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母のこと
母は88歳、神戸の一軒家で独り暮らしをしている。約40年前に娘(私の姉)が嫁いで出ていき、息子(私)も大学入学をきっかけに家を出て、母はずっと父と二人で暮らしていた。その父も8年前に他界し今は独りである。
母は民生委員、地域の自治会長、神社の氏子総代などを長く務めていたがもう歳だからと今はすべての役を下りたそうだ。何かと頼られるけど、持ち出しばっかりやったわ、と笑いながら話していた。
母はここ数年脊椎狭窄症を患って趣味の日本舞踊が踊れなくなっていた。歩けなくなると足腰が弱り、ちょっとした事から骨折して寝たきりになり、さらに衰弱していく、というのがお年寄りの典型的な晩年だろうから、嗚呼とうとうそんな時期がくるのかなと思っていた。
ところが、母は「もう一度踊りたい」とかかりつけ医に願い出て手術をした。手術は成功し、数か月間病院で養生してから退院した。当然足は萎えてしまっていてリハビリを始め、かなり回復してきている。骨密度は63%で同年齢の中ではよい方だそうだが、それでも骨は脆くなっている。
聞くと、毎日自宅の前の道を10分間歩くという日課を欠かさないらしい。歩かなくなると衰えるからな、と。最初は杖を使っていたが今は杖無しで歩けると笑った。
88歳で、いまでも前を向いて努力し、歳から来る衰えに抗う母。今まで十分世間に貢献してきた。息子としたら、もう休んだらどうだと思うのだが母はまだまだやる気を失っていない。見上げたものだ。
同時にこうも思った。私は母に似たんだ、と。88歳まではあと30年近くある。母のような元気がいつまで続くかはわからないが、私も母に恥じないように、前を向き歩き続けよう。
励ましに行ったつもりが逆に励まされた日でした。