「HIROBAビジネス」水野良樹×柳川範之対談【前編】
~中途半端にわかり合えていると思っちゃうと、逆に大きな失敗をする。~
柳川:もう伝わっているかもしれませんが、うちは家族全員いきものがかりの大ファンで、ファンクラブにも入っているんですよ。アルバムもすべて持っていますから。
水野:えぇ!? 想定外すぎます!恐縮です!
柳川:最初にコンサートに行ったのが2011年。それ以来、毎年行っていまして。娘は当時5、6歳の幼稚園生で、もう今14歳になるんですけどずっと大ファンなんです。去年はZepp Sapporoが当たったので、家族3人で札幌まで。前から5列目ぐらいで「顔が見える!」って喜んでいました。今年もホールツアーもアリーナツアーも当たって楽しみにしていましたが、コロナでこういう状況になりまして…。でも今回こういう形でお会いてきて本当に光栄です。
水野:そんなそんな!こちらこそ光栄です。来年はまたライブができたらなと思っていますので、ご家族の方にもよろしくお伝えください。僕はいきものがかりの他に『HIROBA』というサイトをやっていまして。そこではエンタメ分野の方にお話を伺うことが多いんですね。だけどもうちょっと違う分野の方、違う見識をお持ちの方とお話させていただくことで、何か共通点を探せたり、自分に持ってないものをいただいたりできないかと『HIROBA Business』という枠を作りまして。今日はそこで柳川先生にいろんなお話をお伺いさせていただけたらと思います。まず僕は柳川先生の著書『東大教授が教える独学勉強法』を読ませていただいたんですけど、スタッフから対談のお相手として「柳川先生とお話したらどうか」と聞いたとき、もうすでにその本を柳川先生が書かれたと知らずに買っていて。
柳川:そうなんですか!それは嬉しいな。
水野:その著書のなかで、いろんな形で書かれていて印象的だったのが“違う分野、違う見識を上手く組み合わせることによって、新しいアイデアや思いもつかないものが生まれることがある”ということで。それは僕もすごく大事にしたいところだったんですよ。とくにこのコロナが起きて、より“異なる考えを持った他者と向き合うこと”が大事になっているとも思うんですけど、率直に今、柳川先生はこの社会を見つめて、どんな変化が起きたように思われていますか?
柳川:まずひとつは、こういう状況なので、たとえば「東京で狭い満員電車に揺られるんじゃなくて、もっと地方でゆったりした生活をしたほうがいいんじゃないか」とか「もっと自然を大事にしよう」とか「身の回りを大事にしよう」とか、そういう気持ちが出てきているというのが明るい方向での価値観の変化だと思います。その一方では、やはりみんなストレスが溜まっているからこそギスギスしてしまって、他者の言動を責めたり、寛容でなくなったりということも増えていて、そこは心配なところだなと。
あと、このオンラインコミュニケーションになったことでもプラス・マイナス面が出てきていて。今まで繋がれなかったひとともリモートなら繋がれるとか。なかなか海外に行けなかったひとも違う国のひとと会話ができるとか、新しい繋がりができるのはプラスですよね。でも人間関係ってそこまでオンラインでは深く築かれていかないので…。僕の学生もオンラインで授業とかゼミとかやっていて、それなりに仲良くはなれるんですけど、どうしても“合宿に行く”とか“飲み会で仲良くなる”レベルとは違うし。ましてやオンラインで話しただけで付き合ったりとか、きっとないですよね。では、表面的な人間関係しか構築できなくなっているなかで、どれだけ対面で合えるようにするのか、逆にオンラインでもより深く繋がれるような方法を考えていったほうがいいのか、そこは今、悩んでいるところではあります。
水野:僕もオンラインで何度か対談とか打ち合わせとかやらせていただいていますけど、なかなか想定外のことが起きにくいというか。打ち合わせの面では論理的に話が進んでいって良いんですけど、テキストにしてもわかりやすいような会話しかしていないんですよ。相手が喋っているときは黙っていたり、ボールの投げ合いになってしまって。それが直接会って話すとなると、雑談が生まれたりとか、そこから違うアイデアが生まれたりとかあるじゃないですか。
柳川:まさに、雑談から生まれるおもしろさが減っていますよね。とりあえずご飯を一緒に食べながら雑談をすることから繋がっていくものって随分あるので。これはすごくおもしろい現象だと思っているんですけど、普通に会話をするのと、一緒に食事をしながら会話をするのとでは、なぜか親密度合いやお互いの距離感が全く違うじゃないですか。ある種、本能的なものを共有するみたいなところがありそうですよね。
水野:警戒心を外すんですかね。動物的ですけど、目の前に食事があって、欲望を共有するというか。それによって相手を敵じゃないと認識する。あと食事に対するスタンスでもそのひとの人間性がよりわかったりもしますし。このオンラインを中心としていく社会のなかでも、そういう上手い距離感の掴み方のアイデアをいくつか見つけていくと良いんですかね。
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