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メンター

座談会企画「HIROBA茶会」
水野良樹×高橋久美子×関取花

古く日本では戦国武将から文化人まで、それぞれの親睦を深めるために茶会を催したとか。英国では社交の基本に「tea party」があるとか、ないとか。
小難しいことはさておき、お酒が不得意なHIROBAの水野良樹が、どうやったら様々な分野の方々と交流がもてるのだろう。
「酒を酌み交わし、心を開いて本音を語ろうじゃないか」的な文化に、全然とびこめない水野が考えたのが「そうだ、茶をしばこう」。

お招きするのは水野がお仕事やプライベートでつながりをもった方々。毎回、茶会の主催である水野がエンタメにまつわるテーマを持ち寄り、それをもとにざっくばらんにおしゃべり。
自由でリラックスした会話から、なにかの刺激やアイデアが生まれないか。
仕事とプライベートのあいだの、座談会企画。

記念すべき第1回はHIROBAに縁の深い、高橋久美子さん、関取花さんのお二人です。

Part 5 メンター

水野 メンターというか、指標となるような人はいますか?

高橋 うーん。

関取 指標か…。どうしよう!って困ったときは、母方の祖母を思い浮かべますね。もう亡くなってしまいましたけど。祖母を「あーちゃん」って呼んでいて、「あーちゃんならどうするかな?」って考えますね。

水野 おお。

関取 そう考えて決めると後悔しない。全てがカラッとしていて誰にも迷惑をかけない、みんなに「本当に気持ちのいい人だったね」って言われるような存在でした。こういう人になりたいと思わせてくれる。

水野 いいなぁ。

高橋 うーん、いいねぇ。水野くんはやっぱり小田さんなの?

水野 そうだね。そうなるのかな。指標にはしてるよね。

高橋 私はなかなか…いないなぁ。

関取 「いちばん好きなミュージシャンは誰ですか?」って聞かれると困りませんか?

水野 ああ。

高橋 確かに。

水野 よく聞かれるよね。

関取 でも、言えないですよね。

水野 全肯定は…なかなかね。

高橋 そうよね、時期によっても違うしね。

関取 仕事柄、「いちばん好き」と言った途端に全曲知ってないといけないのかなって…。

高橋 そうそうそう、思ってしまうよね。

水野 難しいよね。僕は…玉置(浩二)さんかな。

関取 私も大好きです。

水野 でも、指標にはできないというか…追いかけちゃいけない背中のような。

高橋 そうね。

関取 玉置さんはどんなアーティストとコラボしても圧倒的な存在感ですよね。

高橋 一人勝ちよね。

水野 圧倒的に上手い!

関取 コントロールしきれないくらいのパワーを感じます。

水野 初めて会ったときに「14歳の頃からずっと聴いてました!」って思いの丈をバーッと伝えて。

高橋 うんうん。

水野 「お、そうか!俺が玉置だ、来い!」って。

関取 わー!

水野 ハグしてくれて。

関取 いい話〜。

高橋 すごいなぁ。

水野 オープンなときは、とことんオープンというか。

高橋 ミュージシャンでは珍しい気がする。スポーツ選手っぽい感じだね。

水野 ああ、そうかも!

高橋 同年代にそういう人は…。

水野 ああ、いないなぁ。

関取 そうですよね。

高橋 「さぁ、来い!」なんて私にはできないわ。中学生を前に眠れなかった女だし(笑)。

一同 (笑)

高橋 その魂、分けていただきたい!

関取 さっきのネガとポジの話で言ったら…。

水野 うーん、超ネガティブなんじゃないかなぁ。

関取 ミュージシャンで根がポジティブな人っていますかね?

水野 うーん、いるかなぁ。

高橋 歌う理由がどっちのマインドかということよね。

水野 うーん、また小田さんの話になっちゃうけど。

関取 はい。

水野 「小田さんはネガティブにならないんですか?」って聞いたら、「うーん、俺は根が明るいんだよね」って。根っこが肯定的というか。人のことが好きだし。

高橋 そうか。新しいものを生み出す力がゼロになったら作れないもんね。

水野 ネガティブに耐えられる体力も必要だよね。

高橋 その通りよ。心と体は密接だからね。

関取 そうですよね。

水野 ネガティブかポジティブかではなく。ネガティブとポジティブがきちんと緊張感をもって共存しているか。

関取 ああ!

高橋 うんうん。

水野 まさにバームクーヘン。

関取 そうか!

水野 どちらか一方に寄りすぎると表現も崩れちゃう。

高橋 そうよね、わかるわ。

関取 表裏一体で、そのバランスですよね。

水野 いやぁ、深まってまいりました。

高橋 面白かった。いいね、食べることに集中しながら話すのも(笑)。

関取 濃かったです。時にはこういう話がしたくなりますよね。人生観というか。

高橋 そこで気づくことがあるね。

関取 普段のインタビューだと、そんなに考えていないことでも聞かれたら「答えなきゃ!」と思って…。

高橋 そうよね。ブルーハーツのインタビュー読んでたら「うーん、わからない。それもわからない」って。

水野 嘘がないね。カッコいい。

関取 大事ですよね。自分の中にないことも、聞かれると…。

高橋 答えてしまうよね。あるよね、そういうこと。

水野 わかる!

関取 いい発見がたくさんありました。

高橋 ホントそうよね。ありがとう。

水野 いやぁ、よかった。ありがとうございました。

(おわり)

前回:Part 4 さよなら青春

高橋久美子(たかはし・くみこ)
1982年生まれ。作家・作詞家。
2004年、チャットモンチーにドラム、作詞家として加入。2011年、チャットモンチーを脱退。以降、アーティストへの歌詞提供や、エッセイ集の出版など、精力的に活動。近著に詩画集「今夜 凶暴だから わたし」、絵本「あしたが きらいな うさぎ」など。
高橋久美子オフィシャルサイト
高橋久美子Twitter
関取花(せきとり・はな)
愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けているミュージシャン。NHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等多くの夏フェス出演、初のホールワンマンライブの成功を経て、2019年5月にユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。
ちなみに歌っている時以外は、寝るか食べるか飲んでるか、らしい。
関取花オフィシャルサイト

<今回の茶会の舞台はこちら>
FARO CAFFE

Illustration/Yayoi Sunohara
Text/Go Tatsuwa

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ソングライター水野良樹が主宰するHIROBAの公式マガジンです。HIROBAは『つくる、考える、つながる』を楽しむ場をつくりだす実験的プロジェクトです。様々なゲストの方々との対談、創作が、発表されていきます。HIROBAや水野良樹個人の活動を、ご支援してくださる方はぜひご購読ください。

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