カーボーイリスナー的問題意識の芽生え

皆さん、こんにちは。堅い話をします。

連日紙面やニュース番組などで、アメリカでの「Black lives matter」と呼ばれる黒人差別反対を叫ぶ抗議運動の様子が大きく取り上げられています。
こういった報道を見ていると、少し前にラジオリスナーの間でも「差別」という言葉が大きなトピックとなったことが思い出されます。
ナインティナインの岡村さんがオールナイトニッポンにて性風俗について発言した内容が不適切ではないかと、普段深夜ラジオを聴かない人たちまで巻き込んで大きな話題に発展したという出来事です。

その後、問題となる発言があった次の放送回にて、岡村さんは発言内容を謝罪し、番組を離れていた相方の矢部さんが岡村さん、スタッフ、そしてリスナーに叱咤激励を送るという展開になったわけですが、この放送を受けて「火曜JUNK爆笑問題カーボーイ」内で爆笑問題太田さんが語った内容もまた話題を呼びました。

太田さんは、この問題を、現代社会が長年抱えてきた若者や女性の職業選択の問題や貧困問題など、社会の構造的な課題の一部として捉え、またこのような社会を築いてきた自らや岡村さんの世代とその下の若い世代との問題意識の隔たりが生んだ現象だと捉えて語りました。
太田さんが語ったこの内容には、私も含めてハッとさせられた人も多かったはずです。
このカーボーイの放送があるまでの期間、この問題については、

・岡村さん個人の意識の問題として批判する意見
・「性風俗」という産業に対する個々の価値観にフォーカスした意見(「岡村さんの発言を差別的だと言う人こそ職業差別している」とか「性風俗に対してポジティブな感情を持って働いている女性もいる」、「岡村さんは風俗嬢をリスペクトしている」etc.)
・コロナ禍でナーバスになっている人が多いのだから発言に注意すべきという意見
・放送の一部分だけを切り取って聴いたり、普段リスナーでない人が聴くから問題があるように聴こえるのだという意見

などなど、問題の論点が個々人の感覚的な規模に矮小化されていたり、時期的、短期的な問題として捉えていたりする意見が多かったように感じます。実際、私もそうでした。
しかし、太田さんが語った内容は違いました。この問題は、社会全体の構造上の歪から生まれた問題であり、その歪を生み出している社会の一員であるにも関らず無関心な人たちと、その歪に苦しむ人たちの闘争でもあり、最近急に湧き出したような問題ではなく、ずっとくすぶり続けていた問題であったのだということを気づかせてくれました。
そして、お互いの立場や伝えたかった思いを理解すれば、分かり合えない関係ではないはずだということを、しっかりと時間をかけて説明してくれました。

この気づきは、現在アメリカで起こっている人種差別の問題にも通じているのではないかとつい考えてしまいます。
今回のデモ活動のきっかけは、一人の黒人男性が白人警官に殺されたという一つの事件ではありますが、今声を上げている人たちの怒りの感情は、この事件だけが根源となっているわけではないはずです。きっと、長く歴史的に虐げられてきた黒人社会全体の怒りであり、構造的に貧困状態から抜け出せない仕組みになってしまっている社会全体への怒りなのだと思います。

正直、私自身、アメリカの歴史や社会について詳しいわけではないので分からないことばかりです。噂レベルも含め、日々様々な情報が入ってきて何を信じていいのか分かりません。
だからこそ、目の前の情報だけに囚われず、根本の構造から捉え、長期的な視点を持って理解するきっかけとしていかなければならないとも思います。これは人種差別の問題以外にも共通していえることです。

私は、あの日の爆笑問題カーボーイから、無理解や無関心は隔たりを深め、逆に、理解や共感は溝を埋めるきっかけになるということを感じ取りました。
そして、あの時、矢部さんは、岡村さんだけでなく、スタッフやリスナーにもメッセージを伝えられました。
岡村さんの発言が問題化した経緯や太田さんの問題に対する捉え方から学んだ教訓をリスナーとして活かしていくことは、番組や深夜ラジオというものの在り方自体が危ぶまれたあのような事態が、いつかまた繰り返されてしまうことを防ぐ一つのきっかけとなるかもしれません。

ラジオに関わらず、自らの大切にしている文化を守るためにも、自分ができることをしていきたいと思います。


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