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エピローグ:常滑のタイルテラスとドーナツカフェ


そうか、杉江製陶所のタイル救出プロジェクトからもう2年経ったのか。あの時は八角煙突の中にも潜らせてもらったなあ…。





2024年8月、私は「ちかつの窯」にいた。

「ちかつの窯」とは、とこなめ地域活動支援センター(障がいのある方の余暇活動や地域交流をサポートする常滑市の組織)とワークセンターかじま(就労支援継続B型事業所)が運営するドーナツカフェのことだ。


普段のワークセンターかじまでは、利用者さんの作業内容として宅配弁当事業、企業から受託した自動車部品組み立て、INAXライブミュージアム向けの泥団子作り、タイル輸送用の梱包材、巾着裁縫などを制作している。しかしスタッフさんによれば、それらだけでは障がい者福祉施設として地域住民との関わり方が充分ではないと感じていたそうだ。

そこで福祉を自然な形で身近なものに感じてもらうために、また誰もが大らかに存在を認め合える地域社会とするために”福祉をひらく!” をスローガンに掲げ、美味しいドーナツが食べられるカフェ「ちかつの窯」をつくることにした。

“窯”という言葉には元来、やきものなどを焼いたり固めるための構築物としての意味に加え、「仲間」や「味方」という意味が含まれています。 やきものの町に集う人々が、年齢、性別、障がいの有無に関係なく共同して暮らしたり交流する、その起点となる場所にすべく「ちかつの窯」と名づけました。 地域に愛され、福祉が“自然に”身近に感じられ、ちかつの窯がみなさんの心の拠り所となれるよう精進して参ります。末長くご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

〈企画・運営〉
社会福祉法人 常滑市社会福祉協議会
ワークセンターかじま/とこなめ地域活動支援センター


カフェ作りにはワークセンターかじまの皆さんの他に、地元の人たちも参加した。

建物の設計や施工も、

フードメニューの開発・監修も、

店内のデザインやサインも、

看板や足元の野焼きドーナツも、

グッズ製作指導も、

「窯ねこ」のイラストも、


全て地元の知多半島で活動されている方々の協力によるものだ。



そして"地元"で忘れてならないものがもう一つある。
それはタイルテラス!
そう、常滑の杉江製陶所から救出されたタイルを使ったテラスがあるのだ。



遡ること2022年5月、杉江製陶所の閉鎖に伴い、1920年代につくられた美しいタイルが、有志とクラウドファンディングにより救出された。


同じ年の8月〜10月には「95年前のタイル見本室再現」として、とこなめ陶の森資料館にて暫定的に展示された。



noteにも書いたが、当時私は救出されたタイルが資料館に展示されることは悪くはないが、「飾りだけではなく実用的にも使われるといいなあ」と思っていた。
その後、様々の方の取り組みにより、いくつかのタイルは実用的に使われることになったそうだ。今回のタイルもその一つ。事務所の床一面を飾っていたあのタイルである。

実はこのタイルテラスは、一足先の2023年3月にワークセンターかじまの中庭に完成していた。私も12月に訪れたが、生憎の天候と寒さもあり、また人が居なかったこともあってか、殺風景な中に少々寂しげに見えた。使われているイメージも湧かなかった。


しかし今回はそのイメージは明確だ。
ドーナツカフェはタイルテラスの隣につくられている。


猛暑のこの日はともかく、秋や春の天気が良い日には、このテラスに座ってコーヒーでも飲みながらドーナツを食べることも悪くないだろう。いや、最高に良いに決まっている。


INAXライブミュージアムからも遠くないこのドーナツカフェ、常滑にタイル巡りに訪れた際には是非立ち寄ってみてはいかがでしょう?



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