![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46422949/rectangle_large_type_2_bdcc2a5a203034b4f488104aaac463ef.jpg?width=1200)
【建築】休日を過ごすならグレイス・ファームズ(SANAA)
早朝のグランド・セントラル駅に人気は少なかった。本来であれば荘厳な建築様式のこの駅をゆっくり見学したかったが、それは改めてにしよう。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46343688/picture_pc_cd4c190d1b91706d3e5c7622eeb6d5aa.jpg?width=1200)
コンコースを通り抜けると、私は足早に電車に乗り込んだ。目的地はNew Canaanである。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46343704/picture_pc_37c9d10e426e5d658507805262b40bb1.jpg?width=1200)
コネチカット州のNew Canaanは多くの富裕層が住む街である。建築的にはフィリップ・ジョンソンの自邸ガラスの家が有名であるが、他にも著名な建築家による住宅が並んでいる。
このNew Canaanに2015年にオープンしたのが、SANAAの設計によるグレイス・ファームズ(Grace Farms)だ。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46344455/picture_pc_488659038d4a81aa02f639f45511395f.jpg?width=1200)
グレイス・ファームズは地域のコミュニティセンターである。
地元の教会が運営しており、来訪者が「自然を体験し、アートに出会い、正義を追求し、コミュニティを育成し、信仰を探求できる」ことを目的としている。
と少々難しく書いたが、実際には信仰に関係なく誰でも気軽に訪れることができる。カフェでコーヒーを飲むのも良し、ノンビリ散歩するのも良し、イベントに参加するのも良し、もちろんケンチクだけ見学する(←私のこと)のも良しだ。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46422216/picture_pc_04887198c0972a6cb3d8db043368f853.jpg?width=1200)
起伏のある土地に、集会場、カフェ、図書室、体育館といった施設が分棟して配置されている。それらを回廊でつないでいるのだが、この地域は木造文化の歴史があるらしく、それを反映して屋根は木造(柱はスチールだが)としている。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46395460/picture_pc_a394914c2b89ff346909bb9c0bb4f848.jpg?width=1200)
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46427937/picture_pc_1a44cd8885a5e0a29974d20e9f9e21eb.jpg?width=1200)
上から見ると蛇行した川のようにも見えるため、この建物は「River Building」と呼ばれている。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46349110/picture_pc_de352b44af22e52ca93ad08e31957f41.jpg?width=1200)
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46395525/picture_pc_4b71cb06fda54076d059f70a0bb07b92.jpg?width=1200)
敷地は80エーカーもあるが、そのほとんどは森、牧草地、池、湿地として保護されていた。そうした自然の風景に馴染むように建物も地形に沿って建てられ、高さも抑えられている。
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46424443/picture_pc_b9f0a1140dc198b2b010fe0fd8261ee6.jpg?width=1200)
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46425571/picture_pc_c9b5e18f51b53d03a7f643d5359fbf13.jpg?width=1200)
各棟はSANAAらしい繊細なカーブを描く曲面ガラスが使われている。製作も施工も大変そう。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46425536/picture_pc_35f93a21374e15f381ab9c1078ca73dd.jpg?width=1200)
回廊にあるステンレス磨き仕上げの椅子は、もちろんSANAAによるデザイン。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46466765/picture_pc_5f10d306485dac4ad51f82b786e9236d.jpg?width=1200)
一番高い場所にある施設はSanctuaryと呼ばれる700人収容の礼拝堂。大人数のイベントにも使用される多目的ホールとしての役割もある。天井は低いが柱のない広い空間に、傾斜する地形を利用して座席が配置されている。
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46400691/picture_pc_ae6c5676ea5d33998cb001117c227104.jpg?width=1200)
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46466436/picture_pc_a976d35c7e55f87b78a69a5caa8dd5f7.jpg?width=1200)
Commonsは300人まで対応できるコミュニティスペース。イベントがない時は、ドリンクや軽食が購入可能なカフェとなっている。私もここで一休み。テーブルは、建設にあたって伐採された敷地内の木から作られている。
![画像15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46400809/picture_pc_02ed6bee98b64365d16812a6a51af10d.jpg?width=1200)
この部屋に限ったことではないが、全面がガラスなので、室内にいても周りの緑が目に入り、光を感じることが出来てとても居心地が良い。
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46426678/picture_pc_803673af90638dd861cc2bcf2c03b71c.jpg?width=1200)
Pavilionは落ち着きのある応接スペースである。来訪者がリラックスして過ごしたり、スタッフがおもてなしをする時に使われるらしい。
![画像17](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46453834/picture_pc_725eea4b0816a21b25e0e5ef6210ea27.jpg?width=1200)
![画像18](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46400913/picture_pc_0285b1e3a56fef5ab45ab1dbaa58c006.jpg?width=1200)
椅子はアルネ・ヤコブセンのスワンチェア。(見学の時は気付かなかった...)
![画像19](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46427204/picture_pc_d3a0ef5dab20cf2f6c90a6897d49072f.jpg?width=1200)
Courtは体育館。
![画像20](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46401005/picture_pc_1daf7c0af6041c8663ba40057eb0f577.jpg?width=1200)
他の施設と屋根の高さを揃えるために掘り下げて建てられている。
![画像21](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46401042/picture_pc_5d6250a73ff155501e2f740f9d60ff59.jpg?width=1200)
![画像22](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46423987/picture_pc_ba4ee1cf4f87ecc0335175c9a51f9d66.jpg?width=1200)
"建築”というものは周辺の環境も考慮しながら計画されるものだと思うが、このグレイス・ファームズも建物が目立ち過ぎることなく美しい自然の中におさまり、景観に上手く融合した建築であった。カフェで一休みしているときに、隣り合わせた地元のおばさんが「It's beautiful, isn't it ?」と話しかけてきたのだが、まさにそのことを表していると思う。
また実際にココを訪れた人たちが、老若男女問わず、散歩したり、広場で遊んだり、イベントに参加したりと絵にかいたような休日を過ごしていたことも印象的だった。景観・建築のみならず、運営とも一体となっているのだ。
”建築”が設計時の意図通り使われている素晴らしい事例だと思う。
最後にどうでもいい話。
実は外観だけでも先に見学しようと早めに現地に到着した。しかしフェンスとゲートに囲まれ、チラリとも見ることは出来なかった。開館まで1時間、周りに時間をつぶすような場所はない。
困った私を見かねて、駅からここまで乗せてくれたタクシーの運ちゃんが近所のスーパーマーケットを教えてくれたのだが、これが映画に出てきそうな「場末感」溢れるお店であった。映画だったら間違いなく強盗に襲われる場面だ。
グレイス・ファームズに負けず劣らず、私の中ではかなり心に残った”建築”であった。(写真は後日Google Mapから拾ったもの)
![画像23](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46454433/picture_pc_7beaa8602567e8b5d6b73c1bb5e7664b.png?width=1200)
![画像24](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46423901/picture_pc_8cadb1b98c984eb0eda106dd99fa9930.jpg?width=1200)