはそうだろうこのやり取りに至るまでに5分ぐらいは掛かっていた。この島の人たちは時間に関してどこかルーズな所があるのだろうか?それとも、あまり人が止まらないから接客に慣れてないのだろうか?だが、この人の笑顔を見てると自然とこちらも嬉しい気持ちになる。人の笑顔というのはそれほど力があるのだろう。説明を聞きながらも自分はそのようなことも考えていた。
エレベーターが起動して上に進む腕を組んで壁にもたれて壁を見る。壁にはサウナの張り紙が貼ってあった。サウナとはいいものだ暑くて身体が熱くなるだけではなく、その後に達成感も現れる。自分もサウナは利用している。人間メンタルリセットを行う為には汗をかく事は大切だ。自分も仕事で疲れた翌日は必ずサウナに入る。暑さにもよるが1回目が5〜6、2回目が10〜12だ。3回目は途中で整うか、整わないかで決めるが、12分を超える。さて、そうこうサウナの雑学を脳内で張り巡らせ終えた頃、自分の部屋の階に到着する。
エレベーターを出てみたら、なんて事はないただの旅館だ。よくある殺風景でくらく湿ってそうな雰囲気の廊下を進み、自分の部屋の鍵までゆっくり進む。到着して鉄の扉のドアノブを捻りゆっくりと中を見る。そこは椅子が二つある個性がないよく写真で見るような普通な和室だった。
「普通の和室ホテルか。」
そう口を開けて外に目をやると夕陽が薄暗く不気味に沈んでいく。だが、その不気味さはとても綺麗で美しく、その日に魅入られてしまうような一種の名画に対する感情を抱いて携帯のカメラを押してしまった。
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「ちょっと、木が邪魔かな?」
自分は一人で籠った声を口にした。だが、この写真は今でも何か美しくも恐ろしい何か魅入られるものがあると思う。バラは美しさの裏に棘がある。棘がある花は怖いと思ってしまうところはあると思う。しかし、あの花はその怖さを押し除けてしまうほどの美しさがあるからこそ人は魅入られるのだと思う。そして、この夕日にも同じものを感じざる得ない。
部屋で少し魅入られながらもお腹が鳴り始めた。やはり、人間は「花より団子」ということわざ通り、美しさよりかも食欲の方が勝るのだろう。自分はお酒が好きな為近くの居酒屋を探す為夜の道を駆ける。
夜の道に期待をして走り出す。どこかに美味しい居酒屋があるかを調べて探す。だが、だが!
「どこ!?このマップマジで使えねぇ!!」
夜道の中少し声を裏返しながら荒げる。というか、なんで見つからないんだ!?普通マップ通りに行けば見つからない!?なんで!?と思ったが少し賢者タイム気味になりながら冷静に考える。1つ、暗い夜道にライトなしで歩いて見つかるだろうか?繁華街とかなら「あっ!光がある!!」となって進みやすいだろう。しかしここは田舎の孤島探そうと思っても○校の怪談並みに不気味な電柱がポツン、ポツンと立ってるのみなんというか、この島をホラーゲームのモチーフにしたら売れるのではないだろうか?と言うか、そう言うのを作ってる人に会えたらぜひお勧めしたい。それほど夜と昼の日間賀島は印象が変わる。どれぐらい変わるかと言われると昼がエロゲであれば夜はホラーゲームへと変換する。「エロゲの皮を被ったホラゲー」と称するべきだろうか。
(これ、そう言う作品にしたら売れるかもな。)
と、フリーゲームを作る知識もない自分がそのようなことを気を紛らわす為に思い付いたが・・・辺り一面閉まってるお店が多すぎて本当に廃村もとい廃島と言ってもおかしくない。だが、そんな中でやっと居酒屋を見つけられた。家々が並ぶ上り坂、人気が一つもなく、どこからか襲ってくるかもしれないような静寂の中、赤提灯が光る居酒屋を見つけた。
「いらっしゃい」
扉を開けると金髪の店主が向かい入れてくれた。自分はポツンと一人席に座って飲むことにした。
そのお店には数名先客がいた。なんと言うか、普通に歩いてる人を見れて心の中はホッと一安心した。自分が異世界に飛ばされて、帰れないホラーゲームの世界に行ったのではないか、パラレルワールドならまだ楽しそうだが、流石にホラーゲームはキツすぎる。と、心の中でボヤきながらも自分は枝豆とビールを注文する。それを運んできたお店の人を見て少し目を見張ったものがあった。十本の指が曲がっていた。それだけではなく、もう一人障害を持っている従業員がいるのだ。自分はその二人に尊敬の念を抱いた。この手の人は施設やどこか他の人よりかもできてなくてもそう言うのを掲げてるカフェや喫茶店でバイトするのが普通だ。居酒屋でアルバイトするなど見たことがない。だが、彼らはそこで働いていた。今日にペンを使って文字を書き、料理を早く作っていた。テレビとかニュースで必要以上に持て囃すことが多いが自分はそうする事が良いことではないと思う。彼らも我々と同じ人間だ。何かできない、できる、有能、無能で図ることは同じ人間として恥じることだ。そう言うのがあって当たり前で、それを社会に上手く組み込まなければいけない。大学生や高校生、最近だと小中学生でも二極化してる思考が多いと感じる、それ故に出来ない人をいじめたり、意識が高いけど出来ない人を馬鹿にしてしまう。そう言うのがのうのうと生きていけるこの社会に自分は嫌気が指すことがある。彼らのような人を持て囃さしてもそれをすごいだけの薄っぺらい感情しか並べる馬鹿しかいないことを見ようとしない。それでいいと思う持て囃す側も知性の低さの底が知れる。自分が目にしてるのはそんな彼らを普通の従業員として見てるアラサーの人達、この島の年寄り、それが必要なのだ、「普通に見る事。」それが今の同年代から下の人には出来ない。恐らく自分は頭のネジが飛んでるとこがあるから見れる景色なのだろう。福祉系で働いてる人でも保育系で働いてる人でもこの考えには大抵至らない「大学生活最高!!」「バイトだるい!!」「パチンコ行こう!」「酒飲もう!!」などと言う自分のことしか考えないだろう。だからこそ、自分も普通にジロジロ見るのではなく黙々と枝豆とビールを飲もう。そして無くなったら日本酒をー
「日本酒下さい」
「日本酒でーす」
ん?すみません、日本酒ってイメージ的に🍶この画像のサイズと思うんですけど2合有りません?目の前に起きた現実を自分は黙ってメニュー表を見て確認するすると(2合)と記入されていた。
(マジかよ。)
自分は少し目の前の現実に思考停止し虚無顔をしながらとっくりにお酒を入れる。
(あ、上手い)
その上手い日本酒に手を勧めながらお刺身を頼み食べる。やはり、お刺身には日本酒が合う。和には和、洋には洋だ。だが、他にもどのようなものが日本酒に合うのだろう?もし、それを知ってる人がいたら教えて貰いたい。
そうこうして、ご飯を平らげ、お酒で満たされて宿に戻り眠ってしまった。翌日朝風呂に入った。温泉があり、外の景色を一景出来た。
「朝風呂も良いもんだ。」
今まで眠かった体全身がお風呂に入った途端目が覚めていく。ロボットが起動していくのは恐らくこのような感覚なのだろう。人生で初めて得られた爽快感だ。これからも機会があれば朝風呂を行おう。
船へ乗る自分が帰るべき車へ向かう為に。
だが、少し時間があった自分は携帯のカメラを取り出し写真を撮る。
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これが、恐らく帰る前撮る最後の写真だ。今回の旅行はまさに表裏一体、朝の姿と夜の姿の違いを楽しむことができた。そして、この島は我々が生きていく上で忘れてしまっている何かを持っているのかもしれない。それは、優しさ、ゆとり、ノストラチック、これはあくまでも個人が感じたことだ。だが、この感じたことは自分の中では大切な経験となった。そして、一つ、自分は願うことにした。
「もし、この記事を読んだ人がどれだけ無能でも、どれだけ障害を持っていた人がバイト先や勤務先、学校でいたとしても差別したり、馬鹿にするようにはしないでほしい」
どんな人も平等に接しなければならない。相手が高圧的にきたのならこちらも刃向かっても良いだろう。しかし、出来ないだけを理由にして他人の努力に目を瞑るそう言う人間になってもらいたくない。願わくばこの願いが10代の人達に届いてもらいたい。彼らはこれからを作る人達だそんな人間がパチンコやタバコ、ましては自分の感情で行動してしまうのは見てて良いものではない。若いうちに羽目を外せと言うが、そう言うのはハメ外しにしては自分の体を壊してしまうし、他人を傷つけるのはそれ以上に救いようのないクズだ。だからこそ、そんな人間になってもらいたくない思いを込め今回の旅は終わらせてもらおう。