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湖に燃える恋・第14話「本当の過去・・・その2」

「それからも事態はあまり変わらず、やがて彼の私に対する暴力が始まりました。拒否をすることに殴られ、蹴られて……。
それでも私が悪い!私が悪いのだから仕方ない。それで彼の気が済むのなら……
 
ただ、彼は暴力は振るいましたが強引にでも私を奪うことは決してありませんでした。思えば無理やりにでも奪ってくれたほうがよかったのかもしれない、そのほうが私も変われたのかも知れない……。

 
私が高校3年生の年の5月、一足先に卒業し、留萌(るもい)で働き始めた彼のところに遊びに行ったんです。親も公認の仲になった…というか、キスから先の関係はなかったので外泊の許可をもらうことが出来ました。
もう、お酒を飲んでもおかしくはない年頃だし、留萌の居酒屋で彼が勧めるがままにお酒を飲み、そして、マチの小さなホテルで……ようやく彼と結ばれたのですが………彼は、実は初めてで.酔っていやらしくなっていた私がすべてリードしてしまったのです。
 
 
彼は終わってから、私に言いました。
 
 
『初めてじゃなかったんだね? それはいいんだけど……なぜ、そいつには許せて俺には今まで許せなかったんだ?』
 
 
私は、お酒のこと、漁師の元カレのこと、そして酔った状態でないと怖くてエッチが出来ないこと・・・全てを話しました。彼はわかってくれるかなぁと思ったのですが…彼から返ってきた言葉は想像とは違っていました。

 
 
『・・・可愛い顔をして、そんな恐ろしい女だったとは思わなかったよ。ただの酒乱でヤリマンなだけじゃないか、もしかしたら、俺と付き合っている間にも酔った勢いでヤッた男がいるんじゃないか?あ~不潔だ!不潔!……どうなんだよ?』

お酒は飲んでいたけど他の男性とそのようなことにはならなかった、ということは彼に必死に説明したんだけれど……
 
 
『あ~!なんだかシラケちゃったなぁ…悪いけど……俺と別れてくれ。』
 
 
 
 
私はどうすることもできず、何も言えず……ただ好きな彼がそう言うのだから・・・好きな彼のためにそうすることが彼のためだと思って、私から身を引きました。
 
 
それから私は、マチの繁華街を徘徊しては好きでもない男に酒を飲まされ、気持ちよくなって体を許して……という日々でした。心はすっかりボロボロに荒んでいました……でも高校だけはきちんと卒業しよう!と思いその年の秋からは就職活動をしました。
 
地元にはもういたくない!と思っていたので札幌や旭川の企業に面接に行きましたが、やはり海のある港町に行きたかった。
 
 
地元のスナックに勤めだした姉が釧路のお客さんとつきあいだして、その姉の彼のお父さんが船の無線関連の会社をしていて事務員を探していたそうだったので、姉と一緒だったら…と
私は釧路に来て、この会社で頑張ることにしたんです。
 
そして……私はヒロユキさんと出会いました。
 
ヒロユキさんは優しくて、誠実だから心から惹かれました。ヒロユキさんとだったら…と思いました。お酒も飲まないようにしていたのですが・・・・今日の食事会、どうしても断れなくて…
 
 
飲むと気持ちよくなって、どんどんとペースが早くなりました。そして…男の人が欲しくなりました。でも、もう見ず知らずの人とはしたくなかった…。
 
だから、ヒロユキさんがホテルの食事のあと、繁華街を彷徨っていることを期待して、いや、どうしても見つけてやろう!と思っているときにヒロユキさんがそこにいて……。
 
嬉しかった…ヒロユキさんと結ばれる……それだけは本当に、心の底から嬉しかった……。
 
 
ヒロユキさん……これが偽らざる私の過去です。
 
こんな私……どうしようもないよね……。
ただの酒乱で男が欲しくなる最低の女だもんね……だから……私は……だから……私は……。」
 
 
 
 
「だから私は……どうしたって言うんだよ! 
……苦しかったんだね……自分を自分で苦しめて自分を責めて…嘘で固めて…。
 
 
でも、本当のことを全て話してくれたから今は
明美を信じるよ…正直、いろいろと話を聞いたんで頭の整理が出来ていないし……酒癖が悪いのは直さないといけないとは思うけど……。俺、前にも言ったけど明美を守るから!そんな明美を全て受け入れて守るから・・・
だから、そんなに自分を責めて苦しむなよ…。」
 

格好をつけたわけでも何でもなく、素直な気持ちを俺は明美に正直にぶつけた・・・・。
 

 
 
「ヒロユキさん・・・・・ありがとう・・・ありがとう・・・。」
 
 
 
 
 
裸の明美は泣きながら俺に抱きついてきた。何かが彼女から剥がれたようだった。そして何度も何度も「ありがとう」の言葉を繰り返すのだった。 俺は明美に聞いた。
 
 
 
 
 
「明美……今、まだ……酔っているのかい?」
 
 
 
 
 
 
「………もう酔ってない……と思います……。」
 
 
 
「じゃ、もう一回……したいんだけど……怖いからダメかい?」
 
 
 
 
「……ううん、大丈夫………怖くない・・・・。」
 
 
明美は俺に濃厚なキスで迫ってきた。
 
 
 
 
「明美、まだ酔ってるよ!積極すぎる、ふふっ」
 
 

 
 
「ヒロユキさんの意地悪………。」
 
 
 
 
 
 
二人はもう一度、激しく体を重ねた。しかし、明美は最初よりもどこか恥ずかしそうだった・・・・。
 
 
 
過去は誰にでもある。良い所も悪いところもその人の全て・・・。だから手を差し伸べてあげないと・・・守ってあげないと・・・・・。
 
俺は明美が好きだ!だから、全てを受け止めて彼女を愛したい。こうして……その夜は更けていった・・・・。
 
俺たちはこうして晴れて普通の恋人となった。


           〜第15話に続く〜

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