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読む『対談Q』 水野良樹×半﨑美子 第3回:「わかった」でも「わからない」でもなく「わかりたい」。
HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。
今回のゲストはシンガーソングライターの半﨑美子さんです。
前回はこちら
影響を受ける才能。
半﨑:自分自身、影響を与えるより、与えられる才能のほうがあるというか。影響を受ける才能っていうんですかね。カリスマ性とか、そういうところ真逆にいて。みなさんとおんなじ場所で対話している感覚なので、歌って一緒に涙し合ったり、対話したりするんです。よく、「ステージに立つひとは泣いちゃいけない」みたいな…。
水野:言われますよねぇ。
半﨑:私は常に泣きながら歌っているんですけど。でも、私は歌う側が感動しちゃいけない理由が、まったくわからなくて。ステージを隔てて”感動する側”とか”感動させる側”になる理由がわからない。ライブもサイン会も、おんなじ気持ちなんです。言葉介さずともお互いに目を見合って、ただ泣き合って、サインを書かせていただいて、っていう時間も生まれて。まさに直接じゃないと、目の前でじゃないと、生まれない時間だと思います。
水野:そうですねぇ。
半﨑:そういう積み重ねが、自分が歌うことの原動力にもなっていますね。
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水野:「歌うひとは泣いちゃいけない」っていうのも、ある種スタイルとしてあって。僕もそれはそうだなって思う瞬間もあるけど。そこと半﨑さんの涙が違うのは、玉置さんの番組を拝見したときに…。
半﨑:泣いていましたね。
水野:もちろん僕らからすれば、憧れの玉置さんの前で歌うってことの感動もある。でも、どこか「母へ」って曲に玉置さんが何か思われていることが、ここに流れているというか。
半﨑:でも、本当にそうです。玉置さんが歌ってくれていることの感動はもちろんなんですけど、それだけで泣いているということではなくて。
水野:ステージ上で、「私、嬉しいわ」って泣いているのではなくて、聴いているみなさんの感情がどこか流れ込んできて。
半﨑:そうですー!
水野:半﨑さんの涙であって、そうじゃないような感じ。先ほどの路上ライブの話もそうですけど、空気をともにするというか。感情をともにするなかで、必然的なものなのかなって。あと僕、玉置さんの前で歌われている姿を見て、「うわ、このひと泣いているのに歌い切ってる、すげぇ!」って。
半﨑:ありがとうございます(笑)。
水野:急に話がズレるかもしれないけど、歌が崩れてないことのすごさがあって。そこを両立できるからこそ、そうなっていらっしゃるんだろうなって思いました。
半﨑:たしかに、泣きながら歌っていることに関して、「すごいね」って言っていただいたことはあって。実際、本当に喉が閉まったり、音程が狂ったりするじゃないですか。私も最初の頃はしていたんですけど、だんだん大丈夫になってきて(笑)。
水野:ハイブリッドですか(笑)。
半﨑:歌が止まってしまったりすると、さすがに本末転倒だと私も思います。だから泣くけど、ちゃんと歌自体は歌えるようにっていうのは、自然とそうなっていきましたね。
オープンな場所ならではの不思議。
水野:それはすごく大事なことですよね。あと、ライブとかコンサートにいらしているファンのみなさんは、半﨑さんの歌を聴きたいんだけど、やっぱり自分のことを喋りたがっているというか。
半﨑:うんうんうん。
水野:言葉にできなくても、自分の思いを発信したい、外に出したいみたいな。そのパワーがステージに向かっているんじゃないかなって。
半﨑:すごくあると思う。あると思うっていうのは、自分自身が歌いに行っているというより、受け取りに行っている感覚で。だから、両方向でそういう対話ができていたら、嬉しいです。みなさんそれぞれ抱えている思いは違うにせよ、自分だけじゃないんだっていう気持ち…。たったひとりで聴いているときと、みんなで聴いているときって、違うものがあると思うんです。
水野:はい。
半﨑:たとえばショッピングモールのライブで、サイン会をさせてもらっているときも。お客さまが目の前に来られて、お互い涙し合って、数分間お話させていただいたりして。自分の番を待っているひとたちは、それをずっと見ているわけですよね。
水野:ああー。
半﨑:誰かが私の前で泣いていて、私も泣いている。それを1~2時間見ていると、自分の番が来たとき、もう素直にわっと感情を出せるようになっている。それはオープンな場所ならではの不思議だなって。それがクローズだったら、まったく違ってくると思うんです。それぞれ、「自分だけじゃないんだ」って感じられるのは、ショッピングモールだからなんですよね。
水野:そうですねぇ。
半﨑:ショッピングモールは単純に不特定多数の方に出会えるとか、そういうことだけじゃない。私があの場所でライブをするのは、そこにも大きな理由がありますね。
水野:絶妙なんでしょうね。場の力というか、包み込み加減というか。生活の場所でもあるから、遠いところとか拒絶する場所でもない。いろんな要素の組み合わさった空気感が、全部ポジティブに働いていくっていう。
半﨑:そうだと思います。まわりにはお店がいっぱいあるし、買い物されている方は普通にいますし。なんかそれが同居している感じというか。
みなさんに触れていると、優しさが回復していく。
水野:でも穿った見方ですけど、ずっと受け取り続けて、受け止めきれないみたいなことはないんですか? 大丈夫ですか?
半﨑:ね! でも、全然ないんですよ。
水野:それはすごい。じゃあやっぱりまさに、天命を受けたというか。天性のお仕事。
半﨑:ただただ私に打ち明けてくれてありがとう、ってことでしかなくって。もちろん大変な試練とか、いろんな経験をされている方がお話してくださると、自分も同じように悲しみに暮れるときもあります。でも、とにかく「わかった」でも「わからない」でもなく「わかりたい」って気持ちがすごく強いんですよ。
水野:うん、うん。
半﨑:「わかった」とか「わからない」だと、そこでストップしちゃいますけど、「わかりたい」って気持ちはずっと続いていくというか。同じ経験はもちろんできないけど、まったくの他人である私に対して、家族にも言えないようなこととか、自分のなかでずっと閉じ込めていたことを話してくれるって、すごく勇気のあることで。それに対して本当にありがたい気持ちがあるので、受け止めきれないとは、意外と全然ならなくて。
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水野:それはある種の才能なのかな。僕、前に、横山だいすけさんに曲を書かせていただいたことがあって。実際にお会いして、たくさんお話をしたんです。そのときも、やっぱりいつも明るくいなきゃいけないのかなとか。背負うものが大きいだろうから大変なんじゃないのかなって。そんな穿った見方をして。でも、だいすけお兄さんに会ったら、本当にあのまんまなんですよね。
半﨑:わかります。
水野:元気で、どこかポジティブなパワーがずっと続いていて。「子どもに喜んでもらうのがすごく嬉しいです」みたいな。生まれ持った性質みたいなものが、そのひとの才能をすごく輝かせるというか。半﨑さんの場合も、受け取るってことを途中で考える転換があったけれども、もともと半﨑さんが持っている人間性とマッチして。だからこそ、多くの方を救っているというか。
半﨑:単純に触れている方たちが、本当に尊敬する方たちばかりといいますか。これだけの試練を経ても、なんとか生きようとしている。なんとか前を向こうとしている。この方たちにこそ学びがあり、気づきがあるじゃないですか。だから、もうそのひとたちのこと思うといつも泣けてくる…。
水野:もう涙が流れている(笑)。
半﨑:本当にすごいんですよね。私自身が優しいとかそういうのはまったくなくて。みなさんに触れていると、優しさが回復していくんですよ。自分のなかの。おひとりおひとりに出会うことで、自分自身がすごく変化してきましたね。
水野:なんかもう、そういうひとが歌に出会えてよかったですよね。歌ってそれをうまく繋いでくれるじゃないですか。
半﨑:本当そうですね。今、改めて。
水野:いろんな手段があるとは思うんですけど。
半﨑:それが歌でよかったです。でも、音楽的なセンスとか素養とかがあまりなく、なんとなくで曲を書いてきているので。多分、誰に聴かれなくても音楽を鳴らし続けているとか、歌い続けていられるタイプではないと思うんですよね。たったひとりでも真剣に聴いてくれるひとが居さえすれば、歌いたい、再会したいって思う。けれど、そうじゃなければ、音楽とともにしようって思わないのかもしれないかな。
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水野:それ僕も行ったり来たりなんですよ。僕の場合は逆に今、「多分、誰も聴いてくれなくても、俺やっぱり書くんだろうな」ってモードになったんですけど。その前は本当に、そういう人間ではないんだなって悩んだり。だからおこがましいですけど、半﨑さんの気持ちはよくわかるというか。だけど、そこの素晴らしさって、ずっと他者がいるというか。
半﨑:そうですよね。
水野:そこに聴いてくれるひとがいるって、素晴らしいことだと思っていて。僕自身はそこに価値を感じて、いきものがかりをずっとやっていたから。今の半﨑さんの在り方を考えると、絶対にそうだよなって思う。常に他者との関係のなかで、魅力を感じたり、ご自身の価値を感じたり。それは素晴らしい在り方ですよね。
半﨑:ありがとうございます。
水野:僕は、「いや、もしかしたらもっと自分のエゴがあるのかも」って迷った瞬間があるから、行ったり来たりしているんですけど。
半﨑:でも音楽的スキルがあると、どうしてもそういう方向になっていくと思うんですよ。もし自分がその才能があったとしたなら、そっちに舵を切っていたかもしれないし。ショッピングモールで歌ってなかったかもしれないし。だけど、水野さんは両方持ち合わせているから。それが多分、ご自身の葛藤に繋がっていくのかなって。
水野:たまたま、いきものがかりで自分の人生がスタートしたので。グループなんですよね。そこが難しいところで。
半﨑:ねー。
水野:吉岡がいちばん出口のところに立ってくれて、歌ってくれている。だから、自分のなかでちょっと感覚が狂うというか、難しく考えてしまうところがあって。半﨑さんのように、ご自身の身体で、ご自身の歌声で届けるってところに立っているひとの、難しさや厳しさを、なかなか僕は知ることができなくて。やっぱり真ん中に立つひとはすごいですよ。繰り返しになるけど、受け取ることにも、発信していくことにもパワーが必要だし。そこに立って、泣いたり、笑ったり。天賦のものですよ。本当に思う。
つづきはこちら
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