メイとサツキ(2分間小説)
【2分で読める小説です その2】
ショートストーリーを書いている合間にショートショートストーリーを1作投稿させていただきます。
【本編】
フーッ。家に着くと、さっきもらってきた大量のチラシやパンフレットが入った紙袋を玄関にドサっと置いた。
今日は、芽衣(メイ)がこの春入学した大学の新歓だった。皐月(サツキ)と同じ女子大学の大学生になれた。同じ誕生日生まれの皐月は去年受かっていた。皐月の1年後輩になった。
皐月が楽しそうに通っていたから同じ大学を目指した。今日の新歓は正直行くか迷ったけど、行ってみて良かった。みんないい先輩ばかりだった。ここなら4年間楽しくやれそうだ。
朝、出かけるまでは「新歓で誰も声かけてくれなかったらどうしよう」と緊張していた。案の定校門に入って、しばらくは誰も声をかけて来てくれなくて不安は増した。
やっぱり場違いだったか…、一回りしたら帰ろうかな、と思っていたところに「ちょっといいですか?」と男性の声がした。
え、わたし?
おそるおそる振り向いた。テレビクルーだった。新歓の取材ということで、声をかけられた。
わたしでいいのかな…と思いながら、インタビュアーが放つ矢継ぎ早の質問にモジモジと答えた。ようやく解放されたと思ってホッとしていたら、勧誘の先輩たちが次から次へと現れた。
おかげで、帰りには両手がいっぱいになった。それにしても勧誘されたのは、文化系のサークルばかり、体育系は軽スポーツも含めて一切声をかけられ
なかったな。
リビングに入るとそこにいたパパが、開口一番「芽衣 テレビに映っていたぞ!ビックリしたぞ…」え!こっちがビックリだ。本当に放送されたのね。
下の物音で2階から皐月も降りてきた。「わたしも今見た!校門がうちだったから、あ、うちの大学取材されるんだと思って見てたら急に出てくるから、思わず、わ!って声出しちゃった」
「そんなのわたしのせいじゃないわよ。わたしだって驚いたんだから…。でも、おかげで先輩たちからたくさん声かけてもらって。ほら、これ全部チラシ。
どこに入ろうかな~」
「何言ってるの?インタビューだけでも恥ずかしいのに、サークルも入るつもりなの、ママ?」
芽衣は高校を卒業してすぐに就職をした。職場で出会った夫と結婚したのが19歳の時だった。そして芽衣が20歳になる日に皐月が生まれた。今度の5月で40歳。40は不惑、不惑にして惑わずと昔聞いたことがあるけど、毎日惑ってばかり。これじゃいけない、若い頃にできなかったことをしようと一念発起して受験勉強を始めたのだった。
夜のニュースで再度流されたインタビューを見ながら芽衣は「せっかく受かったんだし、勉強も遊びも頑張るぞ」と独りごちた。
そして、今の自分に惑いはないことに芽衣は気づいた。