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「TOKYO NIGHT PARK」 橋口洋平さん(wacci)対談 HIROBA編集版 後編

仲のいい後輩であり、先輩風を吹かせられる唯一の相手というwacciの橋口洋平さんを迎えたJ-WAVE「TOKYO NIGHT PARK」の対談。
日々の楽曲制作から、あの曲の制作エピソードまで、和気あいあいとした仲良しトークを、前後編のHIROBA編集版としてお届けします。

【後編】歌になりそうな物語に気づけるか

水野 せっかくなので、リスナーのメールを一緒に読んでもらっていいですか?

橋口 もちろんです!

ラジオネーム もーりすさん 34歳 男性
毎年、年末に新しい手帳を買い、日々感じたコトを書いていこうと思うのですが、4年連続、春になるまでに挫折し、ただのメモ帳となってしまっています。
今年も一応、手帳を新調しましたが全く続ける自信がありません。手帳に何を日々書いていけば良いか考えてほしいです。
よろしくお願いします。

水野 橋口くんは手帳派ですか?それともスマホで?

橋口 スマホですね。でも、手帳もありますね。

水野 書くの?

橋口 歌詞をメモったり。

水野 あ、メモするんだ。

橋口 え!しませんの?

水野 (笑)しませんのよ。

橋口 先輩、しないんですか?

水野 歌詞のネタ帳みたいのはゼロですね。

橋口 えーーー!!!それ、初めて聞きました。

水野 えーーー!!!みんな、するの?

橋口 みんな、すると思ってました。じゃあ、あの言葉たちは、どこから出てきているんですか?

水野 つくりながら。

橋口 第一歩目も?

水野 第一歩目も。

橋口 テーマとかも?

水野 テーマとかも。曲つくるときに、打合せとかした段階からスタートですよ。

橋口 うわ、そうなんですね。すごいなぁ。

水野 え、違うの?俺だけ??橋口くんのメモには、どんなことが書かれているんですか?フレーズとか?

橋口 フレーズとか、本で読んでちょっと気になったこととか。女友達、男友達から聞いた、歌のどこかにハマりそうだなと思う言葉やエピソードをメモっています。

水野 どのくらいの頻度で使うものですか?100書いても、100全部使うわけじゃないですか、たぶん。

橋口 さすが、やっぱり先輩はいい質問をしますね。99使わないです。

水野 (笑)

橋口 やっぱり意味ないんだなって、いま思いました。でも、「別の人の彼女になったよ」はメモ帳からでした。

水野 あー、そうなんだ!前に聞いたけど、あの曲は詞先で歌詞がスーッと書けたと。

橋口 そうです。最初に「別の人の彼女になったよ」っていうフレーズだけがあって。

水野 それだけでインパクトがあって、ストーリーのあるタイトルだよね。その段階でウワッと膨らむものがあるもんね。

橋口 ありがとうございます。

水野 いやぁ、書くんだ。日記とかは書くの?

橋口 書かないです。水野さんはメモという段階を踏まずとも、毎日膨大な量の文章を書いてますもんね。

水野 そんなでもないよ(笑)。

橋口 エッセイとか、HIROBAの活動もそうですし。書く頻度が、僕とは全然違うと思うんです。浮かんだものを書き残していくというよりも、それを形にして世に出している回数が多いですもん。

水野 自分の辞書みたいなものをつくる目的で、メモ書いているっていう人がいてさ。メロディつくって3文字の言葉が必要だとしたら、3文字の言葉がわかるように。

橋口 うわ!それ、すごい!

水野 すごいなって思うけど、俺はそれだと上手くできないなと思って。

橋口 そのメモの仕方はすごいですよ。「別の人の彼女になったよ」だと、3人いるじゃないですか、曲の視点として。僕がメモするのは、歌のテーマになりそうな、ちょっと面白いことが多いですね。

水野 やっぱり、そのアイデアは大事だよね。

橋口 うーん、でも99使わないですけどね(笑)。

水野 「これ、物語になりそうだな」という軸になるアイデアがあれば、そこから自然と言葉が出てくるというか。

橋口 それはあると思います。

水野 その捉え方だろうね。メモで捉える人もいれば、ずっと思い続けて形にする人もいる。

橋口 水野さんから「笑顔」ができたエピソードを聞いたことがありましたよね。

水野 あったね!「笑顔」はポケモン映画の曲だけど、自分はポケモン世代じゃないから、どう書いたらいいか、正直よくわからなくて。

橋口 はい。

水野 たまたまランニングをしていたら、小さい子どもを3人連れたお父さんが歩いてきて。全員、同じ服を着てたのよ。

橋口 (笑)

水野 ファミリールックっていうのかな。同じ服を着てるって、側から見ると笑っちゃうんだけど、それがすごく微笑ましく見えて。すごく愛があるなと。それが物語になるなと思って。

橋口 うわぁ。

水野 このくらいの世代の子たちやその家族が、きっとポケモンを見るんだろうなと考えたら、バーッとイメージがつながっていって。自分のことよりも、子どもたちのことを精いっぱい考えるお父さんを見て、すごく素敵だなと。その感じが歌になったね。

橋口 そういうものをメモするっていう感覚だと思うんですけど…つくらなきゃいけなくなって、実際につくるまでの間に、ちゃんとそういうものを見つけて、歌にして、落とし込んでいくということですから。

水野 (笑)やっぱり橋口くんをゲストに呼ぶと、俺を褒めてくれるからね。

橋口 いやいや。

水野 毎週ゲストに来てくれたら、1年後には俺がすごい人に見えるようになるよ(笑)。

橋口 そして僕はJ-WAVEに慣れていく。

水野 そして、この景色に慣れていく(笑)。

橋口 ああ。だから、「君に笑ってほしいんだ」っていう1対1の、パーソナルな心の距離感の歌になったんですね。ポケモン自体はみんなに愛される広いものだけど、それと向き合う人たちは一つの家族であり、1対1ですもんね。

水野 ああ、そうかも。

橋口 すごいなと思います。

水野 メモもそうだけど、考えてないと気づかないよね。「別の人の彼女になったよ」っていうエピソードは、正直言ってどこにでもあるじゃない。

橋口 はい。

水野 でも、「これは歌になる」という気づきは、そのアンテナが伸びていないと、つかめないと思うんだよね。そこがすごい。

橋口 あとは、「いっぱい、いた」ってこともあります。

水野 いっぱい、いた?

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