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2024名大理系前期大問4(2)を一発で解く
[問題]
袋から無作為に玉を一つ取り出して袋に戻す試行を行う。$${1}$$回の試行で赤玉を取り出す確率を$${p}$$とするとき、この試行を$${n}$$回行って、赤玉を$${k}$$回以上取り出す確率$${f(k)}$$が
$${\displaystyle f(k)=\frac{n!}{(k-1)!(n-k)!}\int_{0}^p x^{k-1}(1-x)^{n-k}~dx}$$
となることを示せ。ただし、$${k=1,2,\cdots,n}$$とする。
(2024名古屋大理系前期大問4(2)(表現を変更))
数理統計学における、比較的有名な事実(二項分布とベータ分布の関係)に関する証明問題です。ぜひ考えてみてください。解答は、この下の原題の画像の下に載せます。
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普通の証明は、
「右辺の定積分を部分積分の反復で計算し、$${f(k)}$$に一致することを示す」
だと思います(あるいは、この方法と実質的に同等だが、部分積分+数学的帰納法で示す)。
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さて、この等式を「一発」で示すこともできます。一様分布と順序統計量を用います。
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キレイに示せましたね!
数理統計学を学ぶと、大学受験数学のある種の確率の問題について、その背景を理解できたり、簡単に解く別方針を思いつけたりします!皆さん(特に高校数学の先生)もぜひ、数理統計学をしっかり学びませんか?
2024名古屋理系前期大問4(2)(リプに原題あり)は、次のように考えることで、一発で説明できます。(一様分布U(0,1)と順序統計量を用いる) pic.twitter.com/SutOsU8L78
— 大澤裕一 (@HirokazuOHSAWA) March 2, 2024
■Julia言語(プログラミング言語)では、二項分布の累積分布関数の計算を本問の結果を利用して計算しているようです(定義通りの計算よりも高速にできる)。
#julia言語 の二項分布のcdfは不完全ベータ関数で計算されているようです。https://t.co/DznASeUwVe
— 清水 団 Dan Shimizu (@dannchu) April 20, 2024