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カノンとレオン4(10分間小説)

【カノンとレオンの第4弾です】
ショートショートで投稿したカノンとレオンの第4弾を書いてみました。今回はいつもより少し長めです。カノンとレオン、それぞれの恋(?)が発展しているかもしれません。よろしければ最初からお読みいただけると嬉しいです。
1〜3へのリンクは本編の下に貼ってあります。
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【本編】
ゴツン!

大きな音にビックリして、食べていた朝ごはんが喉につかえてしまった。
ゴホゴホ言いながら、音のしたテーブルの方を見たら、カノンが座ったままテーブルに頭をつけて動かない。

大変だ!

「ワンワンワン!」カノンに声をかけてみた。反応がない…


先週の土曜日、ちょうど1週間前のことだった。
ここのところ土曜の朝、カノンは早く起きれるようになっていた。ユウヤさんとベンチでゆっくり話ができるからだ。

「今度の土曜日、空いてますか?」話の途中でユウヤさんが言った。
突然の質問にカノンは一瞬目を丸くした。そしてすぐに目をキラキラさせて返事をした。
「はい空いてます!」
「それはよかった。そしたら、ランチご一緒にどうですか?」


家に着いて、僕の足を拭きながらカノンは言った。
「レオン、あれってどう思う? 嬉しいんだけど、4人でランチって、どう考えてもデートじゃないわよね…。義理チョコへのお返しみたいなものなのかな」
僕に言われても困る。素直に喜べばいいのに。カノンは複雑だ。

そんなことを言いながらもそれからの毎日、カノンは楽しそうだった。服をどうしようかって聞かれたけど、僕はいつも服を着てないからよくわからない。それにカノンは何着ててもよく似合うと僕は思っている。

明日が土曜日という金曜日の夜、カノンは服を出しては、次々と着て悩んでいた。僕は途中で眠くなってしまったけど、きっと遅くまで起きていたに違いない。カノンが部屋に戻った時の物音でちょっと目が覚めた時、チラッとテーブルの方を見たら服が1着置いてあった。ようやく明日の服は決まったみたいだった。

・・・そして、土曜日がやってきた。


カノンの様子がおかしいのは一目で気がついた。ほっぺたが赤い。
僕にご飯を出してくれた後、服を置いた席の隣に座った途端、頭からテーブルに倒れてしまった。

声をかけても返事がないから、足元でパジャマをくわえて引っ張った。
「・・あ、レオン、だいじょうぶ・・」
僕の頭を撫でてくれたけど、大丈夫じゃないのはわかった。テーブルにぶつけたおでこも赤くなっている。こんなカノンは初めてだ。カノンが病気になったことなんてないから、どうしていいかわからない。どうしようどうしよう、とカノンの足元をグルグル回っていた時、ふとひらめいた。

あ、そうだ!

急いでカノンの部屋に行った。ベッドにジャンプして棚に置いてあった写真を前足で落とした。この間4人で、カノンが作ってくれたお菓子を食べた時に撮った写真だった。写真をくわえて急いでカノンのところに戻った。写真をカノンの足元に置いた。

「レオン、なに? あ、しゃしんもってきちゃダメじゃない」
僕はワンワン吠えた。
「どうしたの? もしかしてユウヤさんにれんらくしろっていってる?」
その通り。
「せっかくさそってもらったからいくわよ。もうちょっとですこしはよくなるからだいじょうぶよ」
そう言って立とうとする。きっと無理だ、僕はパジャマをもう一度くわえて思い切り引っ張った。
「もう。わかったわよ、でんわしてみる」
僕はウーと言って、カノンがちゃんと連絡するか見ていた。

「あ、ユウヤさんですか。あさからでんわしてすみません…」
「あ、いえだいじょうぶです。ねればなおるとおもうんですけどかぜだったらうつしちゃうといけないかなっておもって」
「いえいえ、ほんとうにすみません… すごくたのしみにしていたんです」
カノンは苦しそうに話していた。ユウヤさんがなにを言ってるのか聞こえなかったけど、きっと心配してくれてるのはわかった。

「はい、ありがとうございます。いえ、レオンはだいじょうぶです。もうあさごはんもたべました」僕は途中までしか食べてない。
「はい、ほんとすみませんでした」
電話を切った後、カノンはハァーとため息をついた。

「じゃあレオン、わたしもうちょっとやすむね。ごめんね、いいこにしててね」
僕はいつもいい子にしてる。

部屋までカノンを見送ってから、僕はリビングに戻った。残った朝ごはんを食べようかと思ったけどカノンが心配でお腹が空かない。床に伏せてじっとしていた。

どれくらい時間が経っただろう。いつの間にか寝ていた。外の方で気配を感じて目が覚めた。僕は不必要に耳がいい。

コンコン  きっとユウヤさんだ! 僕は勘がいい、きっとそうだ。

カノンを起こさなきゃ。急いでカノンの部屋に行った。カノンはよく眠っている。いつもはベッドの上に乗ると怒られるけど、そんなこと言ってられないから、飛び乗った。カノンは熱かった。きっとすごい熱がありそうだ。
「なに・・? レオンだめでしょ」さっきよりひどそうだ。
僕はワンワン吠えながらベッドから飛び降りて、玄関の方を顔で指した。
「どうしたの? だれかきたの?」

カノンはゆっくり立ち上がって、パジャマのまま玄関に向かった。ドアスコープを覗いてカノンはのけぞった。アワワ、と言っている。
「どうしよう、ユウヤさんだ」僕はワンワンと吠えて、ドアを開けるよう促した。
「急にすみません。声が辛そうだったので様子を見に来ました」ユウヤさんが扉越しに言った。
「すみません・・ちょっとまってもらえますか」カノンが言うと
「顔を見て大丈夫そうだったらすぐに帰りますのでちょっと開けてください」とユウヤさんが答えた。
カノンは、どうしようどうしようと言いながら、鍵をゆっくり回した。カチャッというや否や、ユウヤさんが勢いよく扉を開けた。

ユウヤさんを見て安心したのか、カノンはフラッと前のめった。
「大丈夫ですか!」
ヒマワリちゃんを左手に抱いていたユウヤさんは、右手でカノンを抱きかかえた。
「ちょっと中に入っていいですか」
そう言ってヒマワリちゃんを一旦玄関に放ち、両手でカノンの肩を抱えてユウヤさんはカノンをリビングまで連れて行った。ヒマワリちゃんと僕は並んで後について行った。

カノンの家に男の人が来たのはこれが2人目だ。犬はヒマワリちゃんが初めてだ。

「あ、すみません、ちらかっていて。こんなかっこうで。はずかしい・・」リビングに入るやカノンはテーブルの服を慌てて手に取って顔を覆うように言った。
「ホントすみません、心配だったもので、失礼とは思いながら来てしまいました」ユウヤさんがすまなそうに言う。
「熱ありそうですね。測りましたか?一応僕体温計持ってきたんですけど」そう言ってリュックから体温計を取り出した。
「わたし、かぜとかひいたこともなくて、そういうのがないんです。すみません・・」カノンはユウヤさんから体温計を借りて測った。
ピピっと電子音がしてカノンは体温計を取り出した。ユウヤさんも覗き込むように見た。
「大変だ39度もあるじゃないですか!病院に行きましょう!」
「ねてればなおりとおもいます…」
「ダメです!今すぐ行きましょう!」ユウヤさんはすぐにスマホで近くの病院を探して電話してくれた。
「今来れば診てくれると言う病院が見つかりました、行きましょう」
「はい・・ありがどうございます・・」心なしかカノンはホッとした様子だった。
「ちょっときがえてきますので。かみもぼさぼさではずかしい」
「そんなこと気にしないで。着替えるの待ってます」

カノンはパジャマをトレーナーとジャージに着替えに行った。10分ほどして戻ってきた時には、寝癖もなくなっていた。そんなこと考えなくていいのに、僕もユウヤさんと同じことを思った。

「じゃあ行きましょうか」ユウヤさんはそう言いながら、カノンに背を向けて少し屈んだ。
「え? あ、そんな、だいじょうぶです、じぶんであるけます」
「フラフラしてたじゃないですか、気にしないでください。こう見えて僕体力ありますから」
こう見えるもなにも、ユウヤさんは見るからに体力があって頼りがいがありそうだ。
「ほんとですか。ではおことばにあまえて」と言いながらカノンはユウヤさんにおんぶされた。

「ヒマワリ、レオン、じゃあカノンさんを病院に連れて行くから、ちょっとだけ2人で待っててもらえるかな」

え?
2人で? 

着いて行く気だった僕は唖然とした。
ワンワンワンワンワン!ヒマワリちゃんは、カノンをおぶったユウヤさんの後ろ姿にけたたましく吠えた。

ユウヤさんは僕たちの様子を気にしながらも、カノンに保険証の場所を聞いて、自分のリュックを持って、テキパキと準備してカノンをおぶって出て行ってしまった。

ヒマワリちゃんは最後まで着いて行こうとしたけど、ユウヤさんがリュックから出したおやつをリビングの方に投げられて、それを取りに行った隙に2人に出て行かれてしまった。おやつを食べて玄関に戻ったヒマワリちゃんはしばらく吠えていたけど、しばらくして諦めたのかトボトボとリビングにやってきた。

さてどうしよう。僕は犬と家の中にいるなんてことなかったから、なにしていいかわからない。しかもヒマワリちゃんだ。とりあえず、僕が途中までしか食べれなかった朝ごはんを出してみた。全く見向きもされなかった。逆に僕が急にお腹減ってきたので食べることにした。

ヒマワリちゃんはキョロキョロしていた。人のうちだから珍しいみたいだ。僕がいつも入っているゲージにも興味を持っていた。入りたいのかな、と思ったから、どうぞって扉開けてあげたけど入らなかった。後は僕にできることもないから、放っておくことにした。

しばらく、あちこちウロウロして飽きたのか、僕が伏せている近くにやってきて、お座りした。今は冬、床暖房が気持ちいいからカノンがいない時、僕は大体伏せている。ヒマワリちゃんがちゃんとお座りすることに感心した。ヒマワリちゃんのシャンとした姿を見ていたら、急に恥ずかしくなって、僕もお座りすることにした。2人で向き合ってお座りしていたら、カノンと散歩に行く時に通る神社にこんなのあったなって思い出した。

しばらく座っていたけど、やっぱり疲れたから伏せた。なんだか眠くなって大きなあくびをしたらヒマワリちゃんと目が合った。僕のあくび顔を見てくすくす笑っていた。ヒマワリちゃんの笑顔を見るの2回目だ。最初は先月カノンのお菓子をみんなで食べた時だ。あの時の写真が今、テーブルの上に置かれている。笑ってる方が可愛いのに。今日もそう思った。

しばらくしたらヒマワリちゃんも、眠くなったのか伏せた。床暖房の力には勝てなかったみたいだ。2人ともいつの間にか寝てしまっていた。

ポンポンと頭を叩かれた。ヒマワリちゃんに起こされた。目が覚めてみると玄関の方から気配を感じた。

帰ってきた! ガチャガチャと鍵が回る音がして扉が開いた。

「ただいま~」カノンだ! 声が元気になってる! ヒマワリちゃんと玄関に走って行く。
「ヒマワリ、レオン、お待たせしました。いい子にしてた?」ユウヤさんが優しく言った。
「ワンワン!」僕たちは尻尾を振りながら、声を揃えて返事をした。
「あら、すっかり仲良しね」カノンが僕の頭を撫でながら言った。

「カノンさんは、知恵熱の一種だったみたいで、昨日楽しみすぎて興奮状態が続いて熱が出たんだって。点滴をしてもらったらすっかり元気になったよ。レオン、もう安心していいよ」ユウヤさんが僕に説明してくれたけど、難しくてさっぱりわからない。
とにかくカノンが元気になってよかった。

「ほんと恥ずかしい・・ 遠足の前の日の子どもみたいで・・」
「そんなに楽しみにしてくれていて嬉しかったですよ」
「そんな・・」
あれ、カノンの顔がまた赤くなった。大丈夫かな。

「今日行けなかったランチはまた今度行こうね」ユウヤさんは僕たちの頭を撫でながら言った。
僕たちは、揃ってワン!と返事をした。

続いてカノンの方を向いて言った。
「今日はカノンさんの熱が下がったばかりだから、何か取って一緒に食べると言うのはどうですか?」
「え、いいんですか?もちろんです!狭いですけど」
「ありがとうございます。ヒマワリよかったな、レオンと一緒に食事だぞ」

え? 思わずヒマワリちゃんを見た。いつものすまし顔だった。
なんだ、やっぱり。

ユウヤさんは朝と同じようにテキパキと動いてくれた。カノンに食べたいのを聞いて、調べてデリバリーの注文をしてくれた。冷蔵庫を見て、飲み物とかを買いに行くと言ってくれた。ヒマワリちゃんと僕も連れて行ってくれた。近くだったけど今日は散歩できてなかったから気持ちよかった。カノンはテーブルの準備があるからと留守番だった。

帰り道、僕は、隣のヒマワリちゃんと後ろで僕のリードを持っているユウヤさんを交互にチラチラ見ながら、家で待ってるカノンを想像したら、なんかこういうのも家族みたいでいいな、って思った。



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