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水野良樹さん「余白」インタビュー【後編】 ~聴いてくれたひとがそれぞれ“自分の話をしてくれる”のがいちばんいい~


― いきものがかりの楽曲で「余白」を作るために、ギリギリまで迷ったフレーズやメロディーってありますか?

これ絶対にいろいろありますね!まず「ありがとう」には、実は大サビがあったんですよ。実際に作品になったものにはないんですけど、最初のデモにはあるんです。昔のデモをいろいろ漁ったときに「ありがとう」が出てきて、こんな感じだったなぁって聴いていたら、途中でまったく覚えのないメロディーが流れ出して(笑)。多分、邪魔だからカットしたんだと思います。僕はどうしても、展開をたくさんつけようとしがちで、それも「余白」を狭めてしまう場合があるんですよね。メロディーにも“言いすぎる”ってことがあって。だからあれは取ってよかったなと思います。やっぱり改めてデモを聴いても、全然いいと思えなかったし、迷いがあったし。

メロディーで冗長になりがちなパターンだと「花は桜 君は美し」も、インディーズの頃に出したバージョンは、Aメロがあとハーフサイズもうひとつあったんですよね。歌詞の展開も全然違うもうワンシーンを書いていて。それも多分、メジャーのときに切りました。場面を書きすぎたなって印象がありますね。

そう考えると「ブルーバード」は、今聴くとよく俺こんなコンパクトに収められたなって思います。なんでこんなことができたんだろうって思えるくらい。今だったらもうちょっと展開をつけたり、Aメロを繰り返したりしているはずなのに。無駄なことをせず、スーッと進んでいく。

― かなり初期から「余白」というものを自然と意識されていたのかもしれませんね。

意識していたと言えればカッコいいけど(笑)。でもきっと感覚的なものとしてあったんだと思います。細かいことを歌詞のなかで書くのが苦手だったということもあると思います。文章を書く仕事をするようになって、より実感するようになったんですけど、どうしても長い字数で書きたくなっちゃう。最初の話に戻りますけど、たくさん“しゃべりすぎる。書きすぎる”僕からすると、歌詞は窮屈で仕方ないから。その不得意はずっと意識していますね。松本隆さんみたいに書けたらいいのに(笑)。

― では、いきものがかりの楽曲で、とくにご自身で「余白」が活きたなと思われるものというと?

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