生命をかけて次の世代に伝える大切なこと 〜『モリー先生との火曜日』『君たちはどう生きるか』『留魂録』
人生100年時代。すでに聞き慣れた言葉になりました。
平均寿命は伸びつづけていますが、当然この世の全員が100歳まで生きるわけではありません。人はいつかその生を終える日を迎えます。
つい先日、僕より十歳も若い仲間がこの世から旅立っていきました。
お通夜から帰宅して本棚を眺めるうち、自然と手が伸びた幾つかの本があります。
共通点は、生命をかけて次の世代に大切なことを伝える姿でした。
大切なことを次の世代へ
本記事では次の世代へ送るメッセージが印象的な3冊のうち、記録しておきたい文章をそれぞれ3つずつ抜書きします。(太字は特に重要だと感じた箇所)
『モリー先生との火曜日』/モリー先生→ミッチ
大学時代の恩師モリーがALSに冒されていることを、偶然観たテレビ番組インタビューで知ったミッチ。火曜日ごとにモリー先生に会いにいくことになり、その“個人授業”から多くの言葉を受け取ります。
残された人、託された人に対しても、重くならないよう、支えになるような言葉を選ぶモリー先生。その思いやりの深さを感じます。
(参考) 2019年に投稿した関連note
『君たちはどう生きるか』/叔父さん→コペル君
吉野源三郎さんの小説『君たちはどう生きるか』。1937年7月に新潮社「日本少国民文庫」の一冊として出版されたこの本、2017年に羽賀翔一さんが漫画化したことで話題になりました。(この夏に、宮崎駿監督がタイトルのみ拝借した映画を公開するというニュースもありますね)
本書は、中学二年生の主人公 本田潤一くん(愛称:コペル君)が日常生活や友人関係のなかで悩み葛藤しながら気づいたことが描かれています。作品中には登場人物である叔父さんがコペル君に宛ててこっそりしたためていく「おじさんノート」が出てきます。 コペル君が将来読むことを前提として、父親がわりであるおじさんが書いた文章です。ここではその中から3箇所選んでご紹介します。
この本自体はフィクションです。とはいえ、戦時体制が進んでいくなか、強くあれ、勇ましくあれ、という世間の風潮に一石を投じて弱い心や葛藤する姿を描いたストーリーはかなり勇気のいるものだったはず。まさに生命をかけて未来を担う若者に託したメッセージだと感じます。
(参考) 2015年に書いたブログ記事
『留魂録』/吉田松陰→誠の心を受け継ぐ人
吉田松陰といえば松下村塾。明治維新や明治政府で活躍する多くの人物を輩出したことで有名ですよね。一方、幕末の黒船来航で圧倒的な国力の差に松陰が驚愕し、西洋を学ぶため密航を試みたことはどこまで知られているでしょうか。僕は四十を過ぎるまで知りませんでした。
『[新訳] 留魂録』(PHP研究所) は、そんな波瀾万丈で太く短い30年の人生を生き切った松陰の言葉を集めたもの。獄中で書き残した「留魂録」のほか、手紙や小文として書いた文章を現代語訳して解説付きで掲載している一冊です。
本書の中から次世代を強く意識して書かれた3つの文章をピックアップしました。
「生きて大業をやりとげる見込みがあるなら、迷わず生きろ」というメッセージは力強いですね。幕末と現代では「生・死」についての感覚が異なっているものの、次の世代へ向けて大切なことを行動で示し、誠の心を広げていくんだ!という強い想いを感じました。
(参考)本書に出逢った人間塾読書会を紹介した記事
おわりに
大事な人へ「どうしても伝えたい!」という想いで書かれた言葉には、読んでいて大きな力を感じます。今の世に住む身として、これら先人の遺した言葉や想いを受け取って、少しでも次の世代へ繋げていきたい。そう思える体験でした。
なお、3つ目に紹介した『[新訳]留魂録』から学ぶ読書会を 7月29日(土)午後に開催予定です。午前中には世田谷の松陰神社・豪徳寺を参拝するオプションツアーも予定しているので、ご興味がある方はあわせてご参加ください。
(おまけ)高校生だった僕が父から受け取った手紙
当時元気だった父なので、生命をかけて書いた言葉ではないはずです。それでも、機会をとらえて言葉にしたため、贈ってくれたことを今になって大いに感謝しています。