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ニーズとウォンツについて考える

我が社の創業以来、顧客の要望ばかり聞いていたら、
今ごろ、我が社は世界一早い馬車を作っているだろう
出典「どこか外国の自動車メーカーの社長」

上手いこと言うなー。と感動しました。(どこのメーカーの社長なのかは忘れましたが)

自動車のない時代、貴族は「より早く、より揺れない、より広い客室の馬車」を、探していたはずです。
これがウォンツ。

もし、その時代にタイムスリップして、自動車を持ってその貴族宅に「これ、自動車って言うんです。買いませんか?」と飛び込み営業したら、きっと買ってくれるはず。これがニーズです。

顧客が欲しいのは
「より早く、より揺れない、より広い客室の馬車」
ではなく、「より早く、より揺れない、より広い客室の乗り物」というわけです。

政府が望んでるのは顧客のウォンツを満たす企業ではなく、ニーズを満たす企業。

【審査項目】
事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与する ユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。クラウドファンディング等を活用し、市場 ニーズの有無を検証できているか(グローバル展開型では、事前の十分な市場調査分析を 行っているか)。

令和元年度補正ものづくり補助金9次締切分公募要領より

ものづくり補助金で、問われるのはウォンツではなくニーズです。
過年度のもの補助の公募要領では「顧客の潜在的ニーズを満たせるか?」と書かれていたこともあります。
勝手な私の想像ですが、潜在的なニーズを掘り起こし、売上につなげるには数十年かかってしまうから、「潜在的な」をとっぱらったんかな?と。詳しくは後述します。

馬車を欲しがってる貴族にとって、馬車も自動車もニーズです。どちらも貴族の困り事を解消できる。

しかし、潜在的なニーズと言われれば自動車となります。

事業計画書で、潜在的なニーズを目指すのは難しい

潜在的なニーズ、それを満たす事業計画は具体性に欠けます。

もう一度、馬車を欲しがってる貴族に自動車を売ることを考えてみましょう。
「ガソリンはどこで調達できるの?」
「ミッション車しか用意できないけど、運転技術は誰が教える?」
「道が舗装されてないと、走れない(ぬかるみではスタックしてしまう)から、馬車の方が早い」

問題が山積みです。

ものづくり補助金では3〜5年間で売り上げを飛躍的に伸ばす計画が必要です。
たった5年間で、ターゲットである貴族の行動範囲にガソリンスタンドを増やし、道路を自動車用にアスファルト舗装した上で、自動車のセールスを展開して売り上げを倍増させることは、現実的ではありません。

だから、ものづくり補助金の公募要領では、「潜在的なニーズ」から「ニーズ」に変更したのかなぁ…と。

この私の考察が当たってるなら、政府の意図するところは「潜在的なニーズ」を積極的に拾っていく企業を増やしたい。しかし、ものづくり補助金では事務的にそれを推奨することが難しい。と言うところにあるのかなぁ…?と思います。

ものづくり補助金の事業計画書でどのように反映させる?

短期的(5年以内)に売り上げを倍増させるために、まずは顕在的ニーズ(馬車の売上)を狙う。
その後10〜30年かけて、潜在的ニーズを満たせる条件を整える(ガソリンスタンドや道路の舗装など)
そして、長期的には潜在的ニーズ(自動車)の売り上げ拡大を実現し、その分野でシェア1位を目指していく。

多分このように(↑)書くことが、最適解なんだと思います・・・。ただ、私が、このように書くことは無理でした。
私の文章力の限界ですし、枚数制限があるので、そんなことまで書くスペースがないという事情もあります。

また、審査員目線では、見たことも聞いたこともない製品を「潜在的ニーズを満たせます」と説明されてもさっぱりわからん!と言う問題もあります。

馬車しか知らない貴族に、レクサスのパンフレットを渡しても「はあ?」と困惑するばかりでしょう。やはり、本物のレクサスを運転してもらい、その便利さを実感してもらうしかない。

話が鉄工業に戻りますが、一度、上司が、「客先は気づいてないけど、xxxを提案すれば、ニーズはあると思う。だってoooだから」と言っていました。
それを事業計画に反映させ、あらすじを作ったところ、「意味が分からん!客先がxxxを潜在的に必要としていることが、さっぱり分からん」と認定支援機関の方を困惑させてしまいました。

30年前の日本において、「SNSという革新的な取り組みを行い、いつも誰かとつながっていたいという潜在的ニーズを掘り起こし、自社は広告収入で儲ける」という先進的な取り組みの事業計画を書いても、きっとみんな困惑するだけで、どの銀行も融資してくれないと思います。

そう考えるとfacebookの創業は偉大だなぁ・・と思いますね。

まとめ

補助金や銀行の融資のための事業計画、潜在的ニーズを書こうとするとドツボにハマるよ!というお話でした。

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