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パトリシア(デザイン秘話)

久しぶりに書きます。
普段服を作る仕事をしていて、その延長から得たキッカケからブランドなんてものを立ち上げるに至りました。その中の『Patricia』シリーズは最高にロックなバンドの影響を受けて生み出したもので紹介文を と残します。
まずは創作物語パトリシア。どうぞ。

『パトリシア』

寝癖?ベランダでくしゃくしゃの頭のまま今日もシャボン玉を飛ばしている。髪の事は気にもしていない。
少しずつ肌を掠める風が湿度を失い寒さも感じ取れるようになった。いい季節だ。着る服を悩める事が楽しい。淹れた珈琲が美味しい。
 外からは学校へ向かうだろう子供達の声も聞こえる。ベランダで珈琲とシャボン玉を交互に嗜むキミに行ってきますの声をかける。彼女は子供達に手を振る。知らずのうちに近所の子供達の人気者になっている。振り返りはせず僕にも手を振りシャボン玉を飛ばしている。相変わらず頭はくしゃくしゃのまま。

 キミは必要があれば仕事を増やす。必要に迫られてなければ適度に創作なんかをしている。天気が良い日はうたた寝をしては顔にカラフルな絵の具を付けても気付かず一日を過ごす。マイペースな人だ。もう一年だ。

 マイペースな彼女の誕生日は明日。普段から待ち合わせをしてもまあ守らないキミに、それなら近場で食事でもとのこちらの提案に対しての返答は
「…歳をとるのはもう やめる」
とのことだ。モノマネみたいに真剣な顔で言う。これ以上言う事はない という満足気な目に圧され、とりあえずケーキくらいは と持ち帰りの注文を入れておく。

当日。今日もシャボン玉を飛ばしてる。髪の毛はくしゃくしゃだ。予約したケーキを取りに行く。今日も子供達に呼び捨てにされている。シャボン玉が増えた。キラキラ光る。

帰ったら眼前にサプライズ。前髪がなくなっていた。
「…パトリシアみたいでしょ」
描いた絵を手にして言う。
「誰だよ」
笑い合いながら映画を見た。
ケーキを食べながら見たその物語で泣いてしまいそうになる僕をみて泣き出したキミ。代わりに泣いてくれたそう。部屋にいるだけの何にも特別ではない少しだけ変な誕生日。

 僕らはきっとマヌケで最高で、明日はもっと今日より楽しいなんでもない日が続く。何処かでいつか歩きづらいくらい風が強い日が来ても、君とならたぶん何故か幸せ。

 今朝もくしゃくしゃの頭。切りすぎた前髪。呼び捨てにする近所の子供。キラキラなシャボン玉。行ってきますに振り返り手を振るパトリシア。今日は昨日よりちょっと楽しい物語になる。

 はい。表題にあるパトリシアというのは、the pillowsというロックなバンドの楽曲名の一つ。
今回はそこからイメージした場面を文章化したものでフィクションの更に向こう側ってやつです。完全なる独自解釈なので、自分は違うな という事も勿論気にせずOK。デザインする際はイメージを脳内映像で済ませていたので文章化は中々まだイマイチですが、そこはご愛嬌ということで。

 そして、うちのオリジナル服『パトリシア』シリーズはドレスにブラウス、セーターと作ってきてますが、ちょっとデザインの素になるものが特別な服になっていて、こういう物語を想像して創造しています。その場面でパトリシアが着るならこんな服が良いという感覚で。
※気になる方はショップも覗いてみて下さい。
少しでも伝えておきたいと思い、今回の企画立案者の持ち主さんのタグに1つの愚作を投稿させて貰いました。
こんな変なバスターズも居るんだぜ。

the pillowsとの出会いが無ければ恐らく生まれることは無く、他にもかなり多くの楽曲から影響を貰っているバンド。一言で表すなら
『何故か目の前のキミに届くロックンロールバンド』て感じ。
好きなところは『上手くいく事もいかない事も誰かの所為にはしない、だから人と違っても良いし人と合わせる事は必要以上にやらなくても良いんだぜ、比べるなら自分だろ、なんとかなるもんさ』みたいな気持ちにさせてくれるところ。

彼らやその楽曲との出会いや細かい影響は長くなるし、自分語りになるのでまたいつか。どこかで。それまで元気でまた会おう。

2024.10.19


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