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内にあるもの

座談会企画「HIROBA茶会」
水野良樹×高橋久美子×関取花

古く日本では戦国武将から文化人まで、それぞれの親睦を深めるために茶会を催したとか。英国では社交の基本に「tea party」があるとか、ないとか。
小難しいことはさておき、お酒が不得意なHIROBAの水野良樹が、どうやったら様々な分野の方々と交流がもてるのだろう。
「酒を酌み交わし、心を開いて本音を語ろうじゃないか」的な文化に、全然とびこめない水野が考えたのが「そうだ、茶をしばこう」。

お招きするのは水野がお仕事やプライベートでつながりをもった方々。毎回、茶会の主催である水野がエンタメにまつわるテーマを持ち寄り、それをもとにざっくばらんにおしゃべり。
自由でリラックスした会話から、なにかの刺激やアイデアが生まれないか。
仕事とプライベートのあいだの、座談会企画。

記念すべき第1回はHIROBAに縁の深い、高橋久美子さん、関取花さんのお二人です。

Part 2 にあるもの

(ここでサンドイッチ登場!水野さんのナポリと関取さんのサバオリーブ)

高橋 すごいの来た〜。

関取 お〜!半生ですか?

高橋 半生やね。

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水野 うまい!

関取 サバも美味しいです〜。

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高橋 いいねぇ。

水野 1年前も「自分の中のドロドロした部分を出したくならないか」という話をしたよね。

高橋 そうだったね。

水野 それを聞いていたから、割とスッと読めて。

関取 わー、絶対読みます!

高橋 ありがとう。読んだ人はみんな、けっこうビックリしてたね。出すのは勇気がいりました。

水野 歌にはしてない?

高橋 うん、してない。こういうのを中学生くらいからずっと書いてきて。その軸がある中で歌詞を書いてきてのね。

水野 内にあるものを。

高橋 そう!私の見え方と真逆だから、ファンの人もビックリするんじゃないだろうかと思って。歌詞にここまでの感じは出してこなかったので。

関取 うーん。

高橋 「いいな、もういい!」と思って。

水野 出してみてどうだった?

高橋 男性の方は「こんなこと考えてるの?こわ〜」って。

関取 ええ!

高橋 「1ページ目で怖くなって閉じて…ちょっとしてから読もうと思った」という友達も多くて。

水野 ああ。

関取 タイトルが…。

高橋 そうね。

水野 形にして、出してみて、見えてくるものはあった?ドロドロしたものがあるというのはわかってるけど、形にしてみるとまた違って見えるじゃない。

高橋 そうね。

水野 やっぱり「出す」って難しいんだろうね。

高橋 そうよね。ピリオド打つ瞬間がいちばんね。

水野 ああ。

高橋 手を離す瞬間がいちばん難しい気がしていて、バンドのときは3人で手を離すけど、本の場合はひとりで手を離すから。

関取 そうですよね。

高橋 悶々として、闇が深くなっていくような。

水野 のぞき見した子どものような気持ち…。

関取 特に女性は…。

高橋 そうなんよ。でも、出してよかったと思っとるよ。共感を求めがちだけど、今回は「求めなくていいや!」と。

関取 ああ。

高橋 「何を言われようと、批判されてもいいんだ。この時代にこんなことを書いてもいいじゃないか」と覚悟して出したから、なんかサッパリしてる。

水野 共感という言葉が正しいかわからないけど、刺さる人には本当に刺さる内容だよね。

高橋 そうかも。実際、共感しましたという声をたくさんもらって驚いてね。

水野 同じようなものを抱えている人にはね。

関取 あえて言葉にしないし、正体不明だったものを言葉にされて、グッと来るというか。

水野 そうだよね。

関取 このモヤモヤって何だろうと。

水野 歌に書いてないものはある?まぁ、いっぱいあると思うけど。

高橋 ああ、何だろうな。

関取 うーん。

水野 なんか…結局、真面目な話になっちゃう(笑)。

関取 久美子さんも作詞で参加されていたカサリンチュのアルバム(「待つ、うらら」)の…。

高橋 うーん、そうよ!

水野 そうか、二人とも参加してるのか。

関取 その曲(「伝えに行くの」)は、自分が歌うと思うと歌えなかったんですけど…二番目の女の歌を書きました。

高橋 そうだった、そうだった!

関取 女性を全面に出す歌詞があまり好きではないので。でも男性が歌うと思ったときに、このテーマでいきたいと思って。

水野 そうか。

関取 他にも同じようなテーマで自分の曲として出そうとプッシュしたけど却下されたものもたくさんあります。

高橋 ああ、なるほどね。

関取 グッとくる女性の…。

高橋 抑えきれない何かみたいなものも「たまには書きたい!」みたいになるんよね。

関取 そうなんです。でも「ちょっと、それは…」と止められて。

水野 なるほど。

(ここで高橋さんのサンドイッチ登場!)

水野 あ、話に夢中になっちゃいましたけど、温かいうちにサンドイッチもいただきましょうか。

高橋 あー、シャケ!いやぁ、素敵な断面。

関取 すごいボリュームですね。

水野 うまそう!

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高橋 歌詞の場合は自分と少し距離があるというか、これは自分の物語ではないと装えるけど、詩集の場合はそうはいかなくて。

水野 それね。

高橋 最近はエッセーとか詩集のほうが難しいなと思っていて。

関取 うーん!

高橋 小説はとても体力はいるけれど「自分じゃないですよ、この物語は」と、切り離せるから。

関取 そうかぁ。

高橋 精神面での楽さはあるなと思うね。

(つづきます)

次回:Part 3 反抗期
前回:Part 1 ネガティブか、ポジティブか。

高橋久美子(たかはし・くみこ)
1982年生まれ。作家・作詞家。
2004年、チャットモンチーにドラム、作詞家として加入。2011年、チャットモンチーを脱退。以降、アーティストへの歌詞提供や、エッセイ集の出版など、精力的に活動。近著に詩画集「今夜 凶暴だから わたし」、絵本「あしたが きらいな うさぎ」など。
高橋久美子オフィシャルサイト
高橋久美子Twitter
関取花(せきとり・はな)
愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けているミュージシャン。NHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等多くの夏フェス出演、初のホールワンマンライブの成功を経て、2019年5月にユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。
ちなみに歌っている時以外は、寝るか食べるか飲んでるか、らしい。
関取花オフィシャルサイト

<今回の茶会の舞台はこちら>
FARO CAFFE

Illustration/Yayoi Sunohara
Text/Go Tatsuwa

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