あっち側とこっち側
プロ2年目のある日、
エスパルスのクラブハウスで山西尊裕さん(ヤマさん)にこう言われたんです。
「ニッコに憧れるのは当たり前だよ。だけど、あんな風にやっていける選手はほとんどいない。自分がどっち側の人間なのかわかってないといけないよ。」
ニッコとは、少年時代にヤマさんが付けた西澤明訓さん(アキさん)のニックネームです。
2人は同級生で、小学生(清水FC)の頃から面識があり、共に清水東高校を卒業した旧知の仲。30歳を過ぎ、地元のチームであるエスパルスで再びチームメイトになりました。
アキさんはセレッソ大阪のレジェンド。海外移籍を何度も経験し、日本代表としてW杯にも出場した日本サッカー史に名を残すFWです。
ヤマさんはジュビロ磐田の黄金期のメンバーで、エスパルスに来てからはキャプテンも務められました。粘り強い守備と精度の高い左足で、安定感抜群のDFです。
お二人はポジションも違えばプレースタイル、ライフスタイルも真逆でした。
不良少年と生徒会長のような感じと言ったらわかりやすいかな?笑
「あっち側」と「こっち側」
ヤマさんは、
アキさんのように、もの凄い才能を持ち、人を惹きつけるカリスマ性や圧倒的なオーラを放つ人を「あっち側」
自分のようにコツコツ努力し、少しずつ積み上げていく人を「こっち側」と表現されました。
若かった僕はアキさんに強烈な憧れがありました。今もですが。
大変お世話になりましたし、やる事なす事全てに男気があり、カッコいいのです。一緒にプレーした事がある人ならみんな同じ気持ちになると思います。
「あんなサッカー選手になりたい。」
「あんなカッコいい男になりたい。」
そう思っていました。
が、冒頭のヤマさんの言葉からわかるように、僕は圧倒的に「こっち側」の人間でした。
見たくない現実でしたが、試合に出る為、日々の練習に食らいつく為に必要な事を考え、取り組み続けることをしなければいけなかった。やり続けてなんとかみんなのレベルに手が届くくらいだったのです。
ヤマさんが気付かせてくれなかったら、プロサッカー人生はいいとこ5年くらいで終わっていたと思います。感謝です!
語弊の無いよう書きますが、ヤマさんもカッコいいんですよ。今は当時と価値観も変わってきて一層尊敬しています。ほんとにプロの鑑でした。
そして、長く現役を続けてわかったんですが、サッカー選手ってほぼ「こっち側」の人間なんですね。
サッカー選手になれば誘惑もあるし、結果を少し出して勘違いしていく選手は山ほどいる。
いかに早く気付いて行動に移せるか。毎日コツコツと積み上げていく事が出来るか。
大きな野望を持っているであろう我がチームの若い選手達よ!早く気付いてデっカくなってくれよ!おじさんは楽しみにしてるよ!
ちなみに僕はヤマさんのようにコツコツと積み上げていく事を大切にしながら、アキさんのようなカッコいい男になりたいと思っています。
目指せハイブリッド!
今回の写真はプロデビュー戦の集合写真。
自分の隣にアキさん(上段右から3人目)、そして下にヤマさん。最高や。
試合後アキさんに、頭をポンポンっと撫でられて「デビューおめでとう」と言ってもらった事が嬉しくて今でも覚えています。
大卒のくせにデビューに1年半かかったもので。笑
あ〜2人に会いたくなるなぁ〜
ありがとうございました。