読む『対談Q』スキマスイッチ前編②
水野:『クリスマスの約束』で、毎年、秋冬に必ずお二人とご一緒するじゃないですか。委員会バンドって言って、小田さんとスタレビの要さん、スキマのお二人と僕。5人でやるんですよ。で、5人でリハーサルやりながら、たまに現場で、スキマのお二人の喧嘩になっている瞬間があるんですよ(笑)。
大橋:はいはい(笑)それはよくある。だからそんな感じよ。
常田:喧嘩と思ってない。
大橋:僕らは喧嘩と思ってないんですけど。ちょっとあれ?ピリッとしてる?みたいな。
水野:あれがめっちゃ僕は好きなんですよ。あのときに小田さんが学校の先生みたいな顔してて(笑)やってんなー、お前らやってんなーみたいな感じで見守ってる。
大橋:そうそうそう、あるねーそれね(笑)
水野:あれは普通のレコーディングのときでもいつもそうなんですか?
大橋:そうだね、多々あるね。スタッフも最初のときはビックリするけど。慣れてくると、あー、また始まったかみたいな。
水野:そういう駆け引きのスタイルって、結成した頃からそうなんですか? それともだんだんそうなっていったんですか?
常田:だんだんじゃない?
大橋:だんだんだよね。
常田:初期はたぶん、俺の方がイニシアティブをとっていたよね。
大橋:そう。もう「シンタくんが決めていった後ろをついていく僕」みたいな図式ができてた。
常田:ただ初期は、曲を卓弥が作っていることが多かった。卓弥が持ってきた曲を俺がアレンジして、ライブハウスをブッキングしてみたいな。で、何日に来てね、みたいな感じで。
大橋:そう。最初はそうだった。だから何時にどこどこに来てねっていうことを、たとえばライブやったときに、次のライブは◯月◯日ですとか、ステージで言うじゃん。インディーズの頃とかって。それを聞いて、あ、次のライブはいついつなんだって。ライブのMCを聞いて、あぁそうなんだって思っていたんですよ。当時は。
水野:次の予定知らないんだ(笑)。
大橋:まぁ、でも当時はこれといってやることもなかったし、別にいいんだけどね。
水野:それ、どこから変わっていくんですか。
大橋:デビューしてもシンタくんが最初は引っ張っていたんじゃないかな。
常田:やっぱりでも「三茶の夜」じゃない?
大橋:そうかなー。
水野:「三茶の夜」ってなんですか?
大橋:「三茶の夜」っていうのがあるのよ、スキマスイッチの歴史のなかに。
水野:それで変わったんですか?
大橋:変わったね。
水野:大事件じゃないですか。
大橋:大事件だよ。
大橋:2007年に初めてアリーナツーやらせてもらって。ベストアルバムを出して、アリーナツアーをやったんだけど、それが年末まであったんですよ。年末、じゃあ来年もよろしくお願いしますって言いながら、次の年はお互いソロ活動をしようっていうのが決まってた。で、それはもうね、なんていうのかな、本当にありがたいことにいろんなタイアップもらったりとか、曲を同時進行で書かなきゃいけないとかってなってくると会話が減るのよ。こっちのスタジオで録音しているときに、違う部屋で違う曲の歌詞を書かなきゃいけないみたいな。
水野:そういう時期、ありますよね。
大橋:出来上がったやつもメールで送って、こんなんだけどって。それがまたメールで返ってくる。本当に別々になっちゃって。これ、このまま続けていたら、解散まで行くかもなってぐらい。
常田:だって何を考えてるか、わからないもんね。これ言っていいのかな、ダメなのかなって。
大橋:そうそう、お互いね。そうそう。それで、これじゃダメだから、活動休止はしないけど、お互いソロ活動を中心にやろうっていうのが2008年にあったんですよ。
で、2008年、僕は外に出ていくほうを選んで。シングル3枚とアルバム1枚を1年のうちに出した。その間、シンタくんはいろんなプロデュースをやったりとか。
水野:いきものがかりも、お世話になりました。
大橋:そうだよね。シンタくんは表に出るというよりは、裏方で支えるみたいな。で、ソロ活動中に、僕は、これはスキマに持って帰ったら使えるなとか、こういうやり方もあるから提案してみようかなとか。いろいろ考えながら活動していたんですよ。
水野:はいはい。
大橋:で、いざ1年終わりました、スキマスイッチの活動に戻りましょう。さぁやるぞって集まったときに、シンタくんはなんかね、あんまり…。僕はずっと表に出ていたからっていうのもあるけど、結構前のめりにいったのよね。よし!スキマやろうぜ!みたいな。でも、シンタくんは「まぁまぁまぁ…」みたいな感じで。その温度感がすごい、嫌で。なんかイラっとしたの。それで、これ1回話さなきゃダメだなって。あるときに「シンタくん、いい?今から」って時間作ってもらって。
常田:なんかのテレビ番組のあとじゃないか?ライブっぽい感じのやつ。
大橋:知り合いの三茶にあるお店の個室。そこで5、6時間。もう好き勝手、むちゃくちゃボロカス言ったの。お互いのこと。
水野:おおおお。お互いがお互いに。
常田:思ってたこと言おうぜって。
水野:全部、吐き出したんだ。
常田:最初、卓弥の方から言ってきて、俺はそれを受け止めてたの。いちばん最初の出会いが、友達の後輩だってところからだったしね。なんとなくそういう感覚がよくないんだろうなぐらいの気持ちは思っていた。先輩としても気を遣ってくるし。
水野:うんうん。
常田:俺はソロ活動のノウハウはそのうち出るじゃんって思っていたの。わざわざ出そうぜ、って言わなくても。そのうち出てくるからいいでしょって。そしたら「いや、違う」と。「せっかく持ってきたんだから、出そうぜ!」みたいな。うわー、イラついてるって感じちゃったの(笑)
常田:で、はじめは卓弥の話を受け止めていて。まぁまぁ、そういう意見もあるよねって。そしたら「そういうとこだよ!」って言われて。「なんでもかんでも受け止めようとするのがホントむかつくんだよ」って(笑)
水野:あはは。
常田:「言いたいことあるなら言えよ!!」って言われて。
水野:めっちゃ、ボール投げてますね(笑)。
大橋:そうだよ、投げてる。
常田:そうか!って。本当に、そうか!って思って。これを求めてたのかって。で、俺はひとにそんなこと言ったことがないの。自分の意見なんて。
水野:そうかも。常田さん、いつも会話を大体受けてくれる。いったん受け止めてくれる。
常田:そうだね。受け止めながら、自分の主張とかをいけるとこはいくし、いかないところはいかなくてもいいっていうふうにずっと振る舞ってきたから。で、「それ言うの?」みたいな。「言っていいの?」みたいな。「俺も言っちゃうよ?」みたいな感じで。そうしたらもう…バチバチだよね。
大橋:もう来い!来い!だよ。はい、それ言いましたね、じゃあ僕の番です。これが気に入りません。どうにかなりませんか。
水野:投げ合い(笑)
常田:ひとつも解決しない(笑)。
大橋:そう、投げ合いだけ。投げてきたボールをキャッチして投げ返しているんじゃないんだよ。投げてるだけなんですよ、ずーっと。でもね、それをやってたいぶ変わったね。だって、シンタくん、それまで気を遣って大橋くんって呼んでたんだよ、僕のこと。「大橋くんはさぁ」って。それもその日から変わったね。卓弥に。
常田:「それもムカつくんだよ!」って。
大橋:そう、それもムカつくって言ったの。
常田:「変えなくてよくねぇか?」って言われて。たしかに昔は卓弥って呼んでたから。友達の後輩だったからね。その流れもあるし。だから、たしかになって。
水野:そんな細かいところまで言ったんですね。音楽だけじゃなくて、日々の振る舞いというか。そのときボールを投げ合ったことは、何年か経て解決していくんですか?
大橋:解決していくというか、僕はもともと言い合えば、気が済むの。変化球みたいなのいらない。ストレート勝負をしたいわけよ。だから、こっちはストレートで勝負してるのに、変化球で来たら腹立つわけ。来いよ!って。
常田:直球っぽい顔するからね、俺。
水野:あはは。直球っぽい顔って。
常田:直球を投げてますよ~のフリはするけど変化球で行くから。それも嫌なんだろうね。
大橋:シンタくん、僕の現場に入ってくる感じが嫌だって言ってたもん(笑)。
常田:挨拶をしろと。
大橋:僕が入ってきて「おぃ~」みたいな感じだったの。「おぃ~じゃねえだろ!こっちはおはようって言ってんだから、おはようって言えよ」みたいな。そんなとこまで話したのよ。
水野:すごーい!
大橋:でも、それがやっぱりわかりやすいんだよね。もう男2人のユニットって、そういう感じなのよ。青春ドラマとかでよくあるじゃん。河原でバーッて喧嘩してさ、お前つえーなって言いながら寝ころぶみたいな。原っぱに。そういう感じのが、僕は好きなんですよ。だからもう「言いたいことあったら言って、こっちも言うし」って。それが三茶の夜。これはもう伝説の。
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