音楽放浪記 10-2
上半身裸の男は
コーヒーを飲んでから学校に行きたいと言った。
「池田も飲んで行きなよ」
コーヒーなんてインスタントしか飲んだことない
けど、とりあえずご馳走になるよって
インスタントだったからちょっと安心したけど。
奴の部屋は
部屋と言うよりは
2段ベットで囲ったスペースで
お邪魔するのには気が引ける感じや
彼の母親の皮膚をはじめ諸々に疾患があった容姿は、正直中学生の自分には直視できない感じで
「あ、俺は貧乏くじ引いた」と直感した。
めちゃくちゃ失礼な話だけど。
「遊んでないで、学校にいけ!」などと
どなりちらす母親に
「うるせーなー」と返す奴。
すべてがカルチャーショック。
俺はここにいていいのか?
今までに感じたことのない家族関係。
カセットデッキを再生すると
そこからは聴いたことのない音楽が流れてきたんだ。
チャゲ&飛鳥「狂い咲き」や「オンリーロンリー」(一応補足すると彼らがまだ大ブレイクするまえのフォークともニューミュージックとも言い難い独特な活動をしていたころの話)
学校をサボっている
コーヒーを飲んでいる
知らない親が怒鳴っている
すべてが初めての経験で
ネジが外れてしまったみたい。
「ギター教えてくれよ」
俺は彼にお願いしていたのは覚えている。