「記憶脳」を読んで
私は本書を読み、6年前のある経験を思い出しました。今回はその経験を交えながらお話をしようと思います。
私は現在もメンタル疾患を患っていますが、当時は特に「集中できない」「疲れやすい」「物覚えが悪い」と言った症状が強くありました。
発病前に勤務していたところは事務職で、私はある部署のリーダーだったのですが、仕事に集中ができず決済業務が滞り部署全体に迷惑をかけていました。そうして最終的に職を追われる形になったのです。
退職してしばらく療養した後、復職した勤務先は惣菜製造の会社で畑違いの業種でしたが、そこでは何とか仕事ができました。恐らく作業の切り替わりが早かったので集中力を切らさずに仕事ができたからでしょう。
3年ほど惣菜製造の仕事を続け、その後さらなるステップアップを目指して転職の準備を進めていましたが、会社を辞める前にこの3年の成果を何か形に残しておきたいと思うようになり、調理師免許を取得しようと考えました。
調理実務2年以上の経験があると試験資格を得られ、さらに筆記試験を受けて合格すれば調理師免許を取得する事ができるのです。
さっそく筆記試験の問題を読んでみたのですが、そこで絶望しました。内容がまるで理解できなかったからです。受験経験者から勉強方法を聞いたところ、過去問さえやっておけば大丈夫との話だったので、入手可能な3年分の過去問集とテキストを揃えました。
先にテキストを読んだのですが内容が全く解らず、過去問集から読んでみる事にしました。しかし、そちらも手のつけようが無かったので、とりあえず全て正解を見ながら解答してみる事にしたのです。
そうして解らなくても正解を見ながら解答を繰り返すうちに、ようやくテキストの内容が理解できるようになりました。健康な人なら一度問題を解いてテキストを読めば内容を理解できるのかも知れません。
しかし、集中力がなく物覚えも悪い状態だと問題を解いてテキストも読んでも、後日に内容を覚えていなかったりしたため、人より何倍も問題集を繰り返し解いてその後、何度もテキストを読んで脳に理解を焼き付ける必要があったのです。
朝は早起きできず仕事から家に帰ると疲れて夜は早く寝てしまい、平日は勉強する事が出来ませんでした。そこで土日に集中して勉強し、疲れてても水曜日だけ家に帰る前に図書館に寄って勉強することにより、3日に一度は必ず勉強する事を心掛けました。
体調が悪くなると勉強が途切れる事があり集中力が続かない事も多く、くじけそうになって試験を辞めようと考えた事もしばしば。
しかし、受験には職場の調理業務の就労証明書が必要になっており、今回落ちると退職後にまた証明書をもらわないといけなくなります。辞めた職場から何度も証明書はもらいづらかったので今回がラストチャンスだと思い、ここで試験を辞める訳にはいかないと何とか踏み止まりました。
そうして過去問3年分を全問解答出来るようになるまで約半年かかりました。通常、調理師免許の試験勉強の平均期間は約半年です。しかし、私はまだここから理解度と正解率を上げないといけなかったので半年経ってもまだ折り返し地点だったのです。
自分の健康状態を鑑みて最新版の過去問集が出た直後から早めに勉強を始めており、1年近くの勉強期間を設けていたので、幸い折り返し地点から勉強をする期間はまだ十分にありました。
それからはひたすら過去問3年分を解いていく勉強です。マス目のノートを買い、解答をマス目に書いて答えの◯と×を記入していき、後日解答したものと前回解答したものとを比較して、少しずつ全部◯に近づけていくようにしたのです。
あとは3年分の過去問全問を完全正解するまでその勉強法をくり返しました。そうして試験当日、試験開始3時間前に会場入りして開始直前まで勉強をして試験に臨みました。
しかし、いざ試験開始3分前になると全身に冷や汗が出る感じで、とてつもない精神的圧迫感が襲ってきました。メンタルを病んでからこんなに緊迫した場に入ったのは初めてだったので、動悸も鳴り止まず試験が開始されたら頭の中が真っ白に。
開始後しばらく身動きが取れなかったのですが、とりあえず問題を読んでみると過去問と同じような問題ばかり出ていたので、少し落ち着きを取り戻して筆記を始めてからは順調に解答していく事ができて一安心。
ところが、つい先程まで勉強していた問題と同じような問題なのに答えが頭から出て来なくなったり、途中退室が認められている試験だったので筆記を終えて退室していく人達を見ている内に、焦りが頂点に達してまた動悸が鳴り止まなくなったものの、何とか筆記を終えれました。
試験結果は1ヶ月後の発表だったので、1ヶ月間プレッシャーに襲われながら不眠状態が続きました。自己採点では合格ラインにいると思っていましたが、結構際どくて最後までどうなるかわかりません。
そして結果は正解1問差でギリギリ合格!余裕で合格だろうが、ギリギリで合格だろうが、合格は合格。25年前に公務員試験に合格した時と同じくらいに感極まりました。
さて、私は健常者よりも多くの制限がある中で勉強して試験に合格できた訳ですが、どうして合格できたのか本書の中にいくつかのヒントが隠されていたのです。
まず、「過去問研究記憶術」
私は内容が全く解らなくても3年分の過去問から勉強を始めて、正解を見てからテキストで調べる方式で内容を理解していきました。そうすると過去3年分ほとんど同じ内容が出題されおり、出題の傾向を掴む事が出来たのです。事実、本番テストの出題の傾向はまったく同じで、問題まで同じものもありました。
次に、「学習計画記憶術」
平日は日々途方もない疲労感で集中力もなく勉強が手につきませんでした。しかし、土日だけは少し集中して勉強する事ができたのと、どんなに勉強時間が短くても土日の中間の水曜日には復習を繰り返しました。多少日数はズレますが「137記憶術」相当の効果があったと思います。
最後に、「対戦成績記憶術」
過去問の解答をノートのマス目に書いて正解の◯と×を日々記録していたので、後日解答したものと前回解答したものを比較して正解率が一目瞭然でわかり、どんどん◯が埋まるようになってくると楽しくてやる気も湧きました。全部◯になった時はとても嬉しかったのを覚えています。
私は主治医に、「君に試験は難しいと思うよ」と言われていました。当時の症状的に総合してそのように言われたのだと思います。事実、色んな場面で精神症状が出ましたし、辛くも試験に合格出来た感じです。
しかし、本書のような記憶術を用いれば精神的に不安があっても、試験に合格できる事がわかりました。
本書は私のような疾患を持つ人間でも記憶力を高める方法がたくさん記されています。当時の私がもし本書を読んでいればもっと効果的な勉強ができた事でしょう。
日々の生活においても記憶力は必須です。これからの時代を生きていくために本書を読みながら勉強や学習の習慣を身につけ、年を取っても記憶力を衰えさせない幸せな人生を歩んで行きたいです。