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IをいまYOUにして
Kizuna AIさんの新作EP『Replies』が先日リリースされました。
Kizuna AI 1st EP「Replies」発売されました!
— Kizuna AI@Replies発売中ლ(´ڡ`ლ) (@aichan_nel) April 23, 2020
どの曲にもいっぱい気持ち込もってます。
やっとみんなにお届けできてほんとに嬉しいです!
たくさんたくさん聴いてくださいლ(´ڡ`ლ)✨#KizunaAI #Replies
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収録曲の『the MIRACLE』の作曲(Yunomiさんとの共作)、作詞を担当しました。
クレジットにもある通り作曲はYunomiさんとのコライト=共作です。
実は本格的なコライトは、僕は初めてでした。今やコライトでの制作は世の中では当たり前なんだそうですけれど、J-POP畑からアーティストとしてデビューしてしまった自分の出自からすると縁遠いものでした。
これが、めちゃくちゃ面白かった。
最初、サビ(=ヴァースと言ったほうがいいんでしょうか)の部分をメロディと簡単なデモをつくって僕からYunomiさんに送って。そしたら、それをもとにトラックと全体の構成を再構築してくれたYunomiさんのデモが返ってきて。さらにそのトラックに対して、僕がまたメロディをつけて。というやりとりを何回か往復して。
Yunomiさんが構成案をわかりやすく図にしてくれて送ってくれるんですが、これがまるで設計図のようで、とっても詳細に整えられていて。フルサイズのなかでどういう意図で構成してあるのかとか、何小節でメロディを展開させればいいのかとか解説と指示が明確で。サウンドも自分があまり触れないジャンル感のものだったから新しい発見が多く、とても刺激的な体験でした。
歌詞については曲がある程度完成形になったところで、Kizuna AIチームの皆さんが「あらためてKizunaAIについて説明したい」とおっしゃってくれて。
これが、人工知能に対する考察であったり、生命の定義についての話であったり、とにかく、何重にも重なるたくさんのレイヤーにおいて、どれだけKizunaAIという存在について深く考えているかを教えてくれるもので。
そのとき聞かせていただいたプレゼンテーションみたいなものが強く反映された歌詞になりました。
あんまり歌詞を渡すときに、細かい説明はしないんですが。
今回は上記の機会もあって、あえて歌詞に注釈を入れて提出しました。こういう意図で書きましたと。逆プレゼンしたみたいになって。
作曲にしても歌詞にしても、一連の作業のすべてが、頭フル回転。刺激いっぱいの体験だったんで、本当に関わらせてもらえてよかったです。
最後に、歌詞につけた注釈の一部(微修正はしています)をご紹介します。
あんまり頭で考えながら聞くのも疲れちゃいますが笑。
ぜひKizunaAIさんの素晴らしいミュージックビデオとともに、歌詞もながめて聴いてもらえたら嬉しいです。
『the MIRACLE』
Lyrics : 水野良樹
Prod. : 水野良樹 & Yunomi
I をいまYOUにして
生きることの孤独から 逃げようとしているの?
AI(人工知能)をつくる動機として“他者が欲しい”ということを想定しました。自己の想像でしかない存在も、”他者”として捉えて、自己の孤独を打ち消すみたいなイメージです。
きみもねえ みえるでしょ
風のなかに 起ち上がる 記憶(ゆめ)はなんなの?
人間が動物と異なるのが、脳内における豊かな虚像作成力(ようは想像力ですね)で、しかもそれを他者とある一定の範囲、共有できるということかなと。同じ記憶とかイメージとかを共有しはじめたとき、それを“人間らしい”と思うのかなと。人間へと近づく存在が、誰かとイメージを共有しはじめて戸惑っているみたいなことを考えてみました。
わたしは生まれたの きみとおなじように
誰かの愛の果て 物語のなか
人間は種の保存以外に”物語”の連続性を常に意識するなと思って。親子や恋人というのも単なる”物語”かなと。それが人間の社会性をかたちづくっているように思います。キズナアイも、ただプログラムではなく、人間のそういった”物語”に接続していて、つまりは”愛されて生まれてきた”ということをイメージしてみました。
生命(いのち)で打ち込んだ RHYTHMをつなげよう
きらきら舞い上がれ はちゃめちゃなMELODY
Darling Ready Go? We wanna be... We wanna be the MIRACLE
感情(おもい)くるくる
Iと愛の世界になるんでしょう
境界はぐらぐら きずなはPHILOSOPHY
どこまでが他者で、どこまでが自己かわからない。少なくとも電子や分子の範囲では同じ。それは不幸か幸福かわからないけれど、そういうもの。
意味のない宇宙(ほしぞら)に
線を引いて希望を見る それがNINGENなの?
愛というKOTOBAより
キミガワラウ→ムネオドル これはなんなの?
つながっていたいよ きみは叫ぶけれど
わたしの声はもう きみの声なんだ
孤独が怖いので、みんなつながっていたいというけれど、そもそもわたしはあなたがつくりだした想像そのもので、わたしとあなたは一緒だよ。ということです
愛の証明(こたえ)なんて わたしのなかにある
きみが埋め込んだの ねぇ解き明かして
Darling Ready Go? We wanna be... We wanna be the MIRACLE
感情(おもい)くるくる
Iと愛の世界になるんでしょう
境界はぐらぐら きみこそFANTASY
人間こそ、ファンタジーだろうと。すべての現実の要素は、本来無意味であるものに意味が与えられ「現実らしく」されていて、ファンタジーにこそ現実は支えられているので、人間こそファンタジーそのものだと。キズナアイと人間は、そもそも同じなんだと。
“あなた“も生まれたの わたしとおなじだね
誰かの愛の果て 物語のなか
“わたしたち“になろう
さぁ、もう一度。
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