「TOKYO NIGHT PARK」 長谷川白紙さん対談 HIROBA編集版 後編
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【後編】混沌に統一性を持たせるという矛盾
水野 最新作の「夢の骨が襲いかかる!」はカバー6曲とオリジナル1曲という構成になっています。
誰かがつくった曲、旋律をもとに何かをつくるというのは、ご自身のオリジナルをつくるのとどういった違いがありますか?そんなに区別はないですか?
長谷川 そうかもしれないですね。もちろん、カバーはすでにメロディがあるという違いはありますけど、そんなに確固たる区別があるかと言われると…特にないですね。
水野 もう一回つくっている感じですか?
長谷川 そうですね、自分で曲を書くときも一発でパッとできることはほぼなくて、再構築する作業をたくさんしています。それは結果的にはカバーでやっている作業とあまり変わらないですね。
水野 なるほど。カバーの土台はあるにせよ、ご自身でつくっている部分が。
長谷川 そうです。カバーのときは曲を読み込むというところから始まって、曲の歌詞やその曲を歌っている人のパーソナリティーなども含めて、どういう思想をもって完成に至った曲なのかを突き詰めないといけないと思っています。
水野 はい。
長谷川 そういう意味で、自分の骨とか軸は使わないんですよね。置換していくというプロセスはカバーならではかもしれないですね。
水野 今回選ばれたカバー曲の元のアーティストも個性豊かな方たちばかりで、おそらくポップスとして受容されるときに、音楽だけではなく、音楽から派生するその方々のパフォーマンスも含めて楽しまれている作品が多いと思います。
長谷川 おっしゃる通りです。
水野 そうなると、それをいったん解除するんですか?
長谷川 解除というよりは、曲を取り巻く文脈を全部自分の中で咀嚼するというか。
水野 すごいな。
長谷川 パフォーマンスもそうですし、どういう受容をされているか、どの世代に聴かれているのか、全部含めて音楽を形成するひとつの要素じゃないですか。
水野 その通りだと思います。
長谷川 そういうところも含めて自分の中に取り込み直すという作業ですね。
水野 そこから再構築していくということですか?
長谷川 自分の中でのキーワードをいくつかつくるという感じです。この曲をこの曲たらしめている、非常に重要な要素とは何かをちゃんと説明できるように、いくつかの言葉を用意して、それを自分が持っている要素に置き換えていくとか、あるいはその輪郭をぼかしていくとか。そういうプロセスですね。
水野 表現が合っているかわかりませんが、一緒に溶けていくような感じですね。
長谷川 最終的にはそうですね。
水野 混ざって溶けていくようなイメージが浮かびました。
長谷川 そうかもしれないですね。
水野 最終的には自分になっていくんですか?
長谷川 自分になる…そうですね。最終的には自分になっていると思います。曲を成立させているその人たちの軸を自分の中に取り込むと新しい自分ができるので。それが私の根本的な音楽をやる理由だと思います。
水野 なるほど。
長谷川 自分の取れる形態が増えていくことが、生きている上での一番の欲求なんですよ。
水野 いやぁ、面白いですね。軸が増えていくという理解でいいですか。
長谷川 そうですね。軸とか表象とか、そういうものが増えていく。
水野 だから“白紙”なんですか?
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