読む『小説家Z』 水野良樹×加賀翔 第4回:やらざるを得ないタイプの人間。
「ちょっとおかしいぞ、あの水野ってひと」
水野:リンクするのかわからないけど。僕もなんかやってないとダメな人間なんですね。
加賀:嬉しいですね。絶対にリンクする。
水野:「なんかやってないと俺はダメなんだ」って思っちゃうタイプ。練習するとか、本を読むとか、「何か行動を起こしてないとダメだろう」っていう強迫観念があることに最近気づいたんですよ。
加賀:でもちょっと水野さんを見ていて、すごすぎるとは思っているんですよ。その…量が(笑)。
水野:(笑)。
加賀:量も質も。早いしすごすぎる。勝手に意識しているときがあって、「ちょっとおかしいぞ、あの水野ってひと」って(笑)。
水野:恥ずかしいけど、めっちゃ嬉しい。僕、「全然やれてない」って気持ちなんですよ。ずっと。ずーっと。で、実際やれてないと思うの。誰がなんと言おうと、やれてないと思うんです。
加賀:はい。
水野:だけど僕、 9年前くらいに結婚したんですよね。それで、ひとと住むようになるじゃないですか。
加賀:あぁー、はい。
水野:妻は普通にテレビを観ていて。家だから当たり前ですよね。ドラマとか好きだから、ドラマをゆっくり観ている。そういう姿を見たとき、「別に人間って…」。……これ絶対、怒られるな(笑)やめとこ。
加賀:いやいや今、僕も同じこと思って笑っちゃった。
水野:逆に僕はすっごく怒られたんですよ。「何かをしようとしすぎ!あなたは!」と。その通りだなって。
加賀:わかります。
水野:いまだに言われるんですけど、「そんなみんな頑張らないよ!」って。
加賀:めちゃくちゃツボに入っています。僕も近いことを思うんですよ。で、「素敵だな」とも思うんですよ。テレビを観る、ゆっくりする、ゴロゴロする。当たり前なんですけど、そういう光景を見て、感動とかする。
水野:はい。ほんとうに。これ、まじで。
加賀:でも、「テレビ観ながら、スクワットできるじゃん」って(笑)。
水野:厳しい(笑)。
加賀:会議中とかも、ジッと座っているときがあるんですけど、「立ったらいいじゃん」って。
水野:言っちゃうんですね。
加賀:言っちゃうんですよ。
水野:「ようこそ、こちらへ」って感じ(笑)。書かざるを得ないですよね。何かをやらざるを得ない。
加賀:そうですね。本当にやらざるを得ない。
水野:そういうタイプの人間なんだと思います、お互い。
どこにも属せてない寂しさ。
加賀:前に、芸人たちがいっぱいいる楽屋で、「借金がすごくて」みたいな話をしている先輩がいたんですね。で、僕はツッコミのつもりで、「そんな借金がって言うんだったら、死ぬほどバイトしたらいいじゃないですか!今いろいろあるし」って。そうしたら、シーンってなって。芸人たちが引き攣っていて。
水野:それはないだろと。その正論を投げちゃいかんぞと。
加賀:「そんな冷めること言うな」みたいな。僕は高校中退しているし、イレギュラーな側だと思っていたんですけど、意外とどこにも属せてない寂しさみたいなものがあって。だから今日こういう話をできて嬉しいです。
水野:僕は逆に、「マジョリティーの側にいる」ってずっと言われ続けてきたんですよ。普通に学校に行って。いきものがかりも、さっきちょっと言っていただいたように、まっすぐ歌うタイプのグループで。“みんなが聴く”モード感、“みんながイコール幸せ”みたいなところを真っすぐ通ってきたひとだって。
加賀:はい。
水野:だけど僕個人はずっと、「どこにも居場所がなかった」って感覚でいるんですよ。その寂しさがあるから、逆回転して、ああいうポップなグループにいったと、自分なりに解釈していて。友だちがいなかったわけではないんだけど、なかなかコミュニケーションも取れないし、自分がやることってあんまり理解されないし。
加賀:ちょっと…たまらないですねぇ。
水野:だから、通った道は違うけれど、加賀さんと共通点があるんじゃないかなってすごく思います。あと、この話よくHIROBAでするんですけど、1~2年前、さすがに仕事量が多すぎちゃって、「休んだほうがいいですよ」ってスタッフの方に言われて。自分もそう思っていたから、予定を切ってもらって、2週間ぐらい休みをもらったんですよ。
加賀:あぁー。
水野:締め切りとかもなくて、何もしない。…ってなったら、病んじゃったんですよ。
加賀:(笑)。
水野:疲れているときの病みより、すごく深い病みに落ちてしまったんです。
加賀:めっちゃわかる感じがする。
水野:「止まったらいかん、これは危険だ」ってことに気づいて。何かやっていることが自分を繋いでいたんだって。それ以降は、もちろん体力的にヤバいときは休むようにしているけど、なるべく行動が途絶えないようにして、自分を保っているんですよ。多分、加賀さんも近いんじゃないかな。
まったく同じスマートウォッチ。
加賀:水野さんさっき、「全然やれてないと思う」っておっしゃっていたじゃないですか。でも本当は、もっとやってないやつがゴロゴロいるんですよ! これが難しくて。もっとやってないやつがゴロゴロいるから、「全然やってない」わけではない。ただ、たとえば水野さん、もっと上手に泳げるようになりたいと思ったら、週1スイミングとかでは済まないと思うんですよ。
水野:(笑)。
加賀:だって、泳げるようになりたいって目標があるから。多分、「週2~3通うかな」とか決められると思うんですけど。「いや、週1でいいじゃん」って言ってくるひとに対して、ドキッっとしちゃうというか。
水野:週1がいちばん難しい。
加賀:難しいですよね! 意味わからないじゃないですか。続けられないし。「もっと細かくいっぱいやったほうがいいのに」って思っちゃう。
水野:言っちゃえば最近、健康のために走っているんですよね。ちょっとハマっちゃって。
加賀:わかります。
水野:毎日走っちゃっているんです。今日も7キロ。なんなら先週、1週間ぜんぶ走っていて。お願いしているトレーナーさんからは、「あんまりやりすぎるのもよくないですよ。休まなきゃだめですよ」って言われるんですけど。毎日やる感じにならないと持続しない。で、たまたま、昨日僕、人間ドックだったんですよ。
加賀:あ、そうなんですか。
水野:前日からご飯とか抑えなきゃいけなくて。この2日間走ってなかったから、なんかもうすごく…。
加賀:ウズウズして(笑)。
水野:だからもう、やるってなったら、週1とか続かないんですよ。「あ、またこの曜日に走らなきゃいけない」って思うのがもうツラくて。
加賀:めちゃくちゃわかります。
水野:だから基本週5で、必ず7キロ以上。
加賀:ははは。
水野:近くの公園の外周を走っているんですけど。外周を1回まわると大体1キロぐらいなんです。で、たとえば今日は1周多くまわって、8キロ走ったとしますよ。そうするとね、もう次の日は…9キロ走らないと。
加賀:7キロでいいのにね(笑)。
水野:最初、7キロでいいと思っていたのに、たまたま1周多く走っちゃった日から、「いや、俺は次のステップに進まなきゃ」みたいな(笑)逆に「今日はちょっと疲れているし、6キロでいいか」って1回でもやっちゃうと、急に、「あー、やっぱ俺、ダメかもしれない」って。
加賀:それで言うと僕も、毎日歩いていて。水野さん、左手にスマートウォッチつけているじゃないですか。まったく同じ(笑)。
水野:まったく同じだわ! 読者のみなさんに説明すると、いちばん有名なスマートウォッチで、画面上にどれぐらい歩いたかとか、走ったかとかがすぐに見れるようにカスタマイズできるもの。それを今、加賀さんも僕も二人ともつけています(笑)
加賀:ふたりともスマートウォッチの待ち受けに数値が表示されていて。
水野:今日、小説の話をしていたはずなのに(笑)
加賀:僕も毎日、12000歩からって決めて歩いていて。で、1年間のトータルの歩数というか、距離を直線距離に直したら、どれぐらい歩いたんだろうと思って、地図アプリみたいなやつに直線をあてがってみたら、新宿からモンゴルまで歩いていたんですよ(笑)。
水野:伊能忠敬か(笑)!すげぇなぁ!
加賀:水野さんもモンゴルくらいは余裕ですよ。
水野:それ調べちゃうかもなぁ。いやぁ…、時間が来ちゃったんですけど。もう止まらないですね。これはちょっとまたいつか続きを。
加賀:ぜひ。本当に普通にお話したいです。
水野:なんならもう吉澤嘉代子さんも来ていただいて、司会になっていただいて。
加賀:聞いてもらって。
水野:でも、よりわかった気もします。この『おおあんごう』を読んだときに感じた人間味であったり。みなさんも読んで感じる部分はあると思うんですけど、その理由みたいなところを感じた1時間で。
加賀:僕も気になっていた、「水野さんってどんなひとなんだろう」っていうのが、ちょっとわかりました。いちばん聞けて嬉しかったこともありましたし。
水野:またぜひ、よろしくお願いします。そんなわけで、小説家Zゲスト、加賀翔さんにお越しいただきました。ありがとうございました!
加賀:ありがとうございました!
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