場づくりへの憧れと億劫。 〜『つながるカフェ』より
山納洋さんの『つながるカフェ コミュニティの〈場〉をつくる方法』を読みました。
著者 山納さんは、大阪ガスへ入社して、扇町ミュージアムスクエア(OMS)、メビック扇町などのプロデュース業務を実施し、その後 地域活性化や社会貢献事業に携わってきた方。個人としても、common cafe など数多くの場のプロデュースに関わっておられます。
憧れと億劫
そんな場づくり経験豊富な山納さんが「はじめに」に書いた文中に、「おや?」と感じる箇所がありました。以下に引用します(太字は本note用にほどこしたもの)
人と人とが出会い、刺激を受け、そこから何かが生まれる。そんな場所への憧れから、僕はこれらの取り組みを続けてきました。
一方で、僕は今も、人との出会いをいくらか億劫に感じています。そう、矛盾しているのです。だからこそ、それでも人がつながるとはどういうことだろう、どうすればそういう場をつくれるのだろう、僕にとって“場づくり”とは、そういうアンビバレントな問いとしてありました。
(p.4-5)
“場づくり” の価値を心から信じ、その実践に関わっていながらも、どこかで億劫さを感じる。カフェにかぎらず人が集まる場(コミュニティ)を運営している人は、この感覚に共感するのではないでしょうか。
場づくりに関する問いかけ
本書「第4章 創発が起こる場としてのカフェ」には、いくつかの気になる問いかけが登場します。
・開かれつつも魅力を失わない場は、どうしたらつくれるのだろうか(p.153)
・創発の実力がある場は、どうすればつくれるのだろう(p.154)
・出入りする人たちが、そこに「意味」を見出し続けることのできる場は、どうすればつくれるのだろうか (p.157)
3章までで紹介された多くの場を運営している人たちとの対話、そして山納さん自身の実験と思索の結果、これらの問いへのヒントとして見えてきたのが「シクミ」と「ナカミ」への着眼でした。
早道は “ナカミ”の充実
p.158 では、シクミとナカミについて、こんな風に語られています。
僕がそれまで関わってきた、劇場やインキュベーション、サロン、日替わり店主カフェは、才能ある人、面白い人が集まってくるシクミです。そういう人たちは、人を魅了するナカミをつくりだします。
僕は長らく、シクミづくりに自分の資源を投入し続けてきたのですが、そのうちに自分を留守にしている感覚を強く持つようになりました。そして自分の“ナカミ”を充実させることが場づくりの早道なのではないかと思うようになりました。
このあと、ナカミ充実のための活動が怒涛のごとく登場するのですが、すべてを引用することはできません。僕が気になったアイデアのエッセンスだけを挙げておきます。
●「博覧強記になる」ための会を継続開催する
●人と出会うことを目的とせず、知識・情報・嗜好を求めてつながる会とする
●「スゴイ人の話を聞く」のではなく「みなでナカミを持ち寄る」(20名前後で集まり、話題提供後に全員が一言しゃべる構成)
●「場への貢献」を引き出すファシリテーション
●創発を促すのは「弱い情報」(困った、必要だができない 等)
気になった方はぜひ本書を手にとってみてください。
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本書は、Facebook上でのオンライン読書会「【CMC読書会】コミュニティ運営のヒントを本から学ぼう!」の第21回 課題図書に設定したことで読了できました。
自分の“ナカミ” を充実させる活動の1つとして、今後も隔月開催ペースで続けていくつもりです。ご興味ある方は、気軽に覗いてみてください。