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ある企画が始まる前に、語っておきたいこと⑥-”場”になる

HIROBA

”物語”のなかにいるのだなと思う。

高校生の頃に始めたグループが20年以上も続いている。いつからだったか「自分たちだけのものではない」なんて言葉を生意気に言い始めた。本心だった。

謙遜とか、周囲への配慮とかいうことではなくて、素直な実感だった。

3人で風を起こして、それが渦を巻き始めた。最初はつむじ風くらいの規模だったものが、どんどん大きくなって、台風のようになって、いつのまにか風を起こした自分たちでさえ、身を委ねるようなかたちになった。

多くのひとが関わっていき、多くのひとが去っていく。交差点のようなもので、それぞれの人生が、渦に関わっていく。深く、長い時間、関わるひともいれば、短く、少し立ち寄っただけのひともいる。大きな渦のうごめき。それ、そのものがグループの物語だから、たとえ交差点の真ん中で旗を振っているのが自分たち3人であっても、その物語は”3人のもの”ではない。

あえて言うのなら、大きな渦が巻き起こる交差点(=場)を、開拓したのは僕らだったのかもしれないけれど。




「人」ではなく「場」に焦点を合わせて、HIROBAというささやかな活動を始めたのは、その経験があったからだと思う。

若い頃から「自分を見てくれ」という気持ちが強い方ではあったと思うけれど、そんな自分でも、自分という「人」を中心にして、なにかを巻き起こすのは無理があるような気がしていて、そしてそれは、たとえ何かの偶然が重なってうまくいって、渦が大きくなったとしても、あまり幸せなことにならないんじゃないかという予想があった。

できるのは「場」をつくること。

そこに立ち寄るひとびとが(それはもちろん自分も含めている)、自分の”物語”をそこに立ち上げることができる”場”を、どうにか拵えること。


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考えてみれば、曲もまた、”場”であったのかもしれない。
メロディもまた”場”であったのかもしれない。

今まで、”器”という言い方を長い間してきたけれど。

少し、前に進んだように思う。

誰かが物語を、生み出すことができる”場”。誰かが物語を、語り出すことができる”場”。

HIROBAの意味が、少しずつ定まってきている。



HIROBA


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