「品行方正でお行儀のよい消費者」として時間を費やすことが、次の時代の「労働者」。

先日、講談社選書メチエから出ている『階級社会 現代日本の格差を問う 』という本のオーディオブックを聞きました。

本書の中で「企業はもう、高卒を労働力だと思っていない」と語られていて、このお話に、なんだかとてもハッとさせられたんですよね。

ちなみにこの本は、2006年に出ている本なので情報自体も少し古いと思いますが、当時からすでにそのような状況だったんだなあと。

産業革命以降も、肉体労働が中心だった時代には、高卒という労働者も資本を増殖させてくれるという点においてはそれなりに価値があったわけだけれど、現代においては、もうそうではないのだ、と。

一方で、そうやって企業が見捨てた人材、その有用性をある意味で「時間」という形で新たに見出して、搾取しようとしたのが、ソシャゲやYou Tube、各種SNSだったのだろうなあと。

つまり見方を変えれば、YouTuberのような一人で活動しているように見える人間においても「インターネットという目に見えないネットワークでつながり、現代版のバーチャルな大規模工場」をつくりだしたのだとも言えそうです。

まさに映画『マトリックス』のような世界観が、実はすでに訪れていたとも言えそうですよね。

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このように、はるか昔の奴隷労働の時代から、一人の人間が持っている“何か”を搾取して、国家や資本家が富や資産を増やしていく、構造自体というのはいつも変わらない。

その搾取されるものが、少しずつ移り変わっていくだけなのだろうなあと。

しかも、なるべく本人に自らの貴重な資源が搾取されているとは思われない形式において、それはいつの時代も起き続けるわけです。

なんなら、あなたにとっての「幸福」は増大していますよ、と見せかけてくることも多い。

だから、コンテンツそれ自体を楽しむことは否定しませんが、次はどのような形によって、そのような変化が起きてくるのかをある程度予測し、自らにそれに対しての対抗策をちゃんと考えておくことは、非常に重要なことだと思います。

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