読む『対談Q』 水野良樹×佐藤満春 第4回:水野さんとは頭で考えていたことがほぼ一緒の20何年でした。
仕事の反省で頭がいっぱいになって帰る。
水野:カメラを向けられたり、役割を与えられたりすると、すごくちゃんと喋れません?
佐藤:わかります、わかります。
水野:終わると、急に人見知りがボンッ!と出ません?
佐藤:そうですね。
水野:でも、それでいいんですよ、僕は。
佐藤:だから理想的な空間でもありますよね。話していい場所をもらえるこういうところは。
水野:僕、このHIROBAの対談Qでいろんな方を呼んでいるんですけど、まさにそれなんですよね。ちゃんと場を用意しないと、怖くて喋れないっていうか。
佐藤:今までどんな方が対談に?
水野:本当にいろんなジャンルの方がいますね。芸人さんだと近藤春菜さんとか。探り探りでした。春菜さんにすごくリードしていただいて、すごく優しかった。頷きがもう優しくて。
佐藤:あのひとは交友力の鬼みたいな。幅広い。
水野:「もっと自信持てよ」みたいなことを言っていただきましたね。優しく。
佐藤:水野さんって仕事の反省とか、そういうのあります? 僕は仕事の反省で頭がいっぱいになって帰るんですよ。
水野:やっている最中に自己嫌悪がすごくあるタイプですね。曲作っているときは、基本やっぱり、「才能ないなぁ」とか「できないなぁ」っていう気持ちが多いです。
佐藤:そっかぁ。へぇー。
水野:だから反省はあんまりしないかもしれないですね。もちろんテレビとかたまに出させていただいて、「あー、うまく言えなかったなぁ」みたいなことは思いますけど。反省するほど、お喋りができないから、そこまで期待してないというか。
佐藤:なるほどなるほど。ものづくりにおいては、才能ないなぁって感じるんですか。
水野:ずっと思っていますね。
佐藤:なんでですか? たとえば締め切りがあって、そこよりは遅れちゃうとか?
水野:締め切りはわりと守るタイプだと思います。よほどイレギュラーなことがない限り、守るようにしているんですけど。
佐藤:でも、これまでの実績を考えても、いろんなひとの心に刺さる曲を作っているじゃないですか。そこは自信の糧にはなってないんですか?
水野:今度は、「前は作れたけど、今は作れないんだな」みたいな感じになるんですよ。
佐藤:なるほどー。
水野:振り返って聴いてみると、「たしかにうまくできたな」みたいなものもあるんですよ。だけど、「今これやれって言われても、できないんだよなぁ」みたいな。どういう反省をなさるんですか? 芸人として出ていらっしゃるとき?
佐藤:作家のときもありますね。「会議でああいう言い方しちゃったの全然伝わってなかったから、こう言えばよかったな」もありますし。テレビに出たとしたら、「あそこであのツッコミ被っちゃったな」とかもありますし。考えなくていいことなんですけど、ずっと考えてしまう。
水野:それって次に活きます?
佐藤:いやー、活きてないと思うんですけど。
水野:同じようなくだりが来たら、今度はこうリアクションしようとか。
佐藤:多少あるのかもわからないですけど、絶対にその時間は無駄だと思いながらも、脳みその修正として何かを考えて。もともと不眠症なんですけど、寝れないのが続いていますね。気分転換はどうしています? 仕事以外のこととか何かやっています?
水野:最近ないんですよねぇ。だから、言い方には気をつけなきゃいけないんですけど、Aの仕事をBの仕事で気分転換している感じになることが多いと思います。
佐藤:あー!なるほど。別ジャンルの仕事。
水野:はい。で、切り替わるとかかなぁ。あと子どもがいるので、子どもとわちゃわちゃやっていると…。なんか…何もないですねぇ。あります? 気分転換。フットサルとかやられているんですよね。
佐藤:そうです。僕もずっとなくて。37歳ぐらいのときかな。逆流性食道炎と低音性難聴とめまいと。
水野:しっかり身体に出ちゃっているじゃないですか。
佐藤:で、「あ、これやばい」と思って、いろいろ病院をまわったら結局、よくわからないけど仕事のストレスがどうこうみたいな。変な話なんです。「好きな仕事ばっかりやっているのに、ストレス抱えてんじゃねーよ!」って思って。自分に。
水野:あー!真面目!
佐藤:真面目なんですよ。それで、「これは仕事以外のことやらねば」と思って、フットサルを始めました。
水野:心境は変わりました?
佐藤:変わりました。その数時間は仕事のことゼロになるので。唯一その時間だけかもしれないですね。家族といるときもわりと考えちゃって。
水野:それは僕も。
佐藤:そうですよね。お子さんおいくつですか?
水野:今、5歳ですね。妻に怒られることがありますね。「今、違うこと考えてたでしょ」って。
佐藤:バレるんですよねー。
水野:「話聞いてなかったでしょ」って。まぁでももう慣れているので。
佐藤:うわぁ、一緒だ。おもしろいなぁ。何か身体を動かすようなことは?
水野:走ってはいます。体型維持と健康のために。
佐藤:それがあるのは大きいですね。
水野:それこそYouTubeを音声だけ聴いたり、ラジオ聴いたり。それが気分転換になっているのかなぁ。でも音源を聴き出しちゃうと。それで頭が動いちゃうので。
佐藤:音楽が仕事になっているってことはそうですよね。音楽で気分転換って難しいですもんね。
水野:そうですねぇ。まぁでも結局、好きなので聴いちゃう。でもそうじゃないですか? お笑い番組とかライブとか観ても、もちろん楽しいけど。
佐藤:もう考えちゃいます。
水野:その考えることがおもしろかったりするじゃないですか。結局、好きなことは好きなんですよね。
佐藤:そうですね。
水野:僕これよく言うんですけど、本当に忙しかったときに、「やっぱり体調ヤバいんじゃないの? 休んだほうがいいんじゃないの?」ってなって。2週間ぐらいお休みを作ってくださったんです。スタッフのひとがやってくれて、整理して。で、何にもしないってやったら、やっぱり落ちましたもんね。逆に仕事しないと。
佐藤:そうなんだぁ。
水野:だから仕事しているほうが楽なんだって。まぁよくないのかもしれないけど。
断れない。
佐藤:でも、そういうある種、自分ができる、任されているものがあって、やることが精神的にも実は。
水野:バランスなんでしょうけどねぇ。16本も番組とかやられていて、他のこともやられていて、頭切り替わるんですか?
佐藤:もうわけがわかってないですね。仕事を依頼していただくときって、嬉しいじゃないですか。誰かに何か頼まれるとか、呼ばれるとかって喜びがあるじゃないですか。だから番組とかも、「これの構成お願いします」って言われると、「僕でよければやらせてください!」って。断れないんですよね。
水野:断れない。
佐藤:今、番組の会議も収録も被り倒していて。番組の会議とかはいくつも被っちゃって。「先週こっち休んだから、こっち出よう」とか。アイデアだけ送っておくとか。今年は諦めましたね。もうこれが続くんだなって。
水野:すごい。売れっ子だなぁ。
佐藤:本当に依頼いただけているうちは。これが次の改変で全部ゼロになる可能性もあるので。
水野:そうですよね。常に緊張感がある。
佐藤:まぁそれでお金をいただけるのはありがたいですよね。と、思いながら、半分ぐらいでいいなぁとは…。
水野:本音がこぼれちゃってる!
佐藤:水野さんもいろんな依頼が来ますけど、基本はいきものがかりの曲作りがメイン軸ですか?
水野:そうですね。でもいきものがかりが今そんなに動いてないので。つい数か月前とかに、今後どうやっていくかみたいな会議をやったわけですよ。スタッフのひとたちと、「こういうタイプのお仕事を中心にやっていきたいです。なので、こういうタイプのお仕事はなるべく絞っていく感じにしましょうかね」みたいな話をして。「そうですね、水野さんの体調もあるし」と言っていたのに。この数か月ほとんど断ってない(笑)。
佐藤:わかる。
水野:素敵な言葉とか添えてくださったりして。「こういう曲が好きで、書いてもらえないか」とか、自分が知っているアーティストの方に言われると、それはもう、「頑張ります!」ってなるじゃないですか。
佐藤:なる。なる。
水野:いろんな意味で調子よく答えちゃうというか。お調子者というか。
佐藤:断れないというか。
水野:はしゃいじゃうし。「嬉しい。知っていてくれた。頑張ります!」みたいになっちゃうことが多いかなぁ。でも結局やっていて、「なんで…うけちゃったんだろ。全然、俺の能力が足りないです…」みたいな。ありがたい話ですけどね。
「僕たち昼だけです」
佐藤:本当に水野さんとはゆっくりお話しするの、今日が最初でしたけど、頭で考えていたことがほぼ一緒の20何年でしたね。振り返ると。
水野:そうですね。生き別れの兄に会ったような。
佐藤:なんとなくお話が合いそうだなと思っていたところで。こういうのって肌感ですもんね。逆もあるじゃないですか。ちゃんと話が合わなそうな。
水野:その予感って、結構合っていますからね。履いている靴とかでわかるんですよ。先っちょの尖っている靴履いているひと、絶対に合わないんですよ、僕。
佐藤:合わないですよね。すごくじゃらじゃらつけていたり。たまにディレクターさんとかでもいるなぁ。入って来る情報ってやっぱり正しいんですよ。
水野:正しいんですよ。ひとは見た目なんですよねぇ。
佐藤:雰囲気とねぇ。おもしろいなぁ。この流れでいうからちょっとアレになっちゃうかもしれないですけど、普通に今後、気分転換の喫茶店を時々やりませんか?
水野:ぜひぜひぜひ!
佐藤:いろいろ情報交換を含めて。ここでできない家族の話とかもしたいなって。
水野:いくらでもできます。放送できない話の方が多分おもしろい。
佐藤:ちょっとプライベートなところも普通に話してみたいなって改めて思いましたね。
水野:ランチとか喫茶店。
佐藤:そうですね。夜はちょっとね。いろいろお互いね。夜って家にやっぱり帰りたいですもん。
水野:家に帰りたいですね。
佐藤:まったく一緒です、それは。
水野:なんかそういう組合を作ったほうがいいんじゃないですか。
佐藤:「僕たち昼だけです」って。ステッカーかなんか貼ろうかな。
水野:昼だけの男。
佐藤:「昼」みたいな。犬のマークみたいな感じで。
水野:多分それで盛り上がっちゃって、本当にロゴとか作り出したりするんですよ。で、盛り上がりすぎてくると、だんだん引いてくるんですよね。「そんなになんか、仲間意識持たなくても…」みたいな。
佐藤:そう、そこね。
水野:このしち面倒さをうまい温度で保つのが大事。
佐藤:ノリが変わってきちゃうんですよね。いやぁ、今日僕は家に帰ったら妻に、「話が合うひとを見つけた」って喜びを散々話すと思いますね。僕が話せるひとを見つけると、妻はすごく喜んでくれるんですよ。
水野:そうですか!
佐藤:友達がいないことを知っているから。「またなんかひとりでブツブツ言っている…」って。話が合うひとを見つけた話を家ですると、安心されるんですよ。今日は帰るのが楽しみだなぁ。
水野:いやぁ、よかったです。何卒よろしくお伝えください。
佐藤:嬉しいなぁ。楽しみにして今日まで頑張れてよかった。この収録の前は、ごみ屋敷のロケが入っていて。ごみ屋敷のロケもすごく楽しい。掃除がすごく好きで。だから今日の日をすごく楽しみにしていたんです。「ごみ掃除して、水野さんと話できる日だ!」って。
水野:こんなにコーナーのラストで、上を向くひと初めてです(笑)。「よかったなぁー」って。温泉でも浸かったみたいに。
佐藤:いい日だなぁって。
水野:さぁじっくりとお話させていただきましたけど、このあとも長いと思って、信じておりますので。これからもよろしくお願いします。
佐藤:こちらこそよろしくお願いします。
水野:今日のゲストは佐藤満春さんでした。ありがとうございました。
佐藤:ありがとうございました!
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