「手段」と「目的」、その奥にある「真の目的」
ここ数年でわかってきたナイスな発見です。
「目的」を達成する為に「手段」があります。
「試験」に合格する為に「勉強」をする。
「試合」に勝つ為に「練習」をする。
しかし気が付かないうちに、本来の「目的」を忘れ、「手段」が「目的」に変わってしまっている事はありませんか?
1.エスパルスでのもがき
入団先のエスパルスで今まで味わった事の無い高い壁にぶち当たりました。
今までどんな壁も、一生懸命やっていれば乗り越えられたのですが、この時はどうすれば良いかわかりませんでした。
とにかく試合に出ている人よりグラウンドに残って練習しよう、コーチを捕まえて苦手なビルドアップの練習に付き合ってもらおう。
こんな事を考えながら試合に出る為の手段である練習に取り組んでいました。
しかしいくらたっても実力不足で試合に出れません。なのに以前より焦らなくなっている自分がいました。
それは試合に出られない環境に慣れてきてしまった事と、何より試合に出る為に練習している自分に満足していたのです。
私はいつの間にか「頑張って練習する事」が目的になっていました。
2.ロアッソでの気付き
目的がズレていた事にはっきり気がついたのは、レンタル移籍をしたロアッソにいた時でした。
なんとか試合に出させてもらい、初めてコンスタントに出場機会を得る事が出来ました。
試合に出ればプレーのフィードバックを受けられ、そこで出た課題を克服する為に、練習でやらなければいけない事が明確になります。「目的」に対する「手段」がはっきりと出ていた状態でした。
そんな良いサイクルに自分が入っている時、出番の無いとある若手が、エスパルス時代の私と同じ様な状態でいる事に気がつきました。練習前に自分なりに準備をして、自主練を頑張り、そんな自分に満足しているように見えたのです。
彼に、「それは本来試合に出る為にやっている事なんだよ」「やっている事に満足してはいけないよ」と諭しているうちに、自分も改めてエスパルス時代「手段」が「目的」に変わっていた事に気が付いたのです。
そして何より、当時チームメイトの大先輩である南雄太さんが、常に試合で結果を残すために毎日たくさんの準備をする姿を見て、このままではダメだと思わせてくれたのです。
雄太さんが40歳を過ぎても現役でバリバリやっているのも、当時の姿勢をみていれば当たり前にすら感じます。リスペクトです。
3.目的の再定義
現在、私のプレイヤーとしての「目的」は常に「試合に出て良いパフォーマンスを出すこと」
試合や練習から自分のプレーをなるべく客観的に観察し、コーチやトレーナーに相談しながら何が不足しているのか分析します。改善するトレーニングを考え、よくなった時の自分をイメージしながらそのトレーニングを行っています。試合に出ていても出ていなくても。
それでも気付かぬうちに目的がズレてしまう事があるので、定期的に確認や再定義をして、目的に沿ってやれているか意識しています。
「これって何の為にやっているんだっけ?」を問いかけています。
自主練の中には何も意識せずボールを蹴るだけの「練習の練習」になってしまう事も多くありますし、筋トレもサッカーに繋がっている事を意識しないと無駄なモノが付いたり自己満足で終わってしまいます。そもそも続きません。クラブハウスに早く来ても、来るのが目的になり、練習に向けて何も準備をしていないのならば早く来た意味はありません。
4.目的を達成した先に何がある?
なんとか現在もプロとしてプレー出来ている訳ですが、ようやく自分が何故サッカーを追求し、目的である「試合に出て良いパフォーマンスを出したい」と思っているのかわかってきました。
その目的を達成した先に何が待っているのか?深掘りを続けた結果、それはこんな事だと私は考えました。
「自分自身喜びを感じ、家族や仲間、ファンサポーターと笑顔になる。心が繋がり熱くなる瞬間を共有できる、提供できるから」
自分自身のみが幸せになるのでは無く、関わる人が幸せだと感じられる事に、大きな意義を感じるみたいです。
目的の奥にある、自分自身のもっと根っこにある目的を見つける事が出来ました。
5.真の目的
上記に書いたように、目的を達成した先にある真の目的を見つけました。
そして達成に至る過程に、自分がサッカーを追求する、もう1つの真の目的を認識しました。それは、
「サッカーを通じて人間として成長する事」
目的がすぐに達成されれば、それほど苦しむ事はありませんが、現実にはなかなか目的に届かない事が多いです。そんな時こそ人として成長するチャンスだと思って取り組む事にしています。
悩み、迷い、もがき、トライし続ける過程にピッチで結果を出す事とは全く違う、人としての成長があると信じています。
試合に出られない、実力不足な事を素直に認め、それをひっくり返す事を面白がって前向きに楽しく明るく乗り越えようと。
「ここの筋肉がもっと使えるようになったら、ターンが速くなってボールを簡単に奪えるしプレーに余裕が出てくるはずだ!」こんな風に、ワクワクしながら音楽をガンガンかけて体幹や筋トレをやっています。
大学時代の恩師、秋田浩一先生がおっしゃっていた言葉が、プロになって苦しい時にいつも頭をよぎっていました。
「俺たちは漢を磨く為にサッカーを選んだ。」
この言葉の意味を、ようやくわかってきた気がしています。
6.真の目的の見つけたメリット
真の目的を見つけたことで「試合に出て良いパフォーマンスを出す」以外にもやれる事が見えてきました。
選手が、クラブの取り組みやサッカー以外の部分でも社会と繋がる事や貢献出来る事は沢山あります。
真の目的と繋がっているとわかっているから、昔は抵抗があった事も楽しく前向きに取り組めています。
「人として成長出来る」と思っていると気持ちの波が減ってきます。
苦しい時に試されている、成長のチャンスだと自分で思えるのです。
その結果、継続して課題に取り組む事ができます。必ず成長していると実感出来るまで続けられます。
これは凄いメリットだと思います。
7.最後に
振り返ってみると、私は小さいころから「Jリーガーになる」事が目的でした。
エスパルスに入団し、その目的は達成しました。しかしその先を考える事が出来ていませんでした。キャリアで唯一悔いが残るのはエスパルスでの最初の3年間です。
入団後、目的の再設定をして、心の底から「エスパルスを代表する選手になる」「日本代表になる」と誓えていたのなら、もっと違う取り組みになっていたし、もっと素晴らしい舞台で戦えていた可能性は高かったのではないかと思います。
当時の自分なりに一生懸命やっていたつもりでしたが、色々と足りなかったと思います。この辺はまた次に書こうと思います。
しかし自分らしい今のキャリアに誇りを持っています。なかなか味のあるいい道です。
これからもどんな道になるのか楽しみながら突き進んでいきます。
皆さん、
「手段」がいつのまにか「目的」になっていませんか?
目的を達成したその先に何が待っていますか?本当に得たいものはなんですか?
「真の目的」を見つけてみませんか?
ありがとうございました。