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チームコーチングを夫婦で受けると何が変わる?「私」が「私たち」に変わるまで

1人ではなく複数人と対話し、目標達成などの実現を促進するチームコーチング。コーチは1人1人とどのように接し、クライアントはチームコーチングを受けることでどのような変容が生まれるのでしょうか?

コーチとして活動する宮本大輝をまじえて、2024年1月から4月にかけて、ご夫婦でチームコーチングを受けた「まー」さんと「あい」さんに全4回のチームコーチングで受け取った価値を振り返っていただきました。夫婦というチームの軌跡をぜひご覧ください。

「週に一度のKPT」が夫婦の習慣

――まずは、みなさん自己紹介をお願いします。

まー:高校の職員として、日々生徒たちに進路や学校生活に関する面談や授業運営などを行っています。また、個人の方を対象にしたライフコーチングもフリーランスでやっています。

あい:私は東京のIT企業に勤めており、案件に応じてUXデザイナーやプロジェクトマネージャー、ディレクターなどを行っています。今はまーと群馬に住んでおりますので、ほぼフルリモートで働いています。

宮本:宮本大輝です。パーソナルコーチ、チームコーチ、企業研修講師などを行っています。

――ありがとうございます。お二人はご夫婦で毎週KPT(Keep:これからも継続すべきこと/Problem:解決すべき課題/Try:これから取り組むべきことの3要素を確認・検討するフレームワーク)をされていると聞きました。

まー:はい。去年の夏頃からですので、まだ1年は経っていない新しい習慣ですが、夫婦関係をより良いものとするために不可欠の時間となっています。

――毎週続けられるのはすごいと思います。具体的にはどのような感じで行われているのでしょうか。

まー:厳密なKPTというよりは、その時思い浮かんだものを書き起こすジャーナリングの延長線上にある対話がKPTのようになっている…という感じです。

例えば「今週は子供が熱を出してしまったけれど、家族みんなで協力して乗り切れたね」といった出来事をあらためて共有したり、そこから湧き出た自分の感情を書き出して、今後トライすべきことを検討したりしています。

また、夫婦共通の事柄だけではなく「今週は仕事で生徒とこんな話ができて嬉しかった」という僕の感情の共有をすることもあります。

――お仕事に関することも共有されているんですね。

まー:夫婦各々の関心事や感情を、仕事やプライベートに関わらず個人・チーム・内面・外面といった色々な側面から書き出してみてそれをシェアしています。

家族、職場の同僚…チームという概念は常に身近にある

――お二人が宮本さんを知ったきっかけを教えてください。

まー:僕の友人が長らく「自分に合うコーチが見つからない!」と悩んでいたところ、半年間さまざまなコーチとの相性を模索し続けてようやく見つけたコーチが宮本さんでした。

その友人が「是非とも見てほしい!」と送ってきた、宮本さんとのセッション動画を拝見して興味を抱いたのが最初のきっかけです。その後、宮本さんのXをフォローさせて頂き、しばらくウォッチしていたところ、宮本さんがコーチ向けの夏期講習プログラムの受講者を募集されているのを見て「これはチャンスだ!」とお声がけさせていただいたのが、宮本さんとの出会いのきっかけでした。

――まーさんが先に宮本さんを知ったのですね。

まー:そうですね。当時はベンチャー企業で働く傍ら、コーチの資格試験に挑戦していたり、一歳半の息子の子育ての責任を感じていたりといっぱいいっぱいだったので、適応障害をわずらって仕事を休職することになったタイミングでした。まさに人生の迷子という感じでコーチの力を借りたかったので、宮本さんにパーソナルコーチングをご依頼しました。

宮本さんに僕個人がコーチングをして頂くことになったのを皮切りに、宮本さん主催のリトリートに参加したり、ラジオ企画をご一緒させて頂いたりと重ねてご縁を頂き、今回のチームコーチングの募集にも手をあげさせていただきました。そして今回、チームメイトとして妻を引き合わせていただいたのが、僕ら夫婦としての初めての出会いになります。

――チームコーチングを受けようと思った理由はどのようなものだったのでしょう。

まー:当初はチームコーチングを受けてみようという発想はありませんでした。

しかし、休職・転職を経て新たに始まる高校での仕事を思うと、職員は一丸となる必要がありますし、生徒たちにもチームとなってがんばってもらいたい。

そして自分自身にあらためて目を向けると、僕と妻と子供もひとつのチームです。実はチームはどこにでもあって身近なものなんだということに気がついたタイミングで、信頼する宮本さんがチームコーチングのモニターを募集されているのを知ってお願いしました。

チーム全員を「ひとつの生命体」として見る

――宮本さんにお聞きしたいのですが、チームコーチングとパーソナルコーチング(1対1のコーチング)はどのような面が異なるのでしょうか。

宮本:コーチ側から見ると大きく異なる点が二つあって、ひとつ目はチーム全員を一つの人格として見ることです。私はそれを「(チーム全体をひとつの)生命体として見る」と言っています。メンバーの一人ずつと接しながら、全員で一つの生命体として接していきます。

ふたつ目は「意見などの対立をしっかり扱う」ことです。「お二人の考えは異なりますが、合意点はここですね」とまとめてしまうのではなく、考えが異なるところはしっかりと対立させ、向きあっていただきます。そうすることでチームに変容が生じ、結果としてよい方に向かうからです。

――まーさんはこれまで宮本さんからコーチングを受けてきたそうですが、今回のチームコーチングではどのような印象を受けましたか?

まー:コーチングしていただいている時も、場作りというか話しやすい雰囲気をそれとなく作ってくださっているのが伝わってきていましたので、そうした面での印象は変わりありませんでしたね。

でも、リトリートで直接お会いしてみると宮本さん自身がコーチングを学ばれていた時代の話などもたくさんしていただいて、語るのが好きな人間くさい面も知ることができました。

――あいさんは、宮本さんとチームコーチングで初めて会ってみての印象はいかがでしたか。

あい:夫からの話を聞いていた頃は「コーチングの先進的な知識に長けた、最先端の人」というイメージでしたが、実際にお会いしてみると恵比寿様のように笑顔を絶やさない方でした(笑)。

それと、聞いていた通りに知識の深さや広さを感じられる方で、最高のタイミングで一番ほしい言葉をくださる方だとも感じました。

セッションを受けるたびに自分の見える世界が広がり、物差しも広がるのを実感できて、人生がよりよい方向に分岐できたのだという実感があります。

対立のタネをくすぶらせず、きちんと燃やして昇華させる

――チームコーチングをしていて、お二人が変わったと感じられたタイミングはありましたか?

宮本:私から見てお二人が明確に変わったと感じたのは、全4回のうち3回目のセッションですね。

お二人というチームに良くも悪くも大きな影響を与えており、お二人が扱えているようで扱えていなかった家族関係を俎上に載せて、それぞれの立場から見つめ直していただきました。

まー:ロードリーム(起きてほしくない最悪の未来)を取り扱う過程で、妻との間でよく喧嘩のタネになってきた事柄が話題になったのですが、最終的に家族関係に焦点が当たりました。

あい:全てはまーの望み通りにはいかない部分があったとしても、やりたいことを応援したいと思って色々な面で自分の想いを譲ってきた経緯もあります。それでも「私もこんなにがんばっているのに」とネガティブな気持ちがどうしても大きくなってしまって……。

まー:今までは何とか折り合いをつけてきましたが、それは言い換えれば妥協なんです。お互いに我慢をしていますが、不満がないわけではない。そこから妻が持っていた「自分のがんばりが全然認められていない」という不満が表面化し、対立しました。

そこで宮本さんが「まーさんが分かっていないはずはない。あいさんが日々がんばってくれているのはよく分かっているだろうから、まーさんは一度きちんと言葉にしてみませんか」と僕らに寄り添い、対立を昇華させてくださいました。

あい:その時の私はプライドの高さを出して泣きだして…という感じで、宮本さんがいなかったらネガティブな気持ちが増すだけで終わっていたと思います。

ですが、宮本さんは私の気持ちも汲んで「涙を流しながらでも、自分の気持ちをきちんと言語化できるのはとてもすごいことです。それはなかなかできないことですよ」と言ってくださり、大きな救いになりました。

対立の炎がくすぶっていたら消すのではなく巧みにコントロールしながら燃焼させて、最後には“キラキラの灰”に昇華させる…。夫婦でコーチングを受けるのは今回が初めてではありませんでしたが、それを実現できる宮本さんの力量に感銘を受けましたし、そんな宮本さんだからこそ、私たちの関係性によい変化が起きたのだと思っています。

チームコーチングを受けて「変われた」と感じた瞬間は

――まーさんとあいさんが「変われた」と自覚できたのはいつ頃でしたか?

まー:「2人でこれからを乗り切っていくには」という想いで受け始めたチームコーチングですが、僕のチームには父母や子も含まれているし、職場の同僚や生徒に対してもチームとしてどう関わっていくかも考える必要がある。そういう広い視野を持てるようになったのは、僕も3回目のセッションがきっかけだったと思っています。

先ほど宮本さんから「チームを一つの生命体として見る」というコーチ側の視点のお話がありましたが、クライアントである僕にも2回目のセッションのあたりからそういう感覚が芽生えました。自分という人間は、1人では成り立っていない存在なんだなと。

あい:私も同じ認識で、「私はこんなにがんばっているのに」という気持ちをなくせたのは、チームでひとつの生命体なのだと自覚できたからだと思います。「がんばるのが私なのか夫なのかは関係なくて、その時々でできる方がやれば一番スムーズ」だと思えるようになり、生産性が上がりました。

以前は今よりもさらに未熟でしたので、まーに何か指摘やお願いをする際に、嫌味を含めて伝えてしまうことがありました。そこに対して、まーがブチ切れて喧嘩になってしまい、収拾がつかなくなる…そういう時は心の中でまーをヒドい目に遭わせることで、ようやく落ち着きを得るような有様でした。

でも、2人でひとつの生命体なのだと思うと、自分で自分に嫌味を言っても仕方がないわけです。他ならぬ自分が受け止められる言葉はどんなものだろう、そして同じことを繰り返さないよう今の自分ができる次のアクションはなんだろう……と考えられるようになりました。

私は元々、ネガティブなことがあると後々まで思い返してしまう悪い癖があったのですが、今はその時間を家族や大切な人と過ごす時間をより幸せにすることに使えています。

――セッションを通して、宮本さんの言葉で印象に残っているものはありますか?

まー:最後のセッションで提示していただいた「欠けているから全体である」というフレーズと、やっぱり「(チームは)一つの生命体である」という言葉(考え方)ですね。この言葉で、夫婦ともに大きく成長できたと思います。

夫婦喧嘩は、今でもするんですよ。つい昨日も、お互いに銃口を突きつけ合って今にも火を噴きかねないような対立をしたばかりです。でも、以前はこういう衝突をしたらお互いにいじけてそっぽを向いている期間がそれなりに続いていたのですが、昨日は2人とも早々に気分を切り替えることができて、一緒にカフェへ行きました。

仲直りするまでの速度が劇的に速くなって、意見が合わないことがあっても、すぐ次の共同作業に向き合えるようになったと実感しています。

――あいさんはいかがですか。

あい:そうですね……。「自分はこんなにがんばっているのに」という思いがあるのに、それが誰にも認識されず、感謝されず、ねぎらってももらえない。

それは誰にでも起こりうることだと思いますが、宮本さんはセッションを通してそういう「痛み」を見つけて、優しくケアしてくださるんです。宮本さんのそういう心遣いにいやされていた面って、かなり大きくなかった?(まーさんの方を見ながら)

まー:それはある。絶対にある。がんばっていることをきちんと見つけて、祝福してくれる。これまでに幾人ものコーチと接してきましたが、宮本さんはその部分の丁寧さが群を抜いている方だと感じました。なんて言えばいいんだろう……宮本さんのそういう「まなざし」に救われたというか。

あい:「まなざし」!それだね。ケアすべき痛みを見つけた時の宮本さんは、前のめりにねぎらってくださるというか、そういう姿勢やそうするための時間を意図的に作ってくださっていると感じたのですが、いかがですか?

宮本:そう言っていただけるのは、とても嬉しいです。ただ、僕からするとごく当然のことをしただけで、意識的にしていたわけではありませんでしたので、「自分でも認識できていなかったがんばりをフィードバックで指摘してもらえる」ことはこんなにも嬉しいのかと、今僕も実感しています。ちょっと照れ隠しも入っていますが(笑)。

あらためていただいたお言葉に真面目にお答えすると……うまく言葉にできませんが、僕はやっぱりそこをすごく大事にしているな、と思います。

同じひとつの物事に対しても、見る人によって見る立場や見える範囲は変わるので、どうしてもこぼれ落ちてしまう部分もあります。コーチとして客観的な視点で見ているからこそ、それを拾うことができているのでしょう。

痛みを抱えている方に「それでも、あなたは今それができる立場なのだからやりましょう」というのは簡単ですが、あまりにも教科書通りすぎます。

もし対立する相手の言葉に悪意を感じることがあっても、その人の根幹にあるのは善意なのではないか?善意から始まったことなのではないか?究極の性善説……と言ったら少し恥ずかしいですが、そんな「まなざし」があってよいと思うし、忘れないようにしたいです。

善意から始まったことならその気持ちに光を当ててさしあげたいし、本来の善意を掬い取れば、相手に伝えたかった気持ちもきちんと伝わります。そうすることで循環するエネルギーのようなものがあるのではないか……と、今あらためて気付くことができました。

「やりたいことができていない」本当にそうなのかを客観的な視点で伝えたい

――お二人が今回のチームコーチングから受け取ったと感じるものを教えてください。

まー:群馬に移住してきてから2年以上が経ちますが、適応障害で休職してしまったことや、仕事をしつつ家のことでも負担をかけてしまっている妻と僕の両親との仲立ちをしたいという思いなどから、僕は不確かな不安の中で生きてきました。

しかし、チームコーチングのおかげで今は「チームでがんばれば大丈夫、任せられることは任せておける」という信頼感や実感が醸成されました。「自分の人生を歩んでいく足元の確からしさ」をいただけたのが一番のギフトですね。

それと、高校の業務で少し前から面談を始めたのですが、「この子はちょっとコミュニケーションが苦手そうだな」という印象だった生徒も、一対一で話して丁寧に耳を傾けると実は強い信念を持っていたり、大きな変化を遂げていたりすることが見えるようになりました。

彼らがきちんと前に進めていることが嬉しいし、それが分かるようになった自分になれたことも嬉しい。生徒たちから「面談してもらえてよかったです」と言ってもらえた時は、宮本さんにしてもらえたことを少しは返せたかな……という気持ちになりました。

あい:先ほどもお話ししたことではありますが、私は「ひとつの生命体としての自覚を持てたこと」と「私たちのなかにあった対立を適切に燃焼させ、昇華させてくれたこと」ですね。私だけががんばりすぎる必要はないし、私ががんばった時に「自分はこれだけのことをやったんだけど」とアピールする必要もなくなりました。

コーチングの過程で出てきた「人生、楽しもうぜ!」という言葉は、いつも胸に秘めています。なんだか、宮本さんが「いつもここにいるよ」と言ってくださっているようで。

――もし、チームコーチングが今よりももっと当たり前のものとして存在するようになったら、世界はどのように変わると思いますか?

まー:パッと思い浮かんだのは「清々しい世界」です。モヤモヤすること、対立すること、気持ちが荒んでしまうことはどうしてもあると思います。その過程で心の奥底に押し込まれてしまった願いや言葉にきちんと目を向けられる機会があまねく広がれば、晴れやかな気持ちで前を向いて生きられる人が増えるのではないでしょうか。

あい:主語が「私は何をすべきだろう」という「I」から「私たちの幸せって何なんだろう」というような「We」に変わることで、被害者思考やネガティブな考えにとらわれる時間が減ると思います。自分のことだけを考えるのではなく、自分だけを犠牲にするのでもなく、みんなの幸せを追い求める。そういう愛があふれた世界になるのではないかなと思います。

宮本:1人1人が「関係性の変化を楽しめる」ようになっていくのではないでしょうか。カップルが夫婦になり、やがて夫婦が父母になる。今は、スイッチを切り替えるように関係性を変えようとしてうまくいかずに苦しんでいる方もいるように見受けられます。

夫婦になったからといって、初々しかった頃のカップルという関係性がなくなったわけではない。子供ができて父母になっても、2人は夫婦であることに変わりはない。そういう風に、それぞれの関係性を並列させて楽しめる方が増えていくといいなと思います。

――ありがとうございます。それでは最後に宮本さんへおうかがいします。どのような人がチームコーチングを受けるのに向いているでしょうか?

宮本:ご夫婦にかぎらず、ある文脈や視点から自分を顧みた時に「やりたいことが全然できていない……」と感じることはあると思います。ですが、異なる価値観や尺度で見直せば「こういう変化をしているよね」というものが見えることも、同じくらいにあるものです。

否定や反骨精神などを糧にして前へ進めることもありますが、それには限度があります。常に否定ばかりでは、進むためのエネルギーが出なくなってしまいますから。

私のチームコーチングでは、評価できない部分から目をそらさずに指摘したうえで「でも、こちらから見るとがんばっているのが分かりますよ」という視点も併せて伝えてさしあげたいと思っています。

関係性をよくしたい。前に進みたいけれど、チームだけではいまいちうまくいかない。そんな時は、ぜひご相談ください。チームのなかでくすぶっているものを燃焼させて、“キラキラの灰”に昇華してあげられればと思います!


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