『今日も書けない』part2
答えはあくまで、そちらのなかで生まれるものであって、こちらから与えるたぐいのものじゃないんじゃないか。「ふたを開いたら、何もなかったじゃないか」というひとは、つまり、あなたのなかに何もなかったということじゃないか。
詳しくない人間が軽はずみに語ってはいけないもののひとつに「落語」というものがあって、豊かな素養を持った”通”と呼ばれるひとたちが大勢いるものに対して、門外漢が気ままに引用するのは禁忌な気がするのですが。あくまで考えるための補助線として。
落語家の方が、噺を進めるなかでモノを食べるシーンになったとします。
これもベタすぎる例ですが、たとえばお蕎麦をすするシーン。着物を着た噺家さんが、両腕を胸の前あたりにもってくる。右手には扇子があったりして。セリフがいくつかあって、町民なんでしょうか、愚痴とかを吐いて悪態をつきながら、すこし乱暴に口元で音をならして、蕎麦をすすって……いるように観客に見せる。
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